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【プレスリリース】新しい作用メカニズムを有する「新規抗がん剤」の人工合成について

2013年02月07日

東京理科大学 科学技術交流センター(承認TLO)
公益財団法人がん研究会

 

東京理科大学理学部 応用化学科、キラリティー研究センター・センター長、椎名 勇 教授ならびに、公益財団法人がん研究会がん化学療法センター分子薬理部・前部長 矢守 隆夫 博士、同・副部長 旦(だん)慎吾 博士 らの研究チームは、新規抗菌剤として報告されているコプロフィリン[COP]の人工合成に成功し、さらに、この化合物の類縁体である「M-COPA」の大量供給法を確立し、人工合成した「M-COPA」に天然物由来のものと同等な抗がん活性が見られることを確認。新しい分子標的抗がん剤の『リード化合物』を創出することに成功しました。

本研究成果は米国化学会の発行する専門誌(Journal of Medicinal Chemistry[JMC])に掲載が決定し、本年2月号の表紙を飾ることになっています(2月7日発行予定)。
JMCは薬化学(Medicinal Chemistry)の世界最高峰の専門学術誌であり(IF=5.248)、本研究成果は同誌編集部により高い評価を受けています。さらに、米国化学会としても本研究成果を非常に重要なトピックスとして取り上げています。

 

【研究の背景および概要】
 細胞内のゴルジ体機能を阻害するブレフェルディンAは強い抗腫瘍性を示すことが知られており、新しい分子標的抗がん剤の機能としてゴルジ体機能阻害活性は注目を浴びています。しかしながらブレフェルディンAは生体適合性が低く医薬品として開発されるまでに至らなかった経緯があります。ごく最近、がん研究会の矢守らは天然由来の多置換オクタリン型化合物(2-メチルコプロフィリンアミド[M-COPA]がブレフェルディンAと同様なゴルジ体機能阻害活性を示すと同時に、M-COPAが強力な抗がん作用を持つことを生化学試験で明らかとしました。しかしながら、天然物から生産できるM-COPAの量は限られていたため、これを薬剤として開発する道は断たれた状況でした。一方、東京理科大学の椎名らは新規抗菌剤として報告されているコプロフィリン[COP]の人工合成に成功し、さらにこの化合物の類縁体であるM-COPAの大量供給法を確立しました。
この度、東京理科大学・がん研究会の共同研究チームは、人工合成したM-COPAに天然物由来のものと同等な抗がん活性が見られることを確認し、新しい分子標的抗がん剤のリード化合物を創出することに成功しました。

 

【発明の成果】
 東京理科大学の椎名らは、独自の合成技術である不斉アルドール反応、計算化学支援による立体選択的分子内ディールス・アルダー反応、高効率脱水縮合反応を駆使し、COP、M-COPAおよびそれらの類縁新規化合物を合成しました。がん研究会の矢守らは人工M-COPAの抗がん活性の調査を行い、天然物由来M-COPAと同等の薬理活性を有することを明らかにしました。作用メカニズムの解析から、人工M-COPAが期待通りにブレフェルディンAと同様ながん細胞のゴルジ体機能阻害活性を有することを確認しました。すでにがん研究会の矢守らは担がんヌードマウスを用いた動物実験で天然物由来M-COPAの安全性・有効性を確認しており、これによってゴルジ体標的薬というユニークなメカニズムを有する新規抗がん剤の開発が可能となりました。

 

【今後の展望】
 本研究成果により人工的に大量のM-COPAが製造できることになったため、今後これらの薬剤を医薬品として開発するために十分な量を安定して提供することが可能になります。また本発明によれば、様々なM-COPAの類縁化合物が人工合成できるため、M-COPAに比べ、同等以上の優れた抗がん作用を示す新規化合物の創製が期待されます。
今後は製薬メーカーと協同で安全性・有効性の詳細な試験が実施され、医薬品の開発が進展すると考えられます。

以上

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