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肝細胞がんの内科治療と成績

肝細胞がんの内科治療と成績

最終更新日 : 2022年5月16日

主な内科療法について

  1. ラジオ波焼灼療法(RFA):超音波(エコー)で見ながら、腫瘍に電極針を刺し、ラジオ波電流を流すことにより、電極周囲に発生させた熱により腫瘍の壊死を図る治療です。5〜10分の加熱により直径2〜3cmの球状の範囲が凝固されますので、この範囲に完全に収まる小さながんが最もよい適応となります。3cm程度になると、辺縁に治療が不十分な場所が残らないように、針を少しずつずらして複数回加熱しますが、治療の確実性が低下します。近年の臨床試験で、確実に焼灼できるような小病変であれば手術と同等の治療効果が得られることが確認されましたので、特に高齢の方などでは、RFAを推奨することが増えています。このほか、切除後の再発や、肝障害度Bなど手術困難例もRFAの対象となります。経過が順調な場合は治療の4-5日後に退院可能ですが、出血(腹腔内・胸腔内・胆道)や肝梗塞、肝膿瘍、熱による周辺臓器障害などの重篤な合併症も起こりえます。
    • 初回RFAからの生存成績*(2008年-2017年):生存期間中央値:56.4ヶ月
      1年生存率:95.4%、3年生存率:70.6%、5年生存率:44.8%
      (各治療における生存成績に関しては、治療開始時のがんの状態が異なりますので、その成績は単純に比較できるものではありません。)
  2. 肝動脈化学塞栓療法(TACE):正常の肝臓は、肝動脈および門脈からそれぞれ2割と8割の血流を受けますが、肝細胞がんは肝動脈のみから影響を受けます。この性質を利用し、がんを栄養とする肝動脈を通じて抗がん剤と塞栓剤を注入することで、正常肝へのダメージを最低限にしながらがんを攻撃・兵糧攻めにする治療がTACEです。1本の血管を塞栓することにより、その血管から栄養を供給されるがんを同時に治療できることから、手術やラジオ波焼灼療法が不向きの多発病変が良い適応です。複数の血管から栄養を受ける場合や、大型のがんの場合には、一度に塞栓を行うと、正常肝へのダメージや腫瘍崩壊によるダメージが大きくなることがあり、計画的に複数回に分けて治療を行うこともあります。また、肝機能が悪い場合には、動脈塞栓のみでも肝不全に進行することがあり、抗がん剤のみを注入する動注化学療法(TAI)を選択することもあります。
    • 初回TACEからの生存成績*(2008年-2017年):生存期間中央値:32.3ヶ月
      1年生存率:79.2%、3年生存率:45.9%、5年生存率:24.7%
  3. 薬物療法:
    • アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法:手術やラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法の対象とならない多発がんや肝臓外への転移がある場合に対象となる、2020年に承認された2つの点滴薬の併用療法です。肝細胞がんに対して初めて承認されたがん免疫療法であるアテゾリズマブと、がんが生き延びるために周りに働きかける「血管新生」を阻害する分子標的薬のベバシズマブを組み合わせた治療です。主な副作用に高血圧、蛋白尿、疲労、注入に伴う反応、下痢、食欲減退などがありますが、甲状腺など数多くの臓器に影響しうる免疫療法特有の副作用が生じることもあります。3週間に1回点滴治療を行います。初回は副作用に注意しながらゆっくりと点滴しますが、最終的には毎回1時間半程度の点滴時間となります。
      アテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法
    • ソラフェニブ療法:手術やラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法の対象とならない多発がんや肝臓外への転移がある場合に対象となる、内服薬による標準的な薬物療法です。1日2回の服薬を継続します。ソラフェニブは、がんが生き延びるために周りに働きかける「血管新生」を阻害する、分子標的薬です。手・足の粘膜障害や高血圧など、分子標的薬ならではの副作用が比較的高頻度で起きるため、注意が必要です。肝硬変の進行度によっては投与の対象とならない場合があります。
      ソラフェニブ(ネクサバール)療法
    • レンバチニブ療法:ソラフェニブと同様の治療効果を有し、2018年に保険承認された内服薬による治療で、ソラフェニブと同様に、手術やラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法の対象とならない多発がんや肝臓外への転移がある場合に対象となります。1日1回の服薬を継続します。レンバチニブもソラフェニブと同様の、血管新生を阻害する分子標的薬で、高血圧や浮腫、出血、手・足の粘膜障害などの副作用に対する注意が必要です。
      レンバチニブ(レンビマ)療法
    • レゴラフェニブ療法:ソラフェニブが効かなくなった肝細胞がんに対する2次治療として、2017年に保険承認された内服薬による治療です。1日1回の服薬を3週間継続した後、1週休むというサイクルで継続します。レゴラフェニブも血管新生を阻害する分子標的薬で、手・足の粘膜障害や高血圧などの副作用があり、注意が必要です。
      レゴラフェニブ(スチバーガ)療法
    • ラムシルマブ療法:腫瘍マーカーである血清AFP値が400ng/mL以上の肝細胞癌に対する二次治療として、2019年に保険承認された注射剤による治療です。1回約1時間の点滴を2週間ごとに繰り返します。ラムシルマブも同様に血管新生を阻害する分子標的薬で、浮腫や高血圧、蛋白尿などの副作用に対する注意が必要です。
      レゴラフェニブ療法
    • カボザンチニブ療法:ソラフェニブまたはレンバチニブが効かなくなった肝細胞がんに対する治療として、2021年に保険承認された内服薬による治療です。1日1回60mgを空腹時に内服します。食事の1時間前から食後2時間までの間の服用を避けてください。カボザンチニブも血管新生を阻害する分子標的薬で、手・足の粘膜障害や高血圧などの副作用があり、注意が必要です。
      レゴラフェニブ療法

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