下咽頭がんとは
下咽頭がんは下咽頭の組織にがん細胞を認める病気のことをいいます。
咽頭は鼻の奥から食道に至るまでの食物や空気のとおり道で、上・中・下咽頭と3部位に分けられます。喉頭はのどぼとけの軟骨(甲状軟骨)に囲まれた声帯を含む臓器のことをいいますが、下咽頭はその喉頭のすぐ後ろ(背中側)の咽頭のことをいい、食道との移行部になります。下咽頭の悪性腫瘍のほとんどはその下咽頭の粘膜の扁平上皮細胞から発生しています。

下咽頭がんの原因はわかっていませんが、喫煙や飲酒と関係があるといわれています。ヘビースモーカーや大酒飲みの方ほど下咽頭がんにかかりやすく、男性は女性の4~5倍の頻度で発生しています。
また、下咽頭がんが発見された患者さんの1−3割の方に食道にもがんを認めます。これは転移ではなく、まったく別に2ヶ所以上にがんが発生する重複がんといわれるものです。食道がんの発生も下咽頭がんと同様に、飲酒や喫煙と深い関係があることが原因と考えられています。
そのため、下咽頭がんの多くの方は可能であれば、下咽頭がんの治療前に上部消化管内視鏡(胃カメラ)の検査を行います。 |
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下咽頭がんの症状 |
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下咽頭がんはかなり大きくならないと症状が出ない部位であり、また頸部のリンパ節に転移しやすい特徴をもっています。
そのため、下咽頭がんの60%以上は、初診時にすでに進行がんの状態です。のどの違和感や異物感、(持続性の)咽頭痛、食べ物がつかえる感じ、声の嗄れなどといった症状が現れた場合には、早めに病院に受診されることが肝要です。
これらの症状はいずれも徐々に進行増悪するのが特徴です。治療をしなければ、症状の消失をみないのが一般的です。

| 1. |
飲み込みの時の異物感、のどの痛み、耳への放散痛
下咽頭は食物の通り道なので、内腔に腫瘍が突出してくると、嚥下時に何かひっかかる感じやスッキリ飲み込めない感じが持続します。
また、持続するのどの痛みが出てくることもあります。咽頭と耳は痛みの神経がつながっており、耳の奥への鋭い痛みとして感じることもあります。 |
| 2. |
声がれ・呼吸困難感
声がれが続き、徐々に進行することがあります。がんの喉頭への浸潤や声帯を動かす神経の麻痺させるためです。
また、がんの喉頭へさらに進行すると息の通り道が狭くなり、息苦しくなることがあります。 |
| 3. |
頸部のしこり
下咽頭がんは、頸部のリンパ節に転移しやすく、初診時には約6割の人がすでに転移しています。
転移によるリンパ節の腫れのみが、自覚症状であることもあります。はじめは痛みもなく徐々に大きくなり、急激に大きくなることもあります。複数個のリンパ節が腫れたり、両頸部のリンパ節が腫れたりすることもめずらしくありません。 |
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下咽頭がんの検査 |
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下咽頭を診察する場合、鏡(間接喉頭鏡)や喉頭内視鏡(ファイバースコープ)を使ってのどの奥を観察したり、頸部を丹念に触り、リンパ節転移の有無やがんの周囲の組織への浸潤の程度を診ます。
正常ではない組織を認めた場合、 その組織のごく一部を採取し、顕微鏡下でがんの細胞か否かを観察します。これを生検といいます。

がんの拡がりの程度を調べるために、超音波やCT、MRI、バリウムなどの画像の検査や食道方向へのがんの拡がりや重複がんの有無を調べるために消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行ったり、他の臓器への転移(遠隔転移)を調べるため、胸部レントゲンやCTなどの検査を行います。また、治療の方法を選択する上で心電図や呼吸機能などの全身状態の検査も行います。 |
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下咽頭がんの病期(ステージ) |
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下咽頭にがんを認めた場合、上記のような検査を行い、がんが下咽頭およびその周囲組織にどの程度拡っているのか、頸部のリンパ節や肺などのほかの臓器への転移があるのか、それはどの程度なのかを調べます。これらによってわかったがんの拡がりの程度を病期(ステージ)といいます。病期を知ることは治療方針を決定する上で非常に大切です。
I期と2期をあわせて早期がん、3期とIV期をあわせて進行がんと呼びます。

| 1 期 |
がんが下咽頭のひとつの部位にとどまり、最大径が2cm以下で、頸部のリンパ節には転移がおよんでいない状態です。 |
早期がん |
| 2 期 |
がんが下咽頭のひとつの部位にとどまらず隣の部位にまで拡がっているが、喉頭の中へ入り込んでいない状態。または最大径2cmを越えるが4cm以下の腫瘍。頸部のリンパ節にも転移がおよんでいない状態です。 |
| 3 期 |
がんの最大径が4cmを越えるか、または喉頭の中に入り込んでいて、声帯(声をだすところ)が動かない状態か、がんと同じ側の頸部リンパ節に3cm以下の転移が1個ある状態です。 |
進行がん |
| 4 期 |
がんが下咽頭にとどまらず周囲組織(骨、軟骨、血管、筋肉など)に拡がっている状態か、頸部リンパ節への転移が6cm以上になったり2個以上あったり、がんと反対側の頸部に出てきた状態か、他の臓器(肺、骨など)に転移している状態です。 |
| 再発 |
一度治療を受けた後に再び腫瘍が出現した状態をいいます。再発は再び下咽頭に発見される場合もあるし、他の身体の部位に現れる場合もあります。 |
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下咽頭がんの治療 |
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下咽頭がんは下咽頭粘膜の扁平上皮という細胞から発生します。
(扁平上皮がんといいます。)
扁平上皮がんに対する治療方法は、大きく分けて外科療法、放射線療法、抗がん剤による化学療法の3種類がありますが、下咽頭がんに対してはそれらを単独あるいはいくつかの治療を組み合わせて治療します。
治療方法はがんの部位や病期、全身状態(現在患っている病気、心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器の機能など)や年齢によって決めます。それぞれの治療法には長所や短所があり、十分に理解したうえで最終的にはご自身で治療を選択する必要があります。

| 1. |
下咽頭がんの手術治療
手術治療は下咽頭がんに対して一般的に行われる治療法です。喉頭と咽頭の一部あるいは全部を手術により切除します。
また、下咽頭がんの多くは頸部リンパ節への転移を伴うため、その転移頸部リンパ節を取り除くことを目的とした手術を行うことも少なくありません。これを頸部郭清術といいます。下咽頭がんの切除と同時に行う場合がほとんどです。進行がんの治療の主体は手術となりますが、手術の前後に放射線や抗がん剤の治療を組み合わせることもあります。

| (a) |
(下)咽頭・喉頭・頸部食道切除術
下咽頭がんの手術の多くは、喉頭および下咽頭の全部、頸部食道の一部または全部を切除する(下)咽頭・喉頭・頸部食道切除術といわれる術式が行われています。
多くの下咽頭がんに適応となります。
進行がんで特に喉頭に深く浸潤している場合に行います。
咽頭や食道の切除後の欠損部は、腸の一部または皮膚を移植して、食物道を作ります。
声帯(喉頭)は全部切除して、気管孔と呼ばれる呼吸するための孔を頸部の前方に作ります。
結果、声帯での発声はできず、気管孔が一生頸部に開いた状態となります。術後は、人工喉頭などの器具を使ったり、トレ−ニングで食道発声を習得することにより声を出し、意思伝達をすることになります。 |
| (b) |
(下)咽頭・喉頭・全食道抜去術
下咽頭がんを切除し、喉頭を全切除します。
食道は全摘除して、胃を持ち上げて(胃管)咽頭の粘膜と縫い合わせて食物道を作ります。下咽頭がんが食道まで深く浸潤しているときや食道にもがんがあるとき、何らかの理由で腸の移植ができない場合などに行います。 |
| (c) |
下咽頭部分切除術
喉頭の一部または全部を保存し、下咽頭の一部を切除する方法です。
がんが喉頭に浸潤していないか、浸潤していても軽度の場合に行います。
切除後は欠損部を縫い縮めたり、腸や腕の皮膚を移植して咽頭や食道の欠損部を塞ぎ食物道を作ります。術後発声は可能で、気管孔は手術中・手術後のはじめのうちは必要ですが、一般的に塞ぐことができます。喉頭咽頭は食物を気管に入ることなく食道に通すという役割を担っていますので、その一部を切除することにより飲み込みの力が落ちます。術後のリハビリが大切です。

下咽頭部分切除術はすべての下咽頭がんにできるわけではなく、がんの大きさのほか、年齢や体力、持病の有無などの全身状態を加味して適応を決めます。 |
| (d) |
頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)
下咽頭がんが頸部のリンパ節に転移していたり、転移している可能性が高い場合に行う手術です。
下咽頭がん切除と同時に行ったり、下咽頭がんに対し放射線治療した後、頸部転移に対して単独で施行したりします。

頸部郭清術はリンパ節のみを摘出するのではなく、それと連なるリンパの流れにそった頸部のリンパ節を一塊にしてとる術式を言います。転移リンパ節をしっかり取るために、頸部の神経や血管を残すことができない場合もしばしばあります。 |
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下咽頭がんの放射線療法
下咽頭がんに対する放射線治療は、放射線単独で行う場合と、手術と組み合わせて行う場合があります。
早期がんに対し、手術を行わず放射線で治すことを目的とする場合と進行がんで手術治療と組み合わせて治療効果を高めることを目的とする場合、また、手術ができない場合にも行うことがあります。抗がん剤と組み合わせて行うこともあります。

放射線単独で行う場合は、通常6~7週で週5回(月~金)治療します。4~5週行ったのち、照射範囲を縮小するのが一般的です。
手術治療と組み合わせて治療効果を高める目的に行う場合は、手術前や手術後に行います。
手術前に行う場合は、通常4~5週の治療を行い、終了後1ヶ月までには手術をします。
手術後に行う場合は、通常5~6週の治療を行います。 |
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下咽頭がんの化学療法(抗がん剤)
下咽頭がんの治療を化学療法単独で行われることはほとんどありません。
手術治療や放射線治療と併用した治療(集学的治療)の一環として行われています。ほか、肺などに転移した場合(遠隔転移)や手術ができない場合にも行われることがあります。
化学療法は、点滴で抗がん剤を入れます。現在、様々な抗がん剤が使用されますが、シスプラチンと5-フルオロウラシルと呼ばれる2種類の薬剤がもっとも使用されます。

最近は放射線の効果をより高めるために放射線照射と同時に併用することも多くなっています。 |
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下咽頭がんの治療成績 |
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下咽頭がんは頭頸部がんの中で最も治りにくいがんのひとつです。
治療成績は一般的に5年生存率(全体の何%が治療後5年間生きているか;一般的な5年生存率は死因を問いません。)であらわします。

外科療法を中心に治療を受けた方の5年生存率は全体で40%弱です。I期で約70%、2期3期で40~50%、IV期で30%弱です。放射線単独治療の5年生存率は、I~2期の早期がんで40~60%です。 |