癌研有明病院 THE CANCER INSTITUTE HOSPITAL OF JFCR

甲状腺がん

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甲状腺がん
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目次
Chapter.1: 甲状腺の位置と機能
Chapter.2: 甲状腺の病気
Chapter.3: 甲状腺の検査法
Chapter.4: 甲状腺がんの種類
Chapter.5: 甲状腺乳頭がんの診断と治療
Chapter.6: 甲状腺濾胞(ろほう)がんの診断と治療
Chapter.7: 甲状腺髄様(ずいよう)がんの診断と治療
Chapter.8: 甲状腺未分化がんの診断と治療
Chapter.9: 甲状腺悪性リンパ腫
Chapter.10: 甲状腺手術 合併症と術後の経過
Chapter.11: がん以外の甲状腺の病気、副甲状腺の病気
Chapter.12: 癌研病院頭頸科甲状腺外来のご案内
Chapter.13: 当科における最近の主な論文発表

Chapter.12: 癌研病院頭頸科甲状腺外来のご案内

1. 甲状腺の病気はこわくない
甲状腺の病気で本当にすぐさま命に関わるのは甲状腺未分化がん(甲状腺悪性腫瘍の3~5%)くらいのものです。甲状腺分化がんの多くを含め、橋本病やバセドウ病など長く病院とつきあわなければならない病気もありますが、基本的に適切な診断・治療を受ければ、もととなんら変わらない生活が続けられます。心配しすぎはからだに毒です。
2. 甲状腺のことをよくわかっている医師をみつける
甲状腺の病気が「こわくない」のをいいことにあまり甲状腺の病気を勉強せずに患者さんを診ている先生も少なくありません。
患者さんの訴えをよく聞かない、病状をきちんと説明してくれない医師は論外、ほかには頸の触診をしない。CT、MRIやシンチグラムの検査をむやみとする。「がんかもしれない」「がんになるかもしれない」から手術しましょうという。などといった医師もちょっと信頼できません。

特に甲状腺がんについては乳頭がんが最も多いわけですが、前にも述べたように乳頭がんというのは、ちょっと常識外れなところのあるがんです。がんの専門家が必ずしも良い治療をしてくれるとは限りません。乳頭がんにおいては、医学的にがんであっても人体には生涯無害に経過する病変がありうるのです。
「医学的に完璧」な治療が、かえって患者さんのQOLを損なうことのないよう注意が必要です。

一方で、とくに低危険度群乳頭がんでは術後10年、20年を経ての再発もありうるため、もちろんがんの遺残・再発という事態が患者さんにもたらす精神的苦痛にも充分配慮しなければなりません。
甲状腺がんを手がける医師には、がん患者としては異例に長大な術後期間を生きなければならない患者さんに、甲状腺がんの特徴をデータに基づき充分に説明し、その精神的負担を緩和する義務があると思います。
3. 患者としてのマナー
そうはいっても医者も人の子。相性もありますが、医師の説明は最後まできちんと聞く。
質問はメモなどにまとめておいて要領よく。
納得したうえで処方された薬は、用法・用量を守ってしっかり飲む。
検査、診察の予約など約束は守り、気長に根気強く治療を受ける。
自分の症状を正確に把握し、必要以上にからだのことを心配しない。
といったことに留意して、よい信頼関係を築くようにしてください。
4. 癌研究会附属病院頭頸科 甲状腺外来のご案内
癌研頭頸科には甲状腺・内分泌外科担当医師が常勤しており、甲状腺および副甲状腺(上皮小体)の疾患を専門領域として、その診断・治療を行っています。
甲状腺疾患では腫瘍性病変、とくにがんの診療を得意としており、最小限の検査(超音波検査部と細胞診断部にそれぞれ専門の優秀なスタッフがおります)によって、症例ごとのがん死危険度を正確に評価したうえで、最適と思われる治療方針をたてるようにしています。
甲状腺がんの中でもっとも頻度の高い低危険度の乳頭がんの場合、基本的には患側腺葉の切除に加え、リンパ節転移が明らかでない症例では気管周囲郭清にとどめ、リンパ節転移が明らかな場合はその領域の保存的郭清手術を行います。
高危険度の乳頭がんの場合など、状況に応じて甲状腺・リンパ節の切除範囲を拡大することがありますが、可及的保存的にという方針は変わりません。
術後補助療法は基本的には不要と考えていますが、今後、欧米式の治療法(甲状腺全摘手術を行い、術後放射性ヨードによる転移の診断・治療を行ったうえで、甲状腺ホルモン療法を継続する)についても患者さんに十分説明し、Informed Decisionを得たうえで、治療方針を決定するようにします。
手術合併症に関しては、慎重な手術操作により永久性反回神経麻痺は、もともと麻痺のない患者では2%以下、永久性副甲状腺機能低下は、甲状腺全摘例でも5%以下に抑えられています。創も整容的手術によりほとんど目立ちません。
万一、合併症を来した場合には、嗄声は東大耳鼻科音声研など、肥厚性瘢痕は日本医大形成外科ケロイド外来などに依頼し、治療していただいております。
通常入院待ちは1ヶ月程度(もちろん、急を要する場合は緊急入院・手術が可能です)、手術時間は腺葉切除・気管周囲郭清で1時間半程度、術中出血は50ml以下で輸血は不要、入院期間は1週間から10日程度です。
また、2001年よりクリニカル・パスを導入し、診療の効率化と患者サービスの向上に努めています。
癌研頭頸科は頭頸部進行がんに対する拡大切除、微小血管吻合術による遊離皮弁を用いた再建手術の伝統を有しており、周囲の臓器に浸潤する進行・再発甲状腺がんに対しても、QOLを充分に考慮したうえで、気管・食道・喉頭などの合併切除・再建手術も行い、よい成績をあげています。
癌研頭頸科は頭頸部進行がんに対する拡大切除、微小血管吻合術による遊離皮弁を用いた再建手術の伝統を有しており、周囲の臓器に浸潤する進行・再発甲状腺がんに対しても、QOLを充分に考慮したうえで、気管・食道・喉頭などの合併切除・再建手術も行い、よい成績をあげています。
1cm以下の無症候性の微小乳頭がんは、通常一生放置しても無害に経過することから、1995年以降、原則としてすぐには手術せず、充分な説明・同意のうえ経過観察する方針をとっています。
広汎浸潤型の濾胞がんや高危険度の乳頭がんで、遠隔転移を生じた症例に対しては、適応を吟味したうえで、甲状腺全摘を行い、日赤医療センター、慈恵医大や防衛医大などにお願いして、放射性ヨード治療を行っています。
また、遠隔転移の外科的切除、放射線外照射、骨転移に対するビスフォスフォネート治療なども、各診療科の協力のもとに施行しています。
予後不良の甲状腺未分化がんに対しても、独自のPrognostic Indexを参考に予後を予測したうえで、集学的治療により生存期間の延長を図り、QOLの確保に努めています。寛解状態の得られた未分化がんや未分化転化の可能性の高い低分化がんの患者さんには、外来治療ユニット(OUT)での化学療法も行うことがあります。
甲状腺髄様がんについては、十分な説明のうえ、患者さんの同意があれば遺伝子診断を行い、家族性髄様がんや多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)の可能性も含めて、診療にあたっております。遺伝子診断に基づく予防的手術も経験しています。また、家族性腫瘍センターも開設され、患者さんおよび家族のカウンセリングも専門家の手によって行われるようになりました。
甲状腺悪性リンパ腫については、化学療法科の専門スタッフを中心に、緊密な協力体制のもと診療を進めています。
良性甲状腺腫(濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫)については、3cm以上で進行性に増大する充実性腫瘤、機能性腫瘤、縦隔内腫瘤、とくに濾胞がんとの鑑別が困難な場合などに限って手術適応としています。バセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎などの診療も適切に行っております。
副甲状腺(上皮小体)疾患としては、主に原発性副甲状腺機能亢進症の診断・治療を扱っています。局在診断はまず超音波診断を施行、場合によりMIBIシンチグラフィを行い、低侵襲の手術を行っています。術前後の骨密度もチェックし、フォローアップしています。
原因不明の高カルシウム血症、高アルカリホスファターゼ血症の患者さんがおられましたら、ご紹介ください。また、稀な副甲状腺がんの症例も経験しています。

頭頸科甲状腺外来診療日
AM 杉谷 巌 杉谷 巌 藤本吉秀 杉谷 巌 杉谷 巌
PM 杉谷 巌
初診患者さんの受付は午前8時30分から11時までとさせていただいております。
再診は予約制で、待ち時間の短縮を図っております。

医療連携室を通じて、初診の方の診療予約もお取りできるようになりました。専用のFAX用紙がございますので、是非ご利用ください(医療連携室あてにご請求いただければ、お送りいたします)。

今後さらに多くの症例を経験させていただくことにより、甲状腺・内分泌外科という、若干特殊な領域の疾患に悩む患者さんのためにより良い診療ができるものと考えております。 甲状腺・内分泌疾患の患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひご紹介いただきますようお願い申し上げます。

お問い合わせ:
癌研有明病院 頭頸科
甲状腺・内分泌外科担当医長; 杉谷 巌
E-メール isugitani@jfcr.or.jp
顧問; 藤本吉秀
頭頸科部長; 川端一嘉

最近の当科における甲状腺・副甲状腺疾患の患者数
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
手術例        
 甲状腺がん 初取り扱い例        
  乳頭がん 66 45 57 53 57 62 89
  濾胞がん 3 3 1 3 1 4 4
  髄様がん 0 1 1 2 3 1 3
  未分化がん 5 5 2 2 5 3 5
  悪性リンパ腫、その他 1 2 0 0 0 0 1
甲状腺がん 再発・二次例 16 20 13 21 22 17 29
 甲状腺良性疾、バセドウ病 24 25 22 24 27 19 25
 原発性副甲状腺機能亢進症 7 2 7 9 7 5 6
 合計 122 103 103 114 122 111 162
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Chapter.13: 当科における最近の主な論文発表

1. Clinicopathologic and Immunohistochemical Studies of Papillary Thyroid Microcarcinoma Presenting with Cervical Lymphadenopathy
Iwao Sugitani, Akio Yanagisawa, Akira Shimizu, Mitsuyasu Kato, Yoshihide Fujimoto
World J. Surg. 22(7): 731~737, 1998
2. Postoperative Prognosis of Intrathyroidal Papillary Thyroid Carcinoma: Long-Term (35-45 Year) Follow-Up Study
Yoshihide Fujimoto, Iwao Sugitani
Endocrine Journal 45(4): 475~484, 1998
3. Total Pharyngo-Laryngectomy and Reconstruction of Cervical Esophagus with a Jejunal Free Flap for Locally Advanced Differentiated Thyroid Carcinoma
Iwao Sugitani, Sin-etsu Kamata, Kazuyoshi Kawabata, Yoshihide Fujimoto
Thyroidol. Clin. Exp. 10: 249~253, 1998
4. Rationale for Management of Adenomatous Goiter in Japan
Yoshihide Fujimoto, Iwao Sugitani, T Makishima
Thyroidol. Clin. Exp. 10: 81~87, 1998
5. Symptomatic versus Asymptomatic Papillary Thyroid Microcarcinoma:
A Retrospective Analysis of Surgical Outcome and Prognostic Factors
Iwao Sugitani, Yoshihide Fujimoto
Endocrine Journal 46(1): 209~216, 1999
6. 高度進行甲状腺がんに対する下咽頭・喉頭・頸部食道合併切除、遊離空腸による再建手術
杉谷 巌、川端一嘉、鎌田信悦、藤本吉秀
手術 53(10):1395~1399、1999
7. 甲状腺がんの手術―完治を目指す 甲状腺濾胞がんの手術―甲状腺全摘術を中心に
杉谷 巌、藤本吉秀
手術 53(13):1901~1908、1999
8. 遠隔転移を生じた甲状腺濾胞がんの特徴
杉谷 巌、吉本世一、三谷浩樹、保喜克文、苦瓜知彦、川端一嘉、鎌田信悦、柳澤昭夫
頭頸部腫瘍 26(1):41~46、2000
9. 今日の腫瘍外科 最新の治療指針 甲状腺の腫瘍性疾患 甲状腺未分化がん
杉谷 巌
外科治療 82(2000増刊):1042~1046、2000
10. 高度進行甲状腺がんに対する下咽頭・喉頭・頸部食道合併切除、遊離空腸による再建手術
杉谷 巌、川端一嘉、鎌田信悦、藤本吉秀
手術 53(10):1395~1399、1999
11. Prognostic Factors and Therapeutic Strategy for Anaplastic Carcinoma of the Thyroid
Iwao Sugitani, Nobukatsu Kasai, Yoshihide Fujimoto, Akio Yanagisawa
World J. Surg. 25(5): 617~622, 2001
12. 内分泌外科 最近の動向 甲状腺乳頭がんの治療―甲状腺切除とリンパ節郭清の至適範囲―
杉谷 巌
外科治療 86(3):241~245、2002
13. がん診療に役立つ最新データ 甲状腺がんの診断に関する最新のデータ
杉谷 巌、山田恵子、池永素子
臨床外科 57(11 増刊号):35-41、2002
14. 甲状腺乳頭がんの予後におけるリンパ節転移の大きさと数の意義
杉谷 巌、三浦弘規、米川博之、吉本世一、三谷浩樹、保喜克文、苦瓜知彦、川端一嘉、鎌田信悦、柳澤昭夫
頭頸部腫瘍 29(1):70-75、2003
15. 甲状腺微小乳頭がんの対処法―非手術経過観察の妥当性―
杉谷 巌、鎌田信悦
頭頸部腫瘍 27(1):102~106、2001
16. 特集 事故防止のためのドレーン管理 事故を起こさないための各種病態におけるドレーン管理 頸部のドレナージ 甲状腺手術後ドレナージ
杉谷 巌
臨床看護 29(6):794-799、2003
17. 内分泌外科の最近の進歩 甲状腺外科学における最新の知見―甲状腺がんの臨床を中心にー
杉谷 巌
内分泌外科 20(2):119-127、 2003
18. 特集 甲状腺疾患の診断と治療 低危険度群に属する甲状腺乳頭がんの取り扱い
杉谷 巌
Monthly Book ENTONI 31:44-50、2003
19. 進行甲状腺がんの治療と機能温存の現況―QOLは維持されているか? 縦隔に進展した甲状腺がんの手術
杉谷 巌
内分泌外科 20(3):228-232,2003
20. 特集 内分泌偶発腫瘍の臨床:手術適応判定と適切な治療への指針 A.甲状腺微小がん 甲状腺微小乳頭がんの非手術経過観察
杉谷 巌
ホルモンと臨床 52(1):21-27、2004
21. A Novel Classification System for Patients with PTC: Addition of the New Variables of Large (3 cm or Greater) Nodal Metastases and Reclassification during the Follow-up Period
Iwao Sugitani, Nobukatsu Kasai, Yoshihide Fujimoto, Akio Yanagisawa
Surgery 135(2): 139-148, 2004
22. 甲状腺乳頭がんにおける遠隔転移―予後の予測と治療方針
杉谷 巌、川端一嘉、鎌田信悦、柳澤昭夫
頭頸部腫瘍 30(1): 78-84, 2004
23. 内分泌外科における最新の診断と治療/甲状腺 甲状腺手術における音声への配慮
杉谷 巌
内分泌外科 21(2):80-86、2004
24. 当科における甲状腺髄様がんの経験―術前血清カルシトニン/CEA比は髄様がんの予後予測に有用であるー
杉谷 巌、鎌田信悦
頭頸部がん30(4): 583-588, 2004
25. Tumours of the thyroid and parathyroid. Undifferentiated (anaplastic) carcinoma.
I Sugitani, et al.
World Health Organization Classification of Tumours. Pathology & Genetics. Tumours of Endocrine Organs. Edited by RA DeLellis, RV Lloyd, PU Heitz, C Eng. IARC Press, Lyon, 2004 77-80
患者さん向けの甲状腺がん解説書

甲状腺がんなんて怖くないー専門医が本音で語る甲状腺の病気のすべて
杉谷 巌、前野一雄
三省堂 2003

ぜひ、ご利用ください。
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