癌研有明病院 THE CANCER INSTITUTE HOSPITAL OF JFCR

腎がん

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腎がん
目次
Chapter.1: 腎がんとは
Chapter.2: 症状
Chapter.3: 診断
Chapter.4: 鑑別診断
Chapter.5: 病期診断
Chapter.6: 治療
Chapter.7: 療法の副作用と対策
Chapter.8: 生存率

Chapter.1: 腎がんとは

腎臓の解剖

腎臓は、尿を造る臓器です。その他に血圧の調節、ビタミンDの活性化、造血ホルモンの生成などにも関わっている臓器です。
そら豆のような形をしておもさ130g、長径11~2cmで、副腎と共に脂肪に包まれています。肋骨に上半分を守られるように、背中側に左右に1つづつあります。腎がんとは腎臓の中の尿細管の上皮細胞から発生すると考えられています。

腎臓の解剖図
腎臓の解剖図
拡大図はこちら

腎がんの統計

10万人当たりの発生率は、男性で7人、女性で3人程度です。
40歳以上に発生しやすく、60歳台に最も多い腫瘍です。

腎がんの発生と病理

病因としては、腎不全、喫煙、性ホルモン、高血圧、肥満の関与が指摘されています。
また、常染色体優性遺伝であるvon Hipple-Lindau病と関連性が知られており、腎がんのうち最も多い組織型である明細胞がんでは3番染色体短腕の欠損がしばしば認められることが知られています。

明細胞がんの他には乳頭状がん、嫌色素性細胞がん、集合管がんなどの組織型があります。
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Chapter.2: 症状

早期では無症状、最近は人間ドックの腹部超音波検査や、他の病気で精査中に偶然発見される場合が増えてきています。古典的な症状は、血尿、疼痛、腹部腫瘤ですが、骨転移による病的骨折や、肺転移による咳や血痰などの転移による症状で見つかる患者さんも少なく有りません。
また進行にともない発熱、食欲不振、体重減少、貧血(時に多血症)、高カルシウム血症などの多彩な全身症状を伴うことも有ります。
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Chapter.3: 診断

超音波検査

腫瘍の発見には有用ですが、質的な診断(がんかどうか)は難しい場合もあります。

CT検査

造影剤を使用したCTでは、ほぼ質的な診断も可能です、同時にリンパ節転移や、静脈浸潤(腎がんは、静脈のなかに入りこみ腫瘍血栓をつくることが多い)等の有無を診断することができます。


肝臓がんのCT写真:
右腎の背側にあるのが腫瘍。
両腎にある黒い腫瘤は良性の嚢胞

血管造影

足の付け根の動脈からカテーテルを入れ腎臓に行く血管に造影剤を入れながらレントゲン撮影をする検査です。CTの性能が向上してきたので最近は後に述べる塞栓術の時以外にはあまり行われません。

血液検査

腎がんに特有の腫瘍マーカは有りませんが、血沈やCRP、IAP、等の値である程度予後を予測することができます。

組織検査

CT検査で確信が持てれば、生検は通常行いません。
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Chapter.4: 鑑別診断

腎血管筋脂肪腫

血管腫と筋腫と脂肪腫からなる代表的な腎の良性腫瘍ですが、腎がんとの識別がなかなか困難です。
CTで脂肪成分を認めると診断が容易になります。大きいものは自然破裂の危険性が有るので手術をすることがあります。

オンコサイトーマ

CTで腫瘍中心部に瘢痕像を認めるのが特長ですが術前診断がむずかしい場合も有り手術後に診断がつくこともあります。

黄色肉芽腫

慢性炎症性疾患ですが大きな腫瘍をつくることが有り注意が必要です。

腎盂がん

腎盂の(粘膜)移行上皮から発生します。尿路造影検査と尿所見で多くは鑑別可能です。
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Chapter.5: 病期診断

先に述べたように、原発巣の進行度、静脈浸潤、リンパ節転移は腹部CTにより検索します。
肝臓等の転移も診断できます。転移の好発部位は肺と骨なのでそれぞれ胸部CTと骨シンチグラフィーを行って検索します。肺に転移がある場合には脳のCTかMRIで脳転移の有無を調べます。腎がん取扱い規約による分類を表にします。

進展度
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Chapter.6: 治療

放射線や抗がん剤に対する感受性が低いので、手術や免疫療法が行われます。

手術

転移の無い腎がんに対する治療は、手術が第一です。
通常は、腎臓に入る動脈、腎臓から出る静脈の順に処理をして、腎臓を周囲の脂肪ごと副腎も一緒に取る根治的腎摘出術が行われます。4cm以下で腎臓の辺縁にできているがんに対しては、がんのできているところを部分的に取る腎部分切除でも、根治腎摘出術と同等の治癒率がえられています。
肝臓がんの敵除標本:腫瘍は円形、黄色

動脈塞栓術

腎臓に行く動脈を詰めて血流を遮断しがんを兵糧攻めにする方法です。
手術をうける体力がない患者さんや、転移がたくさん有る患者さんの原発巣に対する治療として選択されます。

放射線治療

転移巣に対する症状緩和目的で30Gy程度の線量で行われます。

免疫療法

特に肺転移に対して有効です、インターフェロン、インターロイキン2等が用いられています。
その他にも養子免疫療法等も試みられましたが、いずれも15%程度の有効率なので、煩雑でコストのかかる方法はあまり用いられなくなってきています。インターフェロン、インターロイキン2共に保険適用が有ります。
前者は自己注射が認められており外来治療可能です。
後者は現在、静脈内投与のみが認められており、非常に高価な薬です。

分子標的治療法

肺がん、乳がん、大腸がんなど他のがんと同様に、転移性腎細胞がん患者さんに対しても、分子標的治療という新しい概念による治療が始まっています。これはがん細胞に特有な蛋白質・シグナルを標的とすることで、「がん細胞のみを壊して、正常細胞を傷つけない」ということがコンセプトです。転移性腎細胞がんでは、2008年にネクサバールとスーテントという2剤が、厚生労働省に承認され、今後も様々な薬剤が登場する予定です。これらの薬剤では、有効性について多くの報告がある一方で、従来の抗がん剤とは異なる未知の有害事象の出現も報告されています。
がん研有明病院では、多くの領域の医師、さらに薬剤師、看護師、また製薬会社も含めた「チーム・スーテント」「チーム・ネクサバール」を編成しています。チーム医療により、いろいろな立場の医療者が話し合い、協力することで、これらの薬剤をより効果的に活用し、また有害事象への早期の対応を行えるように努力しています。
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Chapter.7: 治療法の副作用と対策

手術療法

1. 腎機能障害
腎機能が両方とも正常な患者さんでは片方の腎臓を全部取り除いても、通常の生活や軽い運動(水泳やゴルフ)等全く支障有りません。腎臓が1つの患者さんや対側の腎機能の不十分な患者さんには腎部分切除が選択されます。
2. 後出血
部分切除では、稀に術後出血をする可能性が有りますので4-5日間の安静が必要です、もしも出血した場合には、塞栓術や再手術が必要になることが有ります。全摘術では術後安静の必要は1日のみです。

免疫療法

1. 発熱
インターフェロンや、インターロイキン2では発熱や倦怠感等の感冒様症状が出ます、特に治療開始時には高熱が出ますが、ほとんどの患者さんで“馴れ”が生じ、だんだん熱が出なくなり解熱剤なども不要となることが多いです。疲労感は多少残ります。
2. 血管外漏出症候群
インターロイキン2使用中に肺などに水がたまる重篤な副作用を起こすことが知られています。頻度はそれほど高くないようです。
3. 動脈塞栓術
発熱や痛みが一時的に有りますが徐々におさまります。
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Chapter.8: 生存率

当科での10年疾患特異生存率(10年間に腎臓がんで死亡しない率)
転移の無い患者さんのは68.4%。
腫瘍の大きさが4cm以下でかつ転移のない患者さんは84%
治療開始時に転移のある患者さんは17%。
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