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肝臓がん(外科)

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肝臓がん(外科)
目次
Chapter.1: 肝臓がんとは
Chapter.2: 外科切除療法
Chapter.3: 肝細胞がんの再発
Chapter.4: 肝細胞がんの非外科的治療法
Chapter.5: 肝内胆管がん(胆管細胞がん)
Chapter.6: 転移性肝臓がんとは

Chapter.1: 肝臓がんとは

「肝臓がん」は、肝臓固有の細胞ががん化してできた「原発性肝臓がん」と肝臓以外の臓器で発生した悪性腫瘍が肝臓に転移してきて、発育した「転移性肝臓がん」の2種類に大別されます。さらに肝臓から発生するがんには、肝臓の大部分を占める肝細胞ががん化した肝細胞がんと、肝臓内の胆汁の導管である胆管の(上皮)細胞から発生する胆管細胞がんがあります。わが国を含めた極東~東南アジアでは、肝細胞がんは胆管細胞がんの10~20倍近い頻度で発生します。

最近わが国では、肝細胞がんの約7割がC型肝炎、2割がB型肝炎が原因で発生しており、そのためがんを持っている患者さんの約7割近くはウィルス性肝炎のための肝硬変を合併しています。

肝細胞がんによる死亡数は1970年代後半から急速に増加していますが、そのほとんどはC型肝炎からの肝がん死です。2001年現在も肝細胞がんの頻度は増加しており、がんでの死亡数をみても男性で3位、女性で4位で年間4万人前後の人がこの病気で死亡しています。これは、第2次世界大戦後の騒乱の中でC型肝炎ウイルス感染の悪循環が起こったためとされています。肝細胞がんはだいたい2015年ごろまで増加し続けるとされています。

参考「肝臓の良性腫瘍」
肝臓の良性腫瘍の中で多いのは肝嚢胞(のう胞)と肝血管腫です。
肝のう胞は肝臓の中の水のたまった袋で、肝血管腫は病的に太くなった血管が毛糸球のような腫瘍になったもので、切ってみるとスポンジのような割面なので肝海綿状血管腫と呼ばれます。これらは、検診などで発見されることが多くほとんどのものは無症状で治療を必要としません。まれに非常に大きくなると、おなかが張る感じがする症状があらわれます。この場合、のう胞に対しては、中の液体を抜いてアルコールなどを注入する治療を行います。

ここではまず肝臓固有の細胞から発生した「原発性肝臓がん」のうち頻度の圧倒的に多い肝細胞がんをいわゆる「肝臓がん」として解説します。

肝臓がんの症状

肝臓がんはよほど大きくなるか進行しない限り症状はほとんどありません。検診やほかの腹痛などで超音波検査をうけた時に発見される場合が多いようです。

肝細胞がんはB型、C型肝炎の患者さんの発がんの危険が高いことがわかっているので、そのような患者さんは定期的に検査をうけ、症状が全くでない段階でがんが発見されています。
肝の腫瘍が大きくなった場合は腹痛や腹部の圧迫感、また肝機能障害が進んだ場合は黄疸、腹水、倦怠感、食欲不振などの症状がでてきます。

* ウィルス性肝炎と肝臓がん
最新の全国調査(第11回全国原発性肝がん追跡調査報告、日本肝癌研究会)によると、肝臓がん患者の68.9%でHCV抗体が、17.8%でHBs抗原が陽性です。また、2.8%でHCV抗体、HBs抗原ともに陽性です。
最近の傾向としては、HCV抗体陽性率は漸増し、HBs抗原陽性率は徐々に減少しています。

B型肝炎・C型肝炎ウィルスともに肝臓の発がんに強く関係していると考えられています。
B型肝炎・C型肝炎ウィルスによる慢性肝炎あるいは肝硬変の患者さんは肝臓がんのハイリスクグループですから、定期的なチェックを受けることが必要です。
*肝臓がんの検査
1. 腫瘍マーカー
肝細胞がんに特異的なものにAFP, AFP-L3分画、PIVKA-2が、胆管細胞がんや消化器がんの肝転移で濃度が上昇するものとしてCEA、CA19-9などがあります。
2. 画像診断
超音波検査、CT、MRI、血管造影などが必要に応じて行われます。
肝機能の検査:一般の血液生化学検査の他にICG負荷試験やアシアロシンチグラムなどが行われます。

肝臓がんの治療法

肝臓がんの治療法には大きく分けて手術とそれ以外の治療があります。
ほかのがんと同じように、手術で取りきれれば根治する可能性がありますが、肝臓の機能が悪いと手術に耐えられません。つまり、肝臓の一部を取った後、残った肝臓が充分でないと手術後に肝不全に陥る危険があります。
肝臓がんの場合は肝硬変や慢性肝炎などを合併していてもともと肝機能の悪い患者さんが多いため、これは大きな問題です。手術に耐えられないと判断された場合は手術以外の治療法を選択します。最近は内科的あるいは放射線科的治療法の進歩によって、肝細胞がんの治療成績は向上しています。比較的小さながんを診断して治療すれば外科切除に匹敵する効果も認められています。

当院では腫瘍の状態、肝機能を患者さんごとに内科・外科で検討し、患者さんにご説明した上で治療方針を決定しています。
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Chapter.2: 外科切除療法

手術の方法

肝臓は再生力の旺盛な臓器で、正常であれば70%程度切除してももとの大きさ近くまで再生します。しかし、肝硬変などがあると肝臓の再生はあまり期待できず、大きく切除すると残った肝臓の働きでは体から要求される仕事を十分にはこなせなくなってしまいます。これを肝不全といいます。

肝不全の治療法は肝臓を入れ替える(肝移植)しかありません。
ですから、ウイルス性肝炎やそのための肝硬変で肝機能が低下していると思われる場合には、その低下がどの程度かを血液検査などで手術前に推定し、CTなどの画像検査から肝臓の体積を計算して、「切り取る予定の肝の分量」が「切り取っても大丈夫な肝の分量」を超えないように、小さめに肝臓を取ることになります。

開腹の仕方

手術のための皮膚の切り方(皮切法)はいろいろあり、術式によって選択します。

図1 肝切除で用いられる皮切法
図1は、肝臓の腫瘍を切除する場合によく用いる皮切法です。

肝臓は大きな臓器で、右の横隔膜に接して肋骨のかごに保護されてあります。ですから、たとえ小さく切除するにしても、安全な手術のために肝臓全体を見渡すためには他の手術に比べて大きくおなかを開ける必要があります。
肝臓の右側にある腫瘍を切除する場合には視野を十分にとるために右方向に長く皮切を伸ばしますが、肝臓の左側を操作するためにはそれほど長く横に切る必要はありません。
大きなきず(創)になることによる術後の障害は、皮膚の一部の知覚(さわった感じなど)が鈍くなること以外には特にありません。
最近、胆嚢摘出術などでよく行われる、「傷の小さい」腹腔鏡手術で肝切除を試みる施設も一部にありますが、切除可能な部位や大きさに制限があり一般的ではありません。

肝臓の解剖

肝臓はひとかたまりの臓器ですが、そのなかを走る血管の分布の仕方によって、便宜上いくつかの区画に分けられます。

まず肝全体は大きく左葉と右葉の二つに分かれます。
さらにそれぞれが2つの区域(左葉は外側区域と内側区域に、右葉は前区域と後区域に)に分かれていて、都合4つの区域があります。このうち外側区域、前区域、後区域はさらに上下2つの亜区域に分かれ、これに内側区域と尾状葉(肝臓の後ろ側の小部分)を加えて合計8つの亜区域に分かれます(図2)。

つまりこれらの亜区域には「番地」がふってあるようなもので、「何番目の亜区域にある」とか「何番と何番の亜区域にまたがる」というように肝臓の中の腫瘍の位置をだれにでも誤解のないように表現するのに便利です。

図2 肝の亜区域(尾状葉(1)は肝の背側にあります)

肝切除の方法

肝臓の切り取り方(肝切除法)は、これら肝の区画の「どこ」を「どのくらい」切除するかによって表現されます。
たとえば、4つの区域のうち3つを取る方法は右または左3区域切除と呼ばれます。次は区域2つを取る方法で左葉切除、右葉切除、中央2区域切除などと呼ばれます(図3)。次が1つの区域を取る方法(区域切除)、さらに1つの亜区域を取る方法(亜区域切除)があります。最も小さく取る方法はがんの周りに正常な肝臓を少しつけて切り取る部分切除という方法です。

がんの大きさにもよりますが、すでに述べたようにどの程度大きく取れるかは肝機能との相談で、肝硬変のある患者さんでは安全のために、亜区域切除や部分切除などより小さい取り方を選ぶのが普通です。
がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さないのがよい手術ということになります。

* 精密な手術方法
がんでない肝臓をできるだけ残し、しかもがんを取り残さない、という一見両立が困難な問題を解決する努力がはらわれ、手術方法が改善されてきました。

肝臓に流れ込む門脈は肝臓の中に入ると木の枝のように分かれて(門脈枝といいます)肝臓の各部分を養います。肝臓がんはこの門脈枝に沿って広がることがわかっているため(図4)、がん病巣とそれに流れ込む門脈枝の領域(肝臓の部分、たとえば1つの亜区域)を取れば最小限の肝臓の切除量で再発しにくい手術ができるのではないかと考えられ、系統的亜区域切除という手術法が生まれました。

実際には手術中に肝臓の中を超音波検査装置でのぞきながら必要な部分だけを取ります。
この方法だと残った肝臓が大きいため、手術後に肝不全が起こる心配が少なく、ある程度まで肝機能の悪い肝硬変でも安全に行えます。

図3 定型的な肝切除のいろいろ(図の薄い色の部分が切除される部分です)

肝切除の麻酔、手術中の輸血

麻酔は全身麻酔で、手術時間は術式によって幅があり、だいたい3~10時間くらいかかります。

肝切除は1980年の始め頃までは、何千CCも出血する命がけの手術で輸血の準備が大変でしたが、最近の専門施設では出血量はほぼ千CC以下で、輸血が必要のない手術も少なくありません。輸血は日赤からの献血血液を用いますので家族血などを集める必要はありません。

* 肝切除時の出血の制御と輸血について
肝臓は厚みのある臓器で内部を血管が密に走行しているため、そのままメスをいれると著しく出血します。
肝臓を切っている(肝を「離断する」といいます)最中の出血を制御するためには、いろいろな分野での発展が
必要でした。まず、肝切除をしている外科医が肝臓の中を血管がどのような方向に走行しているかを理解することが重要です。次に手術中リアルタイムに肝内の血管の位置・向きを調べることが超音波検査により可能になったことがとても役にたちます。

これによって誤って血管を縛ったり切ったりする危険が少なくなり肝切除術の安全性は飛躍的に高まったといえます。また、肝臓に流れこむ血液を遮断してしまえば、肝切除の際の出血を著しく減らすことができます(最初の報告者の名前をとって「プリングル手技」といいます)。
以前はこのようなことをすると肝臓の細胞に酸素が供給されなくなることでのデメリットが大きいとされていましたが、肝臓に血液を流した状態での肝切除と血液を遮断しての肝切除を比較するとむしろ後者の方が手術後の肝機能などの回復が良いとされるようになりました。

肝臓の入り口で肝動脈と門脈が入っている組織(肝十二指腸間膜)を鉗子などではさんで血液が流れないようにしますが、ずっと止めているわけではなく、15分間止めている間に肝臓を離断し、次の5分間は血液を流して肝臓を休ませることを繰り返します。
この方法を用いるとトータル300分以上肝臓に血液が流れこまなくても、問題なかったと報告されています。

癌研病院消化器外科肝胆膵グループでは、このプリングル法を用いて肝切除術を行っており、2001年5月から2002年9月までに行った92回の肝切除術では肝臓を切っている間の出血量の平均が300mlで、手術全体での平均出血量は585mlと1000mlをはるかに下回りました。赤血球輸血は92回中12回(13.0%)でした。

術後経過

手術後しばらくは集中治療室(ICU)や回復室(リカバリールーム)で治療を受けます。
手術後の痛みは他のおなかの手術と変わりません。最近は麻酔法や鎮痛剤の進歩によって、かなり苦痛が軽減されています。

原則として手術翌日からベッドの上で起き上がったり、場合によってはベッドの脇に立ったりするように努力してもらいます。術後2~3日を過ぎると痛みはかなり楽になります。順調であれば、3~4日で普通の病室に戻ります。同じ頃、尿道カテーテル(膀胱にいれて尿を持続的に取る管)が抜け、トイレへ歩いて行けるようになります。術後3日から1週間の間に排ガス(おなら)があり、鼻から胃に入れた管(胃カテなどと呼びます)が抜け、水分から少しずつ食事が始まります。抜糸は1~2週間の間に行われます。
手術の時におなかの中にたまるものを外へ出すために、ドレーンという管が何本か入れられ、傷の近くから体の外へ出ています。おなかの中に汚染がなければ1~2週間でぬけますが、汚染があればゆっくり時間をかけて抜くことになります。

すべてが順調であれば、手術後10日程度で退院です。

手術の危険度や合併症

最も恐ろしいのは手術後の(1)肝不全です。
肝不全になると徐々に黄疸(血液中のビリルビンという色素が増加し、皮膚が黄色くなること)が進行し、肝臓を含めた全身の重要な臓器(腎臓、心臓、肺など)の機能が低下していき最後には死亡します。肝炎や肝硬変のために肝機能が悪かったり、手術中の出血が多かったり、手術後に肺炎などの余病を併発すると肝不全に陥りやすくなります。

転移性肝がんの患者さんのほとんどは肝臓そのものは正常なので、手術によって肝不全になり死亡する確率はほぼ0%ですが、慢性肝炎や肝硬変を伴うことが多い原発性肝がん(特に肝細胞がん)では術後肝不全にならないように、慎重に手術の適応や術式について検討しなければなりません。
昔は手術後にこれで亡くなる患者さんが多かったのですが、最近は手術前の肝機能評価法の進歩、手術技術の向上、術後管理法の進歩などによって非常に少なくなりました。手術死亡率は最近の全国集計では2.7%で、わが国の多くの専門施設では1%程度です。

このほかに、(2)手術後の出血、(3)胆汁瘻(肝臓を切った断面などから胆汁がもれること)、(4)腹腔内膿瘍(おなかのなかに膿がたまること)、発熱、肺炎などの合併症が起こり得ます。適切に治療して、これらをきっかけにして肝不全に陥らないようにします。

退院後の生活

* 退院後の通院の仕方と検査
退院後はしばらくは2週間に一度、順調であれば1か月に一度程度の外来通院になるでしょう。

通院の一番大きな目的は再発のチェックです。
肝臓がんの90%以上にみられるB型またはC型肝炎それ自体が発がんのハイリスクグループであり、ほかのがんに比べて再発が非常に多いことを知っておく必要があります。
チェック方法は腫瘍マーカー(アルファフェトプロテイン、PIVKA-2など)の測定(採血)と超音波検査、CTなどの画像診断で行います。また、食道静脈瘤を合併していることがありますので、定期的に食道、胃の内視鏡検査も必要です。

* 退院後の生活
とくに支障のない限り普通の生活ができます。
飲酒は厳禁です。たばこも好ましくありません。
肝硬変や肝臓がんそのものが進行して肝障害によるさまざまな症状が現れた場合はそれに応じた投薬などを受けます。
たとえば腹水や浮腫が現れた場合は利尿剤が、胃十二指腸潰瘍や胃炎の場合には抗潰瘍薬や胃粘膜保護薬が投与されます。
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Chapter.3: 肝細胞がんの再発

肝細胞がんの再発部位とその症状

残念ながら肝臓がんは最初の治療が見かけ上完全におこなわれても、非常に再発の多いがんです。
がん細胞を最も完全にとりのぞくことができる治療である肝切除術をもってしても、治療3、5年後までにがんが再発する確率はそれぞれ65%、75%なのです。しかし、再発に対する治療法も発達していて、再発後もかなり長い間普通の社会生活を続けることができることを理解する必要があります。
もし医師に再発を告げられたとしても決して悲観する必要はありません。ここで説明するいくつかの治療方法で病気をコントロールし、社会的に活躍している患者さんが数多くいらっしゃいます。

再発の多い理由は、
(1) 90%以上の患者さんはB型またはC型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎や肝硬変を合併しているので、残った肝臓に新しいがんができる危険が高いため、
(2) 肝臓がんは比較的小さな段階(3~5cm)で近くの血管の中に入り込み周囲や他の臓器に転移をおこす性質があるため、と考えられています。
実際、肝臓がんの再発部位の90%以上が残った肝臓での再発(残肝再発と呼びます)で、乳がんや胃がんなどよりはるかに同じ臓器内に再発する頻度が高いのです。

肝臓以外で多いのは肺、骨、副腎、リンパ節などです。骨に転移した場合は痛み(例えば腰の骨に転移した場合は腰や下肢が痛くなります)で気づくことがありますが、それ以外では余程大きくならないと症状は現れません。腫瘍マーカーなどの血液検査やレントゲン検査、超音波検査で再発を発見することになります。

肝臓がんは再発が多いことを理解して、定期的に通院してこれらの検査を受け、できるだけ早い時期に再発を発見して適切な治療を受けることが重要です。
再発の時期は手術後3か月以内から5年以上までいつでも起こり得ますが、1~2年のあたりにピークがあります。

肝細胞がん再発に対する治療法の選択

残った肝臓での再発(残肝再発)に対する治療法の選択は、手術を受けたことのない新しい肝臓がんの患者さんと原則的には全く同じです。

つまり、再発したがんの大きさや進行度と肝機能を考えて手術をするか、その他の治療法にするかを決めます。とはいえ再手術は1回目の手術による癒着を剥がすための手術時間がよけいにかかり、肝臓外科の高度な技術と知識が要求されるので専門の施設以外ではあまりおすすめできません。
実際には肝臓がんの手術を受けた患者さんの10~15%が再手術を受けています。

肝臓以外に再発した場合は、すでに病気が全身病化(がん細胞が全身に散布されている状態)している可能性をしめしているわけですから、原則的には、再発部位以外には病変がないこと、他の治療法と比較し外科治療が最も患者さんにメリット(治療による利益)を与えられる可能性が高い方法であること、手術をすれば病巣を完全に除去できること、などの条件を満たす場合に手術が行われます。

たとえば、副腎、リンパ節や腹壁などへの転移巣を手術で切除することがあります。この場合、残肝再発はないか、あっても手術やその他の治療法である程度抑えることができている、ということが前提になります。

再発肝細胞がんの外科治療成績

残肝再発の場合は再手術が根治的にできたかどうか、がんを取りきれたかどうかにかかっています。
つまり、再手術であっても根治的な手術ができればその後の再発率は根治的な初回手術の成績になんら遜色はありません。ただし、基礎にある肝硬変が進行して肝機能が悪くなっている場合は、その分だけ延命効果(手術で寿命が延びること)は劣るかもしれません。

肝臓以外の再発の場合は、たとえ手術で取りきれたように見えたとしても再々発の可能性が高いといえます。それでも、再発した大きなしこりを取ることができれば、圧迫感や痛みなどの苦痛がとれますし、がんの量を全体として減らすことができます。これは、再発をした後の生活の質を高める(たとえば職場に復帰する、など)ために大切なことです。

手術以外の再発の治療法

再発したがんの広がりが大きい場合や肝機能が初回治療のときより低下している場合は、再手術の対象とならずに手術以外の治療を行うことになります。
この場合は初回治療のときと同じく、肝動脈塞栓療法(TAE)とエタノール注入療法(PEI)が中心になり、その適応も初回治療の際と同じです。

肝臓以外の再発は手術できない場合、放射線治療などを行いますが、できない場合は残念ながら有効な治療法がありません。

再手術時の危険率や術後の死亡率

肝臓の再手術は1回目の手術による癒着を剥がすために手術時間がよけいにかかること以外には、1回目の手術に比べて特に手術の危険性が増すことはありません。手術中の出血量も極端に多くなることはありません。

肝機能が保たれており、手術で完全に取りきれるのであれば、理屈では何度でも手術可能です。再手術を2回以上受けて元気にしている患者さんも多くいらっしゃいます。
ただし、再発したがんの進行度や大きさ、肝機能などが1回目の手術の時と同じとは限りません。再手術を医師から勧められた場合はよく説明を聞く必要があります。

再手術をうけたあとの再々発や死亡の危険度は、再手術を受けた時点での進行度によります。
再切除であっても、小さいうちに発見された再発巣で根治的に手術ができれば、次の再発の危険は少ないといえるでしょう。

手術後、肝不全などの重篤な合併症が起こらなければ、10日~2週間程度で退院し普通の生活に戻ることができます。これは初回手術と変わりありません。
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Chapter.4: 肝細胞がんの非外科的治療法

内科的あるいは放射線科的治療法の進歩によって、肝細胞がんの治療成績は向上しています。
比較的小さながん(径3cmまで)を治療すれば外科切除に匹敵する効果が報告されています。

手術以外の治療法には、肝動脈塞栓療法(英語の頭文字をとってTAEと呼ばれます)、非外科的腫瘍除去療法(エタノール注入療法(同じくPEIT、PEI)、酢酸注入療法(PAI)、マイクロウェーブ(MCT)、ラジオ波(RFA)などの高周波を用いた腫瘍焼灼療法)や放射線療法(リニアック、陽子線、重粒子線など)があります。

肝動脈塞栓療法

肝動脈塞栓療法は肝臓がんに栄養を送っている肝動脈を塞いで、がんを壊死させる(腐らせる)治療法です。
正常の肝臓は肝動脈と門脈の両方から酸素や栄養を受けているのですが、肝臓がんはほとんど肝動脈にたよっています。肝動脈を塞いでしまうと酸素や栄養がいかなくなるので、がん細胞だけが死に正常な細胞は門脈から栄養を受け生き残るという理屈です。

最初に抗がん剤を送り込み、その後塞栓物質を血管に注入し閉塞させます。
がんを小さくし、時には完全に壊死させることもできます。完全に治療できなくとも繰り返すことで治療効果をある程度継続させることができます。

肝動脈塞栓術の適応範囲は広く、手術後にがんが再発したときにも行われますが、黄疸や腹水がみられるくらい肝機能が悪い患者さんやがんによって門脈が塞がっている患者さんに対する適応には慎重でなければなりません。

具体的な方法は血管造影検査と同じで、レントゲン室で局所麻酔下に、脚のつけ根の動脈(大腿動脈)からカテーテルを入れて行います。現在用いているカテーテルは、細くてやわらかいため、治療の合併症はほとんどありません。また、肝臓の奥へとカテーテルを進め、がんとその周囲の狭い肝実質領域だけを塞栓する治療も可能で(区域性肝動脈塞栓術と呼びます)、治療後の肝機能の低下も軽度ですみます。
内科の専門医や放射線医師が行い、治療時間は30分から1時間程度です。

治療中や後に上腹部痛や発熱(39度近いこともあります)がみられることがありますが、時間とともに軽快し、鎮痛剤や解熱剤を使うことでコントロールは容易です。

エタノール注入療法(PEI)

99.5%無水エタノールによるタンパク凝固作用を利用した治療法です。
エタノールのかわりに組織を溶かす酢酸を使用する方法(PAI)もあります。

大きさが3cm以下のがんで3個以下のものがよい適応で、特に小さな肝がんに対して効果的です。2cmのがんなら2~3回、3cmのがんなら3~4回程度の治療が必要です。大きなものはアルコールが腫瘍全体にいきわたらないことが多いため再発しやすく、また超音波検査でみえないものは治療そのものをおこなうことができません。

実際上は、まず超音波で病変を確認し、局所麻酔下に細い針でがんを穿刺します。針先が病巣に入ったら、腫瘍の大きさに応じてエタノールを2~5cc程度注入します。一度に2~3個のがんを治療できます。エタノールを入れている最中と、その直後に痛みがありますが、すぐに軽快します。治療後37℃台の発熱がみられることがあります。3~4日おきに2回目、3回目の治療を行い、入院期間は1~2週間です。

新しい治療法として、ラジオ波による高周波温熱凝固療法(RFA)があります。3cm以下のがんなら一回の治療で完全に壊死させることができ、入院期間も短縮できるという利点が認められて、今後、腫瘍内に液体を注入する従来の治療法に取って代わる可能性があります。エタノール注入療法の場合より少し太めの針を使用するため、出血の危険がありますが、輸血が必要なことはほとんどありません。

肝動脈塞栓術やエタノール注入療法が効かない場合にも用いることができます。超音波で針先を観察しながら穿刺し、高周波でゆっくりとがんを焼灼していきます。一回の治療時間は10~20分程度で、一度に2~3個のがんを続けて治療することができます。治療中、熱感を感じることがあります。もし痛みがあれば鎮痛麻酔剤を使います。
しかし、世界的にもいまだまとまった治療成績の報告が少なく、日本では保険適用が認められておらず、医療側も患者側も「実験的治療」であることを認識した上で施行するべき治療といえます。

局所および全身化学療法

肝臓がんの化学療法に使われる抗がん剤はマイトマイシンC、5−FU(ファイブ、エフ、ユーと呼びます)アドリアマイシン、ファルモルビシン、ミトキサントロンなど他のがんにも使われるポピュラーな薬が主です。

投与方法は肝動脈から注入する方法(肝動注といいます)が中心で、血管造影用のカテーテルを肝動脈に入れて一度だけ(one shot)注入する場合と、肝動脈に専用のカテーテルを埋め込んで繰り返し投与する方法があります。抗がん剤は肝動脈塞栓療法の際に併用すると効果がありますが、単独のone shot動注ではあまり効果がありません。

繰り返し投与する方法では手術で開腹して直接肝動脈にカテーテルを挿入するか、足のつけ根の動脈(大腿動脈の枝)からカテーテルを肝動脈まで進めるか、どちらかの方法でカテーテルを留置して、おなかの皮膚の下に埋め込んだ、薬液注入用の小さい貯留容器(リザーバーまたはポートと呼びます)に接続します。皮膚を通してこのリザーバーを細い特殊な針で刺して繰り返し抗がん剤を注入します。

この方法はOne shot動注療法よりは効果が期待できますが、今のところまとまった報告がなくどの程度の効果が期待できるのかはわかっていません。肝臓がんの患者さんで肝機能がことに悪い場合、非常に進行していて手術や肝動脈塞栓療法ができない場合に次善の策としておこないます。

肝臓がんに対する全身化学療法(点滴などの方法で全身に抗がん剤を投与する方法)の効果が期待できるのは約10%程度であり、有用な抗がん剤治療(あるいはその組み合わせ)は残念ながらほとんどないのが現状です。

全国調査によると、肝臓がんに対する、抗がん剤の単独投与の1、2、3年生存率はそれぞれ、17.0、5.7、2.7%と低く、何も投与しなかった場合の生存率と大差ありません(日本肝癌研究会、第11回全国原発性肝がん追跡調査報告)。

肝移植

世界的には1980年代から切り取ることができない肝腫瘍に対して肝移植が治療として用いられてきた歴史があります。
肝移植は肝臓がんがもっている(1)残った肝臓から新しいがんができやすい、(2)肝内の血管を介して広がりやすい、という好ましくない両方の要素を一度に解決できる理想的な治療法といえます。

肝臓がんに対しては、いろいろな経験の結果、1個で直径5cm以下の場合、3個以内でいずれの腫瘍も3cm以下の場合には一定の良い成績が見込めるといわれています。
問題は特に日本では脳死ドナーがほとんど発生しないことで、現在生体肝移植がどのような肝臓がんの患者さんに対して行われるべきか、国内のいくつかの施設で実践と検討が繰り返されているところです。
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Chapter.5: 肝内胆管がん(胆管細胞がん)

はじめに述べたように、肝臓固有の細胞から発生する原発性肝臓がんには上に述べた肝細胞がん(いわゆる肝臓がん)のほかに、肝臓で作られた胆汁を肝の外まで導く導管である胆管(肝内胆管といいます)から発生する肝内胆管がんがあります。

肝細胞がんと違い肝内胆管がんは通常肝炎ウィルス感染とは無関係に発生すると考えられています。

症状

肝細胞がんと同じく特有の症状はありません。
浸潤性(となりあった組織にしみこむように発育する性質)の強い腫瘍なので、肝臓の出口近くにあると太い胆管に浸潤して閉塞させ黄疸を引き起こします。そうでなくても肝内胆管に浸潤することで肝機能の異常をきたして見つかることがあります。

ウイルス性肝炎と関係が少ないので、肝炎の患者さんを定期的にチェックしていてみつかることがなく、検診でたまたま見つかるか、かなり進行してから発見されることが多い腫瘍です。そのため肝細胞がんに比べて見つかったときに症状がある(30%程度)ことが多いのです。肝の腫瘍が大きくなった場合は腹痛や腹部の圧迫感などが現れます。

治療

肝細胞がんと違い外科切除以外に実際上有効な治療は皆無といってよい病気です。
正常の肝臓に発生すること、肝臓の他の部位から新しい別の腫瘍が発生することはないことから、左右どちらかから肝臓を大きく切除する方法がとられます。

3区域や2区域の肝切除術(前述)がほとんどの症例に行われます。
肝臓出口付近の胆管に近いときや浸潤していることが疑われる場合には、しばしば肝臓の外の胆管もいっしょに切り取ります(胆管の合併切除)。肝臓に関係の深いリンパ節に転移する性質もあるので、リンパ節も切除します(リンパ節郭清)。肝臓の中や外の血管に浸潤していることも多く、完全な切除のためにそれらを切除してつなぎなおす(血行再建)必要があることが珍しくありません。

このような手術では残る肝臓の状態は(そうでない場合に比較して)不安定になりますから、専門の施設で行うべきです。血管を切除しないでその周囲に腫瘍を残すような手術は予後の面からほとんど意味がありません。

手術の合併症と危険度

合併症は一般的な肝切除と特に変わりません。

危険度は正常肝ですから肝細胞がんより少ないとも思われますが、手術前に黄疸を伴うことで肝機能が低下していることや血行再建をともなうことがあること、リンパ節郭清や胆管切除など肝切除以外の侵襲が加わることが逆に多いので、やはり手術死亡率は1~2%程度です。

手術以外の治療

すでに述べましたように、手術以外の治療はごくまれにしか有効ではありません。
局所か全身の化学療法が行われますが、効果があるのは10%程度です。
黄疸がある場合は放置すると寿命が短くなりますしQOLも悪くなるので治療が必要です。
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Chapter.6: 転移性肝臓がんとは

転移性肝がんは肝臓以外の臓器にできたがんが血液にのって肝臓に転移したもので、理屈の上ではすべてのがんが肝臓に転移しますが、多いのは消化器のがん(大腸がん、胃がん、膵がん、胆管がんなど)が門脈を通って転移する場合です。このほか乳がん、肺がん、頭頸部のがん、婦人科(子宮や卵巣)のがん、腎がんなどが肝臓に転移します。

転移性肝がんの症状と診断

臨床的上症例数が多いのは、大腸がん、胃がん、膵がん、乳がん、肺がんなどです。
発性肝がんと同じように、腫瘍が余程大きくならない限り、転移性肝がんでも特有の症状はありません。転移性肝がんをできるだけ早期に発見するためには超音波検査、CT、腫瘍マーカーなどの定期的なチェックが欠かせません。

腫瘍マーカーとは腫瘍が産生して血液のなかに送り出す一種のたんぱく質で、腫瘍の量に比例するので、これをチェックすることで腫瘍の発生や再発を診断することができます。しかし、すべての腫瘍が必ず腫瘍マーカーを産生するとは限らないのが注意点です。

転移性肝臓がんの治療法

* 外科的切除
現状では固形がん(かたまりをつくって発育するがん)を抗がん剤などの非外科的治療で根治させることはほとんど不可能であり、外科的に切り取ってからだの中からがん細胞を無くしてしまわなければ治ることはありません。

転移性肝がんを手術できる条件は、(1)全身状態が肝切除に耐えられること、(2)手術で肝臓の病変が完全に取りきれる状況(大きさ、数)であること、(3)もとの臓器のがん(原発巣といいます)を含めて、肝臓以外に病気がない、またはあっても外科的にコントロール(完全切除)が可能であること、です。

数については、当然少ないほど成績が良いわけですが、手術適応を決める際には、完全に腫瘍を取り除いた場合に肝不全にならない程度の肝実質が残るかどうかが切除適応決定の基準となります。ただ、がんが肝臓に転移したときにはすでにかなり進行して、手術の対象にならないことが多いのも事実です。
もとの臓器(原発巣)でいうと、大腸がんの転移は手術で取れる状態で発見されることが比較的多く、しかも切除された患者さんの4人に1人は治ってしまいます。胃がん、乳がんなどからの肝転移は、一部で手術になります。

膵がんや肺がんなどの肝転移は進行していることが多く、手術の対象になることがほとんどありません。原発がん病巣を離れて血流にのって、肝臓まで流れてくるわけですから他の臓器へ転移している可能性も十分にあるわけで、肝臓に転移がある患者さんの中で、本当に肝に病気が限局していてしかも全部切り取れる状態で発見されるのはそれほど多いことではありません。

外科切除をする第一の理由は切除した中で治ってしまう患者さんがいらっしゃるからであり、この他の転移性肝がんでも、手術で取りきれるものであれば、治癒を期待して肝切除が行われることがあります。手術ができない場合は抗がん剤を肝動注または点滴で静脈投与することになります。

抗がん剤の種類は元のがんに応じて選択します。一時的に抗がん剤が有効な例もありますが、手術以外の方法で根治させることは困難です。肝臓がんの有力な治療法である肝動脈塞栓療法(TAE)とエタノール注入療法(PEI)は転移性肝がんでは残念ながらあまり有効ではありません。

転移性肝がんの治療成績

* 外科切除
各施設で経験症例数も多く、手術による延命効果が広く認められているのは、大腸がんの肝転移です。手術によって、4人に1人は治癒します。

癌研病院の成績では5年生存率は約40%です。その他のがんの転移に関しては、まだ世界的に認められた手術成績が出されていませんが、乳がんの肝転移で切除できた場合5年生存率約35%で、胃がんでは20%程度です。
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