がんに関する情報

肝臓がん

最終更新日 : 2016年3月10日
外来担当医師一覧

がん研有明病院の肝臓がん診療の特徴

がん研有明病院の肝臓がん診療の特徴

診療

1.チーム医療

肝胆膵外科、肝胆膵内科、放射線診断部や病理部などを含めた“チーム肝胆膵”が常に患者さんの最善の治療法を考えます。それぞれの分野に精通したエキスパートが患者さんに最善の治療法と最大の効果をもたらすことができると思います。特に外科と内科は同じ病棟に勤務しており、常に情報交換しながら診療を行っています。

2.迅速な診断、治療

肝がん、胆道がん、膵がんのなかには非常に進行の速いものがあります。それらのがんの患者さんは診断後できるだけ速やかに治療ができるように速やかな診断、治療を行います。進行の速いがんに対しては2-4週間以内に手術ができるように予定をたてています。

3.研究と臨床の架け橋

がん診療の向上のために、患者さんの自主的なご協力による臨床研究は不可欠です。診断・治療にあたるとともに、同意のいただけた患者さんに関しては、新しい治療法、手術手技などの臨床研究も積極的に行っています。

内科

1.病態に応じた非切除療法

内科では、主として、経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)や肝動脈塞栓療法(TACE)や動注療法、全身化学療法を担当します。局所におけるがんの制御は手術が最も確実ですが、手術が困難な場合にはラジオ波焼灼療法も有力なオプションになります。また、多発がんの場合には局所制御が困難なため、がんに対する血流を同時に遮断する肝動脈塞栓療法が主たる治療になります。一方、肝外転移を伴う場合には、ソラフェニブなどの全身化学療法の対象になります。これらの治療法は、がんの局在のみならず、がんを生み出す肝臓の状態によっても異なり、特に肝硬変を合併している場合は、慎重な対応が必要です。私たちは、外科との合議の下、いずれの治療法にも対応できるよう、常に修練を積んでいます。

2.より有効な化学療法の追求

肝臓がんの化学療法は、徐々に進歩しているとはいえ、使用可能な抗がん剤の種類もその成績も十分とは言えず、新たな治療法開発のために、多くの病院が協力して大勢の患者さんの参加のもとに行われる臨床研究が不可欠です。私たちは、常に最良の標準治療を大切にするとともに、多施設共同臨床試験や治験(企業主導臨床試験)にも積極的に参加し、お一人の治療を通じて、より早く、多くの患者さんに新たな治療法を還元することを目標としています。

外科

1.あきらめない外科

内視鏡で診断可能な消化管の癌と異なり、肝がん、胆道がん、膵がんの進展を画像だけで判断することは時に困難なことがあります。また手術適応も施設により異なるのが現状であり、ある病院で手術ができないといわれても別の病院では手術ができるということもまれではありません。手術の経験や技量のほか、医師の考え方も大きく手術適応に影響するのが肝胆膵外科の領域です。我々は 難治癌であっても外科的な立場から可能性を最後まで追求します。“あきらめない外科”をモットーとし、患者さんとともに、がんに立ち向かって参ります。

2.安全かつ正確な手術

肝がん、胆道がん、膵がんはおなかの中の最も複雑な部位にでき、手術が非常に複雑で切除が困難であり、出血量も多くなりがちです。私たち外科医の習熟した手技にさまざまな医療機器を組み合わせることで、手術中の出血をできるだけ少なくなるよう工夫しています。出血のすくない手術は安全かつ正確な手術につながります。血管をいっしょに切除する拡大手術から腹腔鏡手術という非常に小さい傷でできる手術まで過不足のない手術を選択しています。

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肝臓がんの治療の実績

肝臓に発生する悪性腫瘍には、肝臓の細胞ががん化してできる「原発性」肝がんと、他の臓器からがん細胞が移ってきて(転移)肝臓で発育してできる「転移性」肝がんがあります。原発性肝がんはさらに、肝臓を構成する細胞の違いにより、肝細胞がんと肝内胆管がんに分けられます。その発生するおおもとの細胞の性質の違いによりできあがった腫瘍の性格も相当異なってきますから、治療する場合にはそういった違いに配慮する必要があります。

一方で肝臓は転移性の腫瘍がとても多い臓器で、原発性肝がんより転移性肝がんのほうが実際は4倍から10倍も多いとされています。いろいろな悪性腫瘍が肝臓に転移してきますが、原発巣が消化器系の腫瘍(おなかの臓器にできる腫瘍)と非消化器系の腫瘍とに大きく分けられます。 肝転移巣のほとんどは、門脈という静脈にのってがん細胞が肝臓に流れ込みそこで生着し成長することでできあがります。消化器(胃、小腸、大腸、膵臓、胆管、脾臓)の静脈血は真っ先に肝臓をとおりますから、消化器系の腫瘍が肝臓に転移している場合には、肝臓にだけ転移が起こっていることが少なくありません。これに対して、乳がん、腎がん、肺がんなど非消化器系の腫瘍は全身にがん細胞がばら撒かれた結果の一部として肝臓に転移が現れます。そのため、原発巣が消化器系の腫瘍と消化器系以外の腫瘍では、肝転移巣の治療方針はおのずと違ってくるわけです。

外科治療の実績

  • 図:肝細胞がん切除件数
  • 図:肝細胞がん切除後生存率
  • 図:転移性肝がん切除件数
  • 図:大腸がん肝転移術後生存率

内科治療の実績

2011年から2015年までの5年間に行った、肝細胞がんに対する内科治療件数を示します。

一時的に治療件数の減少を見たものの、いずれの治療法にも改めて力を入れた結果、再び増加し始めており、今後もご期待に応えられるよう、バランスの取れた治療を行って参ります。

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がん研有明病院の肝臓がん治療

肝臓がんについての知識

肝臓がんとは

肝臓は成人で800ー1200g ある人体最大の臓器です。肝臓は、血液をろ過して有害物質を取り除きそれを便として体外に排泄したり、食物中の脂肪の消化を助ける胆汁を分泌したり、エネルギーの消費に必要となるグリコーゲン(糖質)を貯蔵したりする働きを担っています。
肝臓がんは、もともとできたがんが肝臓由来である原発性肝がんと、他臓器由来である転移性肝がんに分けられます。

  • 原発性肝癌
    原発性肝がん
  • 転移性肝癌
    転移性肝がん

転移性肝がん

転移性肝がんは、どこか別の部位の原発がん(たとえば胃がんや大腸がんなど)から肝臓への転移ですので、その原発がんの病期ではステージWに相当します。ステージWのがん治療は全身性化学療法(抗がん剤の全身投与)が一般的ですが、原発がんの性質によっては転移性肝がんに対する手術などの局所療法がよい治療法になることがあります。たとえば、大腸がんからの肝転移(転移性肝がん)は積極的に手術することにより生存率が高くなることが知られています。しかし、肺がんや膵がんなど進行の早いがん由来の転移性肝がんでは、局所療法の効果は期待できず、全身性化学療法が適しています。転移性肝がんの治療は、おおもとの原発がんの種類によって異なります。
転移性肝がんの治療につきましては、転移性肝がんの治療の頁を参照してください。

原発性肝がん(肝細胞がん)

原発性肝がんは、肝臓を構成する細胞の違いにより、肝細胞がんと肝内胆管がん、その他のまれな種類のがんに分けられます。肝内胆管がんは肝細胞がんとは性質も治療も大きく異なりますので、胆道がんの項をご参照ください。

以降、この項では、原発性肝がんの多くを占める肝細胞がんについてご説明いたします。

日本において、肝細胞がんの約80%はB型あるいはC型慢性肝疾患に由来します。その他、アルコール摂取や喫煙もその原因となりますが、近年、さらに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も発がん因子として注目されています。年齢別にみた肝細胞がんの罹患(りかん)率(病気にかかる割合)は、男性では45歳、女性では55歳から増加します。罹患率、死亡率は男性が女性の約3倍高率です。罹患率と死亡率の年次推移を生まれた年代別に見ると、男女とも1935年前後に生まれた人で高くなっています。これは、1935年前後に生まれた人の多くが肝細胞がんの要因であるC型肝炎に感染していることと関連しています。罹患率の国際比較では、日本を含む東アジア地域が高くなっています。これは、日本を除く東アジア地域の人の多くが肝細胞がんの要因である B型肝炎に感染していることと関連しています。日本国内の死亡率の年次推移は、男女とも最近は減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向です。

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症状

肝臓は沈黙の臓器ともいわれ、がんができてもよほど進行しない限りは症状があらわれません。進行するとみぞおちに固いかたまりを触れたり、ついに破裂すると突然の強い痛みや貧血の進行がみられたりすることもあります。通常は自覚できる症状はほとんどなく、あるとすればそれは肝炎・肝硬変など肝臓障害に由来する症状と考えられます。それらの多くは食欲不振、全身倦怠感、腹部膨満感など漠然とした症状で、肝細胞がんを疑う理由としては弱いものです。黄疸や吐下血などは進行した肝硬変の症状であり、肝細胞がんの発見に役にたつとはいえません。

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診断

肝細胞がんを疑う特有の症状はありませんので、普通は何か別の理由で病院へ行き、血液検査で肝障害が発覚、そこからさらに肝炎ウィルスや腫瘍マーカーの血液検査と腹部超音波や腹部 CT などの画像診断検査をして、肝細胞がんがみつかるというパターンが多いと思います。また、健康診断で肝障害がある方が、精密検査で B 型肝炎や C 型肝炎の持続感染者であることが判明し、その後の3〜4ヶ月ごとの定期健診で小さな肝細胞がんがみつかることが多いと思います。

血液検査でわかることは、肝炎・肝硬変がありそうか、あれば程度、肝炎ウィルスの持続感染があるか、腫瘍マーカーが高いか、ということです。肝細胞がんの腫瘍マーカーはいくつか開発されていますが、有名なのは AFP(アルファ・フェトプロテイン)とPIVKA-U(ピブカ・ツー)です。これらのマーカー値が高いことは、肝細胞がんの診断を補強することになります。

画像診断でもっとも手軽なのは腹部超音波検査です。患者さんに負担なく行えるのが利点であり、肝臓の中の腫瘍の場所によっては見えない事があるのが欠点です。画像診断で最も信頼性が高いのが、造影剤を用いたCTやMRI です。その他の検査として血管造影検査や造影剤を用いた超音波検査があります。

サーベイランスアルゴリズム・診断アルゴリズム

(肝癌診療ガイドライン2013より)

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病期診断

肝細胞がんの病期分類には、国際分類(国際対がん連:UICC)と国内分類(日本肝がん研究会)があります。日本肝がん研究会病期も UICC 病期も、基本は 肝内病変の状況(T 因子)、リンパ節の状況(N 因子)、遠隔転移の状況(M 因子)から構成されます。

  • 図:国際体がん連合 肝癌病期分類
  • 図:日本肝がん研究会病期分類

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治療法

肝細胞がんの治療は、日本肝臓学会による肝癌診療ガイドラインを参考に、肝機能と肝がんの個数、大きさもとにして決められます。

  • 図:肝障害度
  • 図:肝細胞がん治療アルゴリズム

(肝癌診療ガイドライン2013より)

肝機能が良い状態では、治療の自由度が高く、いろいろな治療を適応することができます。

手術療法

もっとも根治性が高い(治る可能性が高い)治療です。

1.肝切除術

がんが少数個の場合に考慮されます。手術療法は大きな腫瘍でも治療可能です。肝がんの手術は難易度の高い手術になりますので、可能な限り定評のある病院で手術してもらうのがよいでしょう。

2.肝移植術

一般的に65歳以下で肝機能が悪く、肝切除が難しい場合に行われ、5cm以下の肝がんが1個、もしくは3cm以下の肝がんが3個以内の場合が保険適応です。

経皮的腫瘍焼灼療法(ラジオ波焼灼療法、RFA)

超音波(エコー)で見ながら、腫瘍に針を刺し、ジュール熱を利用したラジオ波により腫瘍の壊死を図る治療で、手術につぐ根治性があります。肝切除がためらわれる肝障害度 B、Cや、高齢者・全身合併症等で手術療法が適さない方でよい適応になります。3cm、3個以内がよい適応とされています。

経動脈的治療

カテーテルを使って肝内に抗がん剤や塞栓剤を注入する治療です。

1.肝動脈化学塞栓療法(TACE)

右足の付け根からカテーテルを入れ、肝臓のがんを栄養する肝動脈を通じて抗がん剤と塞栓剤を注入し、がんを兵糧攻めにする治療です。肝切除や経皮的腫瘍焼灼療法の適応とならない進行度のがんが良い適応です。

2.肝動脈内注入化学療法

右肩口にポートとよばれる小さな装具を埋め込み、ポートに連結したカテーテルを通じて肝動脈から肝内のがんに抗がん剤を注入する治療です。血管塞栓化学療法がためらわれる進行がんに考慮されることがあります。

放射線療法(陽子線療法、重粒子線療法)

本来なら肝切除が望ましいがんの状況であるものの、手術や麻酔に耐えられるかが心配される状況(高齢者など)がよい適応です。

全身化学療法(ソラフェニブ)

肝外転移を有する場合に用いられる飲み薬で、肝機能が保たれている場合に適応となります。確実な延命効果が証明された治療ですが、きめこまかな服薬管理が必要ですので、薬物療法に習熟した内科医のいる病院で治療されるのがよいでしょう。

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再発の診断と治療

肝細胞がんの根治的治療(手術療法と経皮的局所壊死療法)後の再発は、その多くが再び肝臓内に発生します。肝臓外の再発は、他のがん種と同様に転移であり、治療前からみえない転移が既にあったと考えられます。一方、肝臓内の再発は、ふたつの状況が考えられます。ひとつは、他のがん種と同様の転移、もうひとつは新たな発がん(多中心性発生といいます)です。肝細胞がんの多くは肝炎・肝硬変から発生しますが、肝炎・肝硬変はそもそも発がんの土台です。がんのタネがたくさん埋まっている花壇から、次々発芽して花開こうとする状況をイメージしてください。このような新たな発がんによる再発は、その都度、最善の方法で処置していきます。

このように、肝細胞がんは他のがん種と比べてとても再発しやすく、根治的な治療のあとでも、AFPなどの腫瘍マーカーとCT検査を3ー4ヶ月ごとに繰り返し、再発を見張っていきます。

根治的治療のあとの宿命的な再発をなんとか予防することはできないか、長年研究が重ねられていますが確実に再発を予防する治療法は未だ開発されていません。

肝内の再発が発見されたら、はじめて発見されたときと同じ治療法選択の手順で治療を決めます。再手術も条件があえば施行します。肝外の再発は明らかな転移で全身にがん細胞がちらばっているとみなされる状況ですので、ソラフェニブ療法が合理的です。

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治癒率

他がん種の多くは、根治的治療のあとは5年ほどで再発がなくなり、5年無再発ならほぼ治癒と考えます。しかし、肝細胞がんは肝炎・肝硬変がある限り新たな発がんが起こりますから、何年たっても治癒という言葉は使いにくいがん種です。目安として5年生存率は、手術療法で40-70%、経皮的局所焼灼療法で30-60%、血管塞栓化学療法で10-30%くらいです。当院での外科治療成績はリンクを参照してください。

肝障害度 A だけなら上限に近い数字、肝障害度 B や C が混じると数字が下がるため数字に幅があります。ソラフェニブ療法の1年生存率は肝障害度 A で50%前後です。ソラフェニブ療法は肝障害度 B、C に用いると肝不全がしばしば起こることが知られており、一般的におすすめできません。

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