がんの種類について

胆管がん(外科)

Chapter.1:胆管がんとは

胆管がんは胆管の粘膜から発生する悪性腫瘍です。長軸方向で、どの部位の胆管から発生したかにより肝内胆管がんと肝外胆管がんの2種類に分けられます。一般に胆管がんという場合はおもに肝外胆管に発生したがんをさしますから、ここでは肝外胆管から発生する「いわゆる胆管がん」について解説します。肝内胆管がんは肝臓にできたがんとして取り扱われます。このホームページでは肝臓がんの項で解説しています。

発育の仕方

胆管がんは胆管の内側の粘膜から発生しますがその発育の仕方は浸潤性発育といい胆管粘膜から発生したがんはインクが和紙にしみこむように周辺へ広がっていく「かたち」が多いのです。がん細胞は胆管の粘膜層ではなくその下の組織に浸潤することも多く見られ、さらに胆管に沿って上下方向や胆管の外側に向かったひろがりを示します。その他に胆管の「くだ」の内側にきのこ状に盛り上がったり、また鋳型状に内腔を埋めるように大きくなったりする(胆管内発育)場合もあります。

胆管について

胆管は肝臓でつくられる胆汁を十二指腸まで導く導管で、肝臓の中を走る肝内胆管と肝臓の外に出てから小腸までの肝外胆管に分けられます。肝臓の中から木の枝が幹に向かって集まるように徐々に合流して、肝臓から出る際に左と右の胆管(左右の肝管と呼びます。)が合流して一本となります。肝外胆管の途中で胆汁を一時的にためておき濃縮する『ふくろ』が胆嚢です。胆管の壁(かべ)は正常ではとてもうすく内側から(1)粘膜、(2)線維筋層、(3)外膜の3層に区別されます。

発生頻度

胆道がん(胆嚢がんを含み肝内胆管がんを含まない)の発生状況は1970年には死亡者数が男女あわせて人口10万人あたり3100人余りだったのが20年たった1990年には12000人と約4倍に増えており、さらに1999年には、15000人となっています。人口構成の老齢化の影響を補正しても増加傾向が認められます。そのなかで、胆管がんによる死亡数は8500人で胆嚢がんによる死亡数は6500人です。これは実際の病気が増えたことと診断がより正確にできるようになったために「胆管がん」という診断名がつくことが多くなったことで統計上の患者数が増えている両方の面があると思われます。

症状

胆管はがんができることによって細くなり、遂には閉塞し胆汁が流れなくなります。閉塞した部分より上流(肝臓側)の胆管は圧があがってダムの上流の川幅が広くなるように拡張し、さらに圧力が上昇すると胆汁が胆管から逆流して血管の中にはいるようになり、胆汁中に含まれるビリルビンという黄色い色素のために皮膚や目の白い部分が黄色くなります。これを閉塞性黄疸といいます。また、胆汁が腸内に流れこまなくなると便の色が白っぽいクリーム色になり(白色便)、逆に血液中のビリルビンが尿中に排泄されるようになり、尿の色が茶色っぽく濃くなります(黄疸尿)。胆汁の中にはビリルビンのほかに胆汁酸という物質も含まれているので、これが血管内に逆流すると皮膚のかゆみの原因となります。

転移の形式

1.リンパ節転移

胆管周囲をとおるリンパ管は主に肝臓から流れ出し、膵臓、胃、十二指腸、あるいは背骨の近くを走る大きな血管の周囲のリンパ節につながっています。がん細胞はこれらのリンパ管に入り込みリンパ流に乗って転移をします。手術で切除される胆管がんの40~50%にリンパ節転移が見られます。

2.血行性転移

胆管周囲の血管にがん細胞が入り込み、肝臓をはじめとする他の臓器に転移をすることがあります。

3.腹膜播種性転移

胆管の壁の厚みは1~1.5mmしかないので、がんはすぐに胆管の外に達します。しかし、すぐに胆管の外、おなかの中の空間(腹腔)にこぼれてしまうわけではなく、胆管周囲の線維組織や脂肪組織の中に染み込むように広がります。さらに外へと大きくなるとついには腹腔(おなかの中で内臓の外の空間)に種が播かれるように広がります。

診断するための検査

胆管がんはすでに説明したように、まわりの組織にしみこむように広がることが多く、明瞭な腫瘍としてのかたまりをつくりません。また、その解剖学的な位置から、胃や大腸などのようにがんを直接、間近に観察できるような検査は不可能です。ですから、その実体を正確に描出し診断することは容易ではありません。しかし最近の画像診断技術の進歩によって、胆管がんをより早期に発見し、またその存在部位やひろがりをかなり正確に診断できるようになりました。

1.US(超音波検査:Ultrasound)

胆管の拡張をみるのに適しており、外科的処置が必要な閉塞性黄疸かどうかの判断にとても役立ちます。胆管の拡張の仕方を見ることで胆管の閉塞部を推測できます。また、ある程度腫瘍をかたまりとしてとらえることができます。外来で手軽におこなうことができ、患者さんの苦痛もまったくなく、すぐに検査結果がわかるため、胆管がんや膵がんなど閉塞性黄疸を伴うことが多い病気に対して最初に行われるべき検査です。

2.CT(コンピュータ断層撮影:Computed Tomography)

腫瘍の存在部位やひろがり、胆管の拡張程度・部位をみることができます。また造影剤をもちいることでがん組織とがんでない組織の血流の差を利用して腫瘍を浮き立たせることもでき、腫瘍がどの程度周囲の血管に浸潤しているかも推測できます。最近では、撮像素子の進歩や画像情報をコンピュータで処理することで、立体的に腫瘍の形をとらえたり、胆管の内側の凹凸を仮想的に表現したりすることで、より微細な変化までを検出できるようになってきています。
MDCTについて:MDCTとはmulti-detector CTといい、X線を測定する検出器(detector)がこれまでのCTでは1箇所であったのに対して、4箇所設けられておりそのために1回のスキャンあたりの所要時間がきわめて少なくしかも情報量が多いため、より精密な3次元画像を再構築できます。

3.MRI(磁気共鳴画像:Magnetic Resonance Imaging)

CTと同様に胆管の拡張や病変の存在部位・ひろがりを診断できます。
CTとは情報の内容が違い、互いに相補って診断に寄与します。

4.PTC(経皮経肝胆道造影:Percutaneous Transhepatic Cholangiography)

がんのために胆汁の流れがせき止められ、太くなった上流の胆管に直接針をさし造影剤を注入する方法です。狭窄・閉塞している部分より上流の胆管のようすが詳しくわかり、腫瘍の存在部位やひろがりの診断に役立ちます。

同時に黄疸の治療として下流に流れなくなった胆汁を体の外に導出する処置も行うのが普通です。これをPTCD(経皮経肝胆道ドレナージ術: Percutaneous Transhepatic Cholangiodrainage)(ドレナージとは『水などをある場所から導きだす』という意味です)といいます。取り出した胆汁のなかにがん細胞がいるかどうか調べる(胆汁細胞診)ことでがんの確定診断に有用です。
またこの経路を使用して直接胆管の中に細いファイバースコープを挿入し胆管の粘膜を観察したりそのバイオプシーをし、腫瘍のひろがりをより詳しく調べたりする方法もあります(PTCS(経皮経肝胆道鏡検査:Percutaneous Transhepatic CholangioScopy)。

5.ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法:Endoscopic Retrograde holangioPancreatography)

ファイバースコープを十二指腸まで挿入し、胆管と膵管の出口である十二指腸乳頭から細いチューブをいれ造影剤を注入して胆管や膵管の形を調べる方法です。 PTCとは逆に、つまっている部分より下流の情報が主に得られます。PTCと併用することで狭窄・閉塞部位についてより詳しい情報が得られます。

6.MRCP(核磁気共鳴胆道膵管撮影法:Magnetic Resonance CholangioPancreatography)

MRCPはMRIの原理をつかって胆管と膵管を映し出す方法です。
近年、装置の性能が向上したこと、撮像法の工夫により、胆管や膵管を短時間にしかも高画質で描出できるようになりました。膵管の観察には従来はERCPが用いられていましたが、(1)患者さんへの負担が大きいこと、(2)狭くなっている部分より上流の情報が得られないこと、(3)圧力をかけて造影剤を注入するため生理的な情報が得られないこと、などの欠点があり、徐々にMRCPで代用されるようになってきています。

MRCPは
(1)患者さんの負担がまったくなく、前準備などもあまりなく簡便に施行できること、
(2)狭くなっている部分より上流の情報も得られること、
(3)より生理的な胆管・膵管の状態が観察できること、
(4)胆管結石に対する診断精度が高いこと、
(5)胆管狭窄(胆管が細くなっていること)があることあるいはありそうなことを診断する能力が高いこと、
またその原因診断の精度もかなり良好なこと、などにより、最初に胆管に病気があるかもしれないと疑った場合に、早めに行うべき検査法としてとても有用なものといえます。
しかし、ERCPなどの検査では描出できるような微細な胆管壁の変化は捉えきれないので、この検査で異常がないからといってただちに安心と言うわけではないのです。他の検査でなんらかの異常が指摘されていて、それが胆管の悪性腫瘍を示唆する所見である場合は、ERCPなどのより精度の高い検査が必要になると考えてください。

7.血管造影検査

手術の前に肝臓や膵臓のまわりの血管が腫瘍によって、浸潤されていないか、また走行異常がないかを診断するために施行します。脚の付け根の動脈から細いカテーテルを挿入しそれを肝臓や膵臓に分布する動脈まで進め、そこから造影剤を注入します。血管が腫瘍によって浸潤をうけると締め付けられて細くなったり (狭窄)、詰まってしまったり(閉塞)しますが、その様子を直接描出することができます。
血管の走り方(走行)や枝分かれの仕方(分岐)はひとりひとり皆違います。胆管がんや膵臓がんなどリンパ節や神経組織を血管に沿って切り取る手術の場合には大変有用な情報を提供します。

8.EUS(Endoscopic Ultrasonography)

胃や十二指腸まで先端部に超音波機器が仕込んである内視鏡をすすめて、そこから超音波検査をする方法です。体の外から検査する場合に比較して膵臓のごく近くから検査ができますから、病変部に到達するまでに超音波がいろいろな障害物で減衰せず、高い周波数が使用できるためより細かな形の違いまで描出し分けることができ、情報量の多い画像が得られます。

病期

胆管がんの進行度(すすみ具合)は0から4までの4段階の病期(ステージ)で示します。
ここでは、国際的に使われているもの(UICC分類)について説明します。

0 期 がんが胆管粘膜のみにとどまっている段階。
リンパ節転移、遠隔転移なし。
1 期 がんが胆管の壁内にとどまっている段階。
リンパ節転移、遠隔転移なし。
2 期 がんが胆管周囲の結合織まで及んでいる場合。
リンパ節転移、遠隔転移なし。
3 期 がんは胆管周囲の結合織までしか及んでいないが、胆管のそばや膵臓のまわりなどのリンパ節に転移している状態。
4A 期 胆管に近い臓器(膵臓、肝臓、十二指腸、胆嚢、大腸、胃)に直接浸潤して広がっている段階。
リンパ節転移の程度は問わない。
5B 期 肝臓など他の臓器へ転移したり、またおなかの中にがん細胞がこぼれて広がる腹膜播種がある段階。
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Chapter.2:治療と副作用

手術療法

最初に説明しましたように胆管はいろいろな臓器の中や近くを走行していますから、がんがどこにあるか、またどの程度まで広がっているかによって、手術の仕方が違ってきます。手術では胆管とその周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切り取るのが基本です。最初に説明しましたように胆管はいろいろな臓器の中や近くを走行していますから、がんがどこにあるか、またどの程度まで広がっているかによって、手術の仕方が違ってきます。手術では胆管とその周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切り取るのが基本です。

1.肝門部胆管と上部胆管にできたがん

肝門部は字のごとく胆管や血管が肝臓に出入りする場所であり扇のかなめのような位置にあります。上部胆管は肝門部胆管に連続する胆管です。ですからこれらの場所にできた腫瘍を切除するには、かなり限局している場合を除いて、肝臓の左右どちらか半分か真ん中をとるかしてできるだけ根治的な切除を目指します。

2.下部胆管にできたがん

膵臓に近接しているので膵臓の一部を一緒にとる必要があります。

3.中部胆管にできたがん

そこだけ取り除いてすむ場合はまれで肝臓側か膵臓側のどちらかあるいは両方に広がっていることが多いのです。通常は膵臓を一緒に切除します。

4.胆管に広範囲に広がったがん

がんの浸潤範囲が肝門部胆管から下部胆管まで広がっていると肝臓・膵臓両方を同時に切除しなくてはならなくなります。このような手術は腹部手術で最も大きくて手間がかかり、それだけ危険も大きいため、手術治療で得すること(メリット)と手術により命を含めて失われるもの(デメリット)とのバランスを考えた治療法の選択が必要になります。

以上のように、胆管がんでは、がんの広がりに応じた安全でできるだけ根治的な術式が選択されます。胃がんや大腸がんでは診断・治療の体系がほぼ確立されてきており、いわゆる「標準的治療」とされていますが、胆管がんをふくめた肝胆膵領域がんでは、一応の基準となる治療法を決めて、個々の症例に応じた柔軟な術式選択が行われます。

手術の危険度については(1)手術規模がかなり大きくなること、(2)肝臓や膵臓など生命にきわめて重要な臓器に直接操作が加わることで、術後合併症や手術死亡は他の臓器のそれより依然高率なのが現状です。手術をうける前にはその手術でどのようなメリットがあり、どの程度の危険度があるのかをよく理解しておく必要があります。

放射線療法

放射線治療は腫瘍細胞が、周囲の健常組織より放射線に対して感受性が高い場合に治療として成り立ちます。しかし、胆管がんの細胞の放射線感受性は他の臓器に発生する高感受性腫瘍ほどには高くなく、周囲正常組織とそれほど変わらない場合が多いのです。ですからがん周囲の健常組織にはなるべくかからないようにしないと放射線による障害が前面に出てしまいます。またがんを死滅させるために必要な線量はがんの大きさ(がん細胞の量)が少なければ少ないほど、小さくてすみますので、放射線照射はできるだけせまい範囲に少ない線量で効果が上がるように工夫されます。その適用は、部位・手段・線量とその配分について、手術と同様、患者さんごとに考慮されます。

放射線療法はその照射の仕方により(1)体外照射法、(2)術中照射法、(3)腔内照射法の3通りがあります。体外照射法は放射線を体の外から少ない線量に分けてくり返し照射する方法で、術中照射法は手術の際に病変部位を露出させ、直視下に大線量を1度で照射します。腔内照射は胆管の中においてある細いチューブを通してラジウムやイリジウムの針(小線源)をがん巣の近くまで送り込み、がんとその近傍だけを効率よく照射する方法で、PTBDによる方法・ ERCPによる方法・手術時にチューブを留置してくる方法の3通りがあります。
術中照射法・腔内照射法についてはそれぞれ施行可能な施設はかぎられています。

胆管がんにおいては外科的に切除できない場合や手術で主病巣を切除した後の後療法として放射線治療は有効といわれています。外部照射法での急性期の副作用としては全身倦怠感、食欲不振などがあります。また限局した部位に高線量が照射された場合に、ある程度時間が経過してから、消化管では潰瘍形成・出血、胆管では閉塞、血管では閉塞や出血などが起こることがあります。

化学療法

胆管がんに対する抗がん剤治療はそれ単独よりも他の治療法と組み合わせて施行されることが多く、まとまった報告がありません。投与の方法としては(1)経静脈的投与、(2)経動脈的投与、(3)経口投与などがあります。

化学療法が胆管がんに対してどの程度有効かはこれから検討されていく問題です。

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Chapter.3:病期別の治療

ステージ 1 がんが胆管粘膜のみにとどまっている段階。
リンパ節転移、遠隔転移なし。
ステージ 2 がんが胆管の壁内にとどまっている段階。
リンパ節転移、遠隔転移なし。
ステージ 3 がんが胆管周囲の結合織まで及んでいる場合。
リンパ節転移、遠隔転移なし。
ステージ 4 がんは胆管周囲の結合織までしか及んでいないが、胆管のそばや膵臓のまわりなどのリンパ節に転移している状態。
治療法の選択について

前述したように胆管がんの領域はまだ標準的な診断・治療が確立しておらず、ある施設では手術可能な症例が別の施設では手術の対象とならないとされることもめずらしくありません。特に肝臓の入り口近く(肝門部)にできた胆管がんは一般的には外科切除は困難とされており、最初に診察した医師の判断が重要になります。

内科医は切除の基準が外科医より消極的なのが普通です。胆管がんに対して有効といえる治療法は外科切除をおいて他にないのが現状ですから、「胆管がん」(「胆嚢がん」も)と診断されたら、手術の可能性について専門医に必ず相談するようにしてください。

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Chapter.4:再発と予後

再発は(1)切除した部位に再発する(局所再発)、(2)腹膜に再発する(腹膜播種)、(3)他の臓器に転移再発する、などです。再発様式によりおこる症状もさまざまで治療も一人一人の患者さんの状態にあわせて行われます。腹膜再発に対しては対症的な治療しかできません。治療の考え方は初回と同様で外科切除できるのであれば積極的に行われるべきです。

手術でがんが取りきれた場合の5年生存率は40~50%です。また顕微鏡でみたレベルで少し残っている場合でも5年生存率は10~20%あります。放射線療法や化学療法では完全な治癒は望めません。

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説明文にて掲載している諸症状で思い当たる節があった場合など、
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自己判断で迷わず、まずは専門家である医師の検診を受けることをお勧めします。
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