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診療科・部門紹介
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消化器センター

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最終更新日 : 2016年6月10日

診療科の特徴診療実績スタッフ紹介|トピックス

内視鏡診断と治療

内視鏡検査とは、1cm程度の太さの筒状のスコープを用いて(写真1)、消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)の内部に異常がないかどうかを調べる検査法です。

写真1:上部内視鏡電子スコープ

以前の内視鏡は、顕微鏡のように覗きながら観察するファイバースコープでしたが、現在は電子スコープのため、モニター画面に画像が写し出され、消化管の内部をリアルタイムに確認することが可能です。(写真2) 内視鏡検査は苦しい、痛いなどのイメージを持っている方も多く、また過去に経験した胃や大腸の内視鏡検査がとても苦しくて、2度と受けたくないという方もいらっしゃいます。

写真2:上部内視鏡検査の様子

当院では、そのような方にできるだけ苦痛なく検査を受けていただくために、麻酔薬(鎮静剤、鎮痛剤の静脈注射)を使用した検査も行っています。鎮静剤を使用することで、ほとんどの方が眠気を催してうとうとしているうちに検査を終えることができます。

内視鏡検査における鎮静剤の使用は、検査中の管理をしっかりと行うことで、安全に使用することができ、また患者さんにとっても検査が楽になるだけでなく、内視鏡を行う医師にとっても、より精密な検査を行うことができます。当院では、内視鏡検査時に鎮静剤を希望する方には、安全に使用できるいくつかの条件を確認した上で、使用しています。

消化管の癌のうち、特に胃がん、大腸がんは頻度が高く、本邦の2013年度のがん死亡数統計では、男性は胃がん第2位、大腸がん第3位、女性は大腸がん第1位、胃がん第3位と報告されています。

このように死亡数の多い胃がん、大腸がんですが、がんの進行の程度を表すステージ分類において、がんの早期段階であるステージTであれば、治療後に5年以上生存できる割合は90%以上です。(図1) このことから、胃がん、大腸がんとも自覚症状がない段階で発見し、治療を行うことが最も重要です。

図1:胃がんのステージ別5年生存率

最近では、早期診断されたがんは、お腹を切らず、口や肛門の内視鏡で行う内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)など、体に負担が少ない方法で治療ができます。このような内視鏡で治療できる段階で病変を診断するためには、内視鏡は不可欠な検査として位置づけられています。

当院では、年間に食道・胃・大腸の内視鏡検査を2万人以上の方に行っており、本邦でもトップクラスの内視鏡検査数、治療数を行っています。

また検査・治療数が多いだけでなく、治療方針の決定には、内視鏡医、外科医、化学療法医、放射線治療医、病理医など複数の専門医が参加するカンファレンスを日常的に行い(写真3)、最善と思われる治療を提供する体制を整えていることも、日本を代表するがん専門病院としての特色のひとつです。

写真3:述前内科外科カンファレンス

胃がんの範囲診断

治療方針を決定するうえで、癌の深さ(深達度)の診断が必要です。通常の内視鏡だけでは判断が難しいときに、内視鏡の先から超音波を出す機械(超音波内視鏡)を使用し、癌の深達度診断の精度の向上に役立てています。

写真:体上部大彎の早期胃癌。超音波内視鏡を用いると、癌が粘膜下層まで浸潤していることが分かる。

早期胃がんの内視鏡治療

1.早期胃がんに対する内視鏡治療の適応

早期胃がんに対する内視鏡治療は、局所的な治療なので、胃壁外のリンパ節に転移がない病変が対象となります。具体的には「2cm以下で潰瘍のない分化型粘膜内がん」(写真1)が胃癌治療ガイドラインの内視鏡治療の絶対適応病変です。

過去に国立がん研究センターと当院における外科切除例を検討した結果、以下の3つの条件にあてはまる場合は、リンパ節転移を伴う可能性が極めて低いため、内視鏡治療の適応が拡大されています。

  1. 2cm以上で、潰瘍のない、分化型、粘膜内がん (写真2)
  2. 3cm以下で、潰瘍のある、分化型、粘膜内がん (写真3)
  3. 2cm以下で、潰瘍のない、未分化型、粘膜内がん (写真4)

しかしこれらの適応拡大した早期胃がんの内視鏡治療は、現時点においても臨床研究としての治療が胃癌治療ガイドラインで位置づけられています。またこのような適応を拡大した早期胃がんの内視鏡治療は、切除した病変の病理結果を詳しく検討して、完全に切除できたかどうかを判定します。そのため、内視鏡での治療法としては、EMRではなくESDで病変を一括で切除することが重要です。

2.早期胃がんのESD手順

早期胃がんに対するESDの治療手順を以下に示します。治療時間は病変部位、大きさなどで異なりますが、2cm以下の病変で30-60分、2cm以上の病変で60-120分程度です。潰瘍を伴う病変や出血の多い病変では2時間以上かかる場合もあります。

1: 病変範囲の確認 (色素散布、NBI拡大内視鏡などを使用) (写真5)

インジゴカルミンや酢酸の散布、Narrow Band Imaging併用拡大内視鏡を用いて病変の範囲を
確認します。

2: 病変の周囲にマーキング (写真6)

アルゴンプラズマ凝固法で病変の3-5mm外側にマーキングをします。

3: 粘膜下局注(ヒアルロン酸ナトリウム液)(写真7)

局注針を粘膜下層に刺入し、インジゴカルミン(青色の色素)を混ぜたヒアルロン酸ナトリウム液を注入し、粘膜下層を隆起させます。

4: 粘膜のプレカット (写真8)

針状の高周波メスで、粘膜の一部を切開します。青く見えている部位が粘膜下層です。

5: 粘膜の周囲切開 (写真9)

ITナイフ2を用いてマーキングの外を全周にわたって切開しています。

6: 粘膜下層剥離 (写真10)

ヒアルロン酸の局注を粘膜下層に追加注入し、ITナイフ2を用いて粘膜下層を剥離します

7: 病変切除後 (写真11)

切除後の潰瘍に血管が残っていれば、止血鉗子で血管の焼灼を行い、治療が完了します。
この処置をすることで、治療後の出血予防になります。

実際のESDを動画で提示します。(動画参照)

  • 症例1:
    胃体上部小彎 30mm
    0-Ua型高分化型腺がん 適応拡大病変
  • 症例2:
    胃角部大彎 30mm
    0-Ub+Uc型中分化型腺がん 適応拡大病変

早期胃がん内視鏡治療後のピロリ菌除菌治療

胃がんの一番大きな原因はピロリ菌です。ピロリ菌は5歳以下の時期に感染し、胃に持続的な炎症を惹起させ、胃がんの発生に関与します。胃がんは多発することも多く、胃がんの10-20%に同時期に複数の病変を認めます(同時性がん)。また、胃がんを内視鏡治療した患者さんの経過を見ていくと、毎年約3%に新しい胃がんが見つかります(異時性がん)。当院も参加したJapan Gast Study Groupではピロリ菌を除菌することにより、胃がんの発生を抑制できるかという研究を行いました。この研究では早期胃がん内視鏡術後にピロリ菌を除菌することにより、異時性多発がんの発生が1/3になることが明らかになりました。当院でも以前から早期胃がん内視鏡治療後の方に、ピロリ除菌を推奨しています。ピロリ除菌により、異時性がんの発生が少なくはなりますが、ある程度の頻度ではがんの発生は認めますので、必ず1年に1回の内視鏡による検診をお勧めしています。

食道表在がんの内視鏡的治療

食道におけるEMRの代表的な手法の1つに透明プラスチックキャップを用いたEMR( Endoscopic Mucosal Resection-using a Cap fitted endoscope; EMR-C)法があります。病変が小さい場合に用いられる治療法で、簡便、短時間に安全かつ確実なEMRが可能な方法です。ただし、この方法では大きい(広範囲な)病変を一括して切除することができないことが難点です。大きい病変に対しては、ESD(Endoscopic submucosal dissection; 内視鏡的粘膜下層剥離術)法で治療を行なわれており、当科でも積極的に取り入れております。ESD法は、食道がんに対しては、2008年4月に保険収載されています。それ以来、6年が経過していますが、手技に伴う偶発症および合併症の危険性は決して低くないのが現状です。より安全な手技を行うために、当科では日々、幅広い修練を行っています。
また、より広範囲の病変を切除した際には、創傷治癒過程において瘢痕狭窄(管腔が狭くなること)が生じ、嚥下障害を きたしてしまう場合があります。当科ではステロイドを用いた瘢痕狭窄予防を行っており、良好な成績を得ています(狭窄の割合が、予防以前の1/2になりました)。

EMR(EMR-C)法の実際

  1. 食道表在がんは、通常観察では淡い発赤面として見えます(図1・矢印)。
  2. 食道がんは、ルゴール(ヨード)を撒布することにより、ヨードで染色されない不染帯として、病変の範囲がより明瞭となります(図2・矢印)。
  3. ヨード不染帯を指標にして、病変の周囲に切除すべき範囲の印付け(マーキング)を行います(図3)。
  4. 次に、病変下に生理食塩水を注入(局所注射;局注)して病変を膨隆させ(図4)、内視鏡の先端に取り付けた透明な筒(Cap)に膨隆させた病変を吸い込み、基部をスネアと呼ばれるワイヤーで絞扼します(図5)。
  5. 絞扼後、高周波電流で通電切除します。
  6. 切除後の食道粘膜には人工的な潰瘍ができます(図6)。潰瘍周辺には最初につけたマーキングはなく、目的の病変が完全に切除できたことがわかります。また、切除標本をヨード染色すると、病変を肉眼的に確認できます(図7)。
  7. 切除後に、この標本を病理組織学的に調べ、病変の拡がりや深達度を診断し、追加治療が必要か否かを決定します。

ESD法の実際(図1. 〜6. )

当院では,主にSBナイフ(住友べークライト社製)を用いて行っています。切除手技の実際は以下の通りです。

  • 図1.通常観察像です。病変は発赤面として認識されます。
  • 図2.ヨード染色後に切除範囲にマーキングを行います。
  • 図3.生理食塩水で2倍に希釈したヒアルロン酸ナトリウム液(ムコアップ〇R)を用いて、マーキングの外側近傍に局注を行い、針状メスおよびSBナイフで粘膜切開を行います。
  • 図4.粘膜切開を病変の全周に行ったのちに、粘膜下層に局注を追加します。引き続きSBナイフで粘膜下層を把持して、高周波電流を流して剥離します(粘膜下層剥離)。
  • 図5.切除後の人工的な潰瘍です。出血や穿孔などの偶発症なく手技が終了しました。
  • 図6.切除後の標本です。ヨード染色を行い病変範囲の確認を行います。その後、病理組織学的検索を行います。

ESD法の実際

広範囲切除後の狭窄予防法の実際(ステロイド局所注射療法) (図1.〜4.)

ESD法による切除範囲が広範囲におよんだ場合には、切除後の人工的な潰瘍底にステロイド(トリアムシノロン)液を局所注射し、狭窄予防を行う方法です。

  1. 図1.ヨード染色を行い、切除範囲にマーキングを行います。
  2. 図2. ESD後の人工的潰瘍。切除範囲が約5/6周性と広範囲な粘膜欠損となっています。
  3. 図3. ESD後の人工的潰瘍の辺縁および潰瘍底にステロイド液を膨隆ができる様に局所注射します。
  4. 図4. ESDより6ヶ月後の内視鏡像です。狭窄なく治癒しています。

ステロイド局所注射療法の実際

当科の内視鏡治療における特色

  • 豊富な内視鏡治療症例
  • 年間約170件の内視鏡切除例があり,本邦屈指の症例数を誇ります。また、治療後の合併症(予防も含め)にも豊富な症例経験に基づき対応が可能です。

  • 食道治療チームが独立
  • 食道内視鏡治療チームが独立しており,同じスタッフが,ほぼすべての内視鏡治療 に携わっています.チーム内での情報共用も十分になされており,迅速な対応が可能です。

  • 治療困難例にも対応
  • 部位的に手技が困難な食道入口部の症例や放射線照射後の再発症例,または異時性多発症例における瘢痕合併症例なども積極的に治療を行っております。

  • 食道カンファレンス
  • 内視鏡医だけではなく、腫瘍内科医、消化器外科医および放射線治療医が週1回集まり、合同で検討会(食道カンファレンス)を開催し、治療方針を決定しています。 また,内視鏡部門においても,さらに詳しく検討を加えています。

  • 臨床研究
  • 日本臨床腫瘍研究グループにおける研究への積極的な参加だけではなく、当科主体での研究も積極的に行い、先進的な医療開発に貢献しています。

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