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診療科・部門紹介
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肝胆膵外科

肝胆膵外科

最終更新日 : 2016年6月13日

診療科の特徴|診療実績スタッフ紹介トピックス

診療科の特徴


齋浦 明夫
肝胆膵外科部長

がん研有明病院 肝胆膵外科は、齋浦明夫部長(H5卒)を中心に、スタッフ5人、医員9人の若く活気あふれるグループです。肝胆膵外科領域は、手術の難易度が高く、予後も厳しい、いわゆる難治癌が多くを占める領域ですが、豊富な症例数と、院内の緊密な横断的連携を生かしたチーム医療をすべての患者さんに提供しています。2014年以降、肝胆膵領域癌の切除件数は全国一位を維持しており、現在も増加の一途を辿っています。今後も、一人でも多くの患者さんに、最良かつ迅速な治療をご提供できるよう、努力を続けてまいります。

当科の特徴は、領域横断的な術前治療、発展的かつ安全な手術、そして徹底した術後管理です。たとえば、肝両葉に及ぶ多発転移性肝癌に対して、まず治療可否判定を初診時に行い、その難易度に応じて、術前化学療法や、肝動注療法を先行した後に切除を行う、いわゆる集学的治療を実践しています。このためには、化学療法科や、消化器内科との連携が不可欠ですが、毎週のグループカンファレンスに加えて、外来も隣同士のブースで行うように配置されており、横の風通しが非常に良い環境です。術後管理も、休日深夜問わず24時間体制で術後重症患者の管理を行い、ICU専属Dr.(集中治療部 山本豊部長)や、感染症科チーム(感染症科 原田壮平部長)、さらには疼痛管理グループ、栄養管理科、メンタルサポートチームらの専門グループと常に連携した医療を実践しています。

【肝臓領域】

昨今本邦では、肝切除術は安全な腹部内臓器手術として確立されており、当院でも肝腫瘤切除術の術後短期成績は、過去5年間で周術期死亡率(0.2%)1/800件を達成・維持しています。肝切除の安全性においては、術前の肝機能評価と、切除プランの徹底した検討が非常に重要です。

当院では、術前に2種類の肝機能評価モダリティ(GSA-肝受容体シンチ、ICG停滞率テスト)を原則全例に施行し、肝機能評価の精度を高めるとともに、切除のプランニングには3-Dシミュレーションソフト(VINCENT)を駆使し、毎週の術前検討会で術式を決定しています(図1,2)。

原発性肝癌に対しては、従来の系統的根治切除をより高精度に行うための工夫として、ICG蛍光法を駆使した開腹手術(図1,2)、腹腔鏡下手術の開発(トピック)、実践に尽力しています。

転移性肝癌では、両葉を埋め尽くすような多発肝転移や、癌種によって黄疸をきたしている用例、他の施設で切除不能と判断された症例も含めて、少しでも可能性があれば、粘り強く術前治療を行ったうえでの切除を実現しています。一般病院で切除不能と診断される転移性肝癌の中にも、化学療法科、放射線診断科、消化器内科と、各領域のエキスパートがそれぞれの役割を最大限に発揮し、外科と緊密に連携することで実現可能な症例が少なからず存在しており、がん研 肝胆膵外科は、そんな患者さんの最後の砦として「あきらめない外科」をモットーに診療を行っています。

肝臓癌および、転移性肝癌に対する肝切除は年間200例前後行われており、過去5年間の術関連死亡率は0.2%です(全国平均 約3%)。

【膵臓領域】

本邦における膵臓癌は現在増加の一途をたどり、あらゆる癌の中でも治療の難治度、数の多さからもっとも難しい癌(がんの王様)と呼ばれています。がん研では、この難治癌に対しても、外科的アプローチ、内科的アプローチの両輪で取組み、一人でも多くの膵癌患者さんを救うべく尽力しています。

当院では、かねてより脈管侵襲を伴うような進行膵癌に対しても、血管合併切除・再建を伴う手術を積極的に行い、根治切除に努め、その術式や成績も発信してきました。2015年の膵癌切除数は100例に及び、日本随一の件数となっています。膵臓の手術は、その根治度と安全性を両立させる必要があり、当科では、代表的術式である膵頭十二指腸切除および膵体尾部切除の新術式を提唱・実践し、高い評価を得ています。

【新しい膵頭十二指腸切除】

当院が提唱したSupracolic anterior artery-first approachにより、出血量の大幅な軽減と、正確な癌郭清の両立が実現しました(図3)。

【新しい膵体尾部切除】

進行膵体部癌に対して、腹腔動脈幹を合併切除しつつ、胃の動脈血流を温存して術後の異は胃排泄障害を軽減するための術式を提唱しています(図4)。

以上含め、発展的かつ定型化された切除術式の徹底により、年間150例の膵切除で術関連死亡率1%以下を保っています。

近年の化学療法の進歩により、切除可能な膵癌の長期成績の向上のみならず、以前なら切除困難とされていた局所進行膵癌も、化学療法後に根治的切除が可能となってきています。このほかにも世界的に新しいアプローチをいくつも実践しており、当院で行われる治療成績をいち早く世界に発信するため、複数の前向き臨床試験が進行中です。

【胆道領域】

肝門部領域胆道癌は、肝臓を半分以上切除するいわゆる大量肝切除や、肝に流入する血管の合併切除再建等を要する、非常に手術の難しい分野です。当院では、肝門部胆管癌にも積極的に取り組んでおり、シミュレーションソフトを用いた綿密な手術プランニングと、胆道ドレナージ、門脈枝塞栓術などの万端の準備を、全症例に実践しています。

片肝切除+膵頭十二指腸切除や、左三区域+肝動脈再建など、腹部悪性腫瘍手術で最も難度が高い術式も毎年安定的に施行しています。これらは、高度な手術手技はもちろんのこと、周術期の徹底した全身管理が必須です。当院では、胆道癌、膵癌の大侵襲手術の安全性を高めるため、術前から体力づくりのリハビリ療法、齲歯治療による口腔内清潔化による肺炎の予防、腸管免疫強化のためのsymbiotic、免疫栄養等の準備を系統的に実践しています。以上の総合的な患者サポートにより、胆道癌大侵襲手術の術関連死亡率は 2.6%と、全国平均を大きく下回っています。

 

<論文発表>

2014年

◆Usefulness of contrast-enhanced intraoperative ultrasound in identifying disappearing liver metastases from colorectal carcinoma after chemotherapy.
Arita J, Ono Y, Takahashi M, Inoue Y, Takahashi Y, Saiura A.
Ann Surg Oncol. 2014 Jun;21 Suppl 3:S390-7.

◆A combination of oral uracil-tegafur plus leucovorin (UFT + LV) is a safe regimen for adjuvant chemotherapy after hepatectomy in patients with colorectal cancer: safety report of the UFT/LV study.
Saiura A, Yamamoto J, Hasegawa K, Oba M, Takayama T, Miyagawa S, Ijichi M, Teruya M, Yoshimi F, Kawasaki S, Koyama H, Makuuchi M, Kokudo N.
Drug Discov Ther. 2014 Feb;8(1):48-56.

◆Histologic categorization of fibrotic cancer stroma in the primary tumor is an independent prognostic index in resectable colorectal liver metastasis.
Ueno H, Konishi T, Ishikawa Y, Shimazaki H, Ueno M, Aosasa S, Saiura A, Hase K, Yamamoto J.
Am J Surg Pathol. 2014 Oct;38(10):1380-6.

◆【肝胆膵癌の血管浸潤をどう治療するか】 大腸癌肝転移の門脈・肝静脈・下大静脈浸潤
高橋 道郎(がん研有明病院 消化器センター肝胆膵外科), 齋浦 明夫
臨床外科 (0386-9857)69巻8号 Page933-93

◆【肝胆膵領域における術前ストラテジー】 手技各論 術前胆道ドレナージ法の実際 経皮的アプローチ
高橋 祐(がん研有明病院 消化器外科), 有田 淳一, 井上 陽介, 石沢 武彰, 齋浦 明夫
外科 (0016-593X)76巻11号 Page1240-1245

2015年

◆Anatomical Liver Resections Guided by 3-Dimensional Parenchymal Staining Using Fusion Indocyanine Green Fluorescence Imaging.
Inoue Y, Arita J, Sakamoto T, Ono Y, Takahashi M, Takahashi Y, Kokudo N, Saiura A.
Ann Surg. 2015 Jul;262(1):105-11.

◆Favorable outcome after repeat resection for colorectal liver metastases.
Saiura A, Yamamoto J, Koga R, Takahashi Y, Takahashi M, Inoue Y, Ono Y, Kokudo N.
Ann Surg Oncol. 2014 Dec;21(13):4293-9.

◆Hepatic Vein-Oriented Liver Resection Using Fusion Indocyanine Green Fluorescence Imaging.
Inoue Y, Saiura A, Arita J, Takahashi Y.
Ann Surg. 2015 Dec;262(6):e98-9.

◆Prognostic value of neutrophil-lymphocyte ratio and level of C-reactive protein in a large cohort of pancreatic cancer patients: a retrospective study in a single institute in Japan.
Inoue D, Ozaka M, Matsuyama M, Yamada I, Takano K, Saiura A, Ishii H.
Jpn J Clin Oncol. 2015 Jan;45(1):61-6

◆Sinistral portal hypertension after pancreaticoduodenectomy with splenic vein ligation.
Ono Y, Matsueda K, Koga R, Takahashi Y, Arita J, Takahashi M, Inoue Y, Unno T, Saiura A.
Br J Surg. 2015 Feb;102(3):219-28.

◆Pancreatoduodenectomy With Systematic Mesopancreas Dissection Using a Supracolic Anterior Artery-first Approach.
Inoue Y, Saiura A, Yoshioka R, Ono Y, Takahashi M, Arita J, Takahashi Y, Koga R.
Ann Surg. 2015 Dec;262(6):1092-101.

◆Routine Preoperative Liver-specific Magnetic Resonance Imaging Does Not Exclude the Necessity of Contrast-enhanced Intraoperative Ultrasound in Hepatic Resection for Colorectal Liver Metastasis.
Arita J, Ono Y, Takahashi M, Inoue Y, Takahashi Y, Matsueda K, Saiura A.
Ann Surg. 2015 Dec;262(6):1086-91.

◆【局所進行膵癌における血管合併切除】 Borderline膵癌に対する門脈脾静脈合併切除を伴う結腸上前方アプローチによる膵頭十二指腸切除
井上 陽介(がん研有明病院 消化器外科), 石沢 武彰, 高橋 祐, 齋浦 明夫
手術 (0037-4423)69巻2号 Page125-133

◆【肝胆膵イメージング:画像が映す分子病理】 肝疾患 ICG蛍光イメージングの分子メカニズムと臨床応用
石沢 武彰(がん研有明病院 消化器外科), 齋浦 明夫
肝・胆・膵 (0389-4991)70巻4号 Page567-572

◆【最新臨床大腸癌学-基礎研究から臨床応用へ-】 大腸癌の検査・診断 転移・再発巣の診断 大腸癌肝転移の画像診断・概論
齋浦 明夫(がん研有明病院 消化器外科), 有田 淳一, 高橋 祐, 井上 陽介, 石沢 武彰
日本臨床 (0047-1852)73巻増刊4 最新臨床大腸癌学 Page308-313

 

2016年

◆Delayed Gastric Emptying After Stapled Versus Hand-Sewn Anastomosis of Duodenojejunostomy in Pylorus-Preserving Pancreaticoduodenectomy: a Randomized Controlled trial.
Sakamoto Y, Hori S, Oguro S, Arita J, Kishi Y, Nara S, Esaki M, Saiura A, Shimada K, Yamanaka T, Kosuge T. J Gastrointest Surg. 2016 Mar;20(3):595-603.

◆Laparoscopic deroofing for polycystic liver disease using laparoscopic fusion indocyanine green fluorescence imaging.
Tanaka M, Inoue Y, Mise Y, Ishizawa T, Arita J, Takahashi Y, Saiura A.
Surg Endosc. 2015 Sep 28.

◆Wide Applicability and Various Advantages of Supracolic Anterior Artery-first Approach in Pancreatoduodenectomy.
Inoue Y, Saiura A, Ishizawa T, Takahashi Y.
Ann Surg. 2015 Nov 10.

◆High Rate of Organ/Space Surgical Site Infection After Hepatectomy with Preexisting Bilioenteric Anastomosis.
Matsumura M, Saiura A, Inoue Y, Ishizawa T, Mise Y, Takahashi Y.
World J Surg. 2016 Apr;40(4):937-45.

◆A case of inflammatory hepatocellular adenoma displaying an unusual histological pattern.
Kanda H, Furuta R, Motoi N, Kakita T, Sugiura Y, Unno T, Matsueda K, Saiura A, Sugitani M, Ishikawa Y.
Clin J Gastroenterol. 2015 Dec;8(6):426-34.

◆Distal Pancreatectomy with En Bloc Resection of the Celiac Axis with Preservation or Reconstruction of the Left Gastric Artery in Patients with Pancreatic Body Cancer.
Sato T, Saiura A, Inoue Y, Takahashi Y, Arita J, Takemura N.
World J Surg. 2016 May 19.

◆Parenchymal-Sparing Hepatectomy Does Not Increase Intrahepatic Recurrence in Patients with Advanced Colorectal Liver Metastases.
Matsumura M, Mise Y, Saiura A, Inoue Y, Ishizawa T, Ichida H, Matsuki R, Tanaka M, Takeda Y, Takahashi Y.
Ann Surg Oncol. 2016 May 20.

◆【看護の理由が見える 主要術式イラスト便利帳】 肝葉切除術/肝区域切除術
齋浦 明夫(がん研究会有明病院 肝胆膵外科)
消化器外科Nursing (1341-7819)21巻1号 Page24-26

◆手術手技 膵頭十二指腸切除術における脾静脈合併切除の検討
田中 真之(がん研究会有明病院 消化器外科), 三瀬 祥弘, 石沢 武彰, 井上 陽介, 高橋 祐, 齋浦 明夫
手術 (0037-4423)70巻3号 Page323-330

◆【最新の肝胆膵画像シミュレーション】 開腹・鏡視下肝胆膵手術における蛍光イメージングの応用
石沢 武彰(がん研究会有明病院 消化器外科), 齋浦 明夫
消化器外科 (0387-2645)39巻1号 Page31-36

 

<書籍>

2014年

◆がん研スタイル 癌の標準手術 「肝癌」 メディカルビュー社
齋浦明夫ら

2015年

◆がん研スタイル 癌の標準手術 「膵癌・胆道癌」 メディカルビュー社
齋浦明夫ら

◆がん研有明病院の肝臓がん・胆道がん・膵臓がん治療に向きあう食事 女子栄養大学出版部
井上陽介ら

◆Imaging and Visualization in the Modern Operating Room
Chap.22 Fluorescence Imaging of Human Bile and Biliary Anatomy
Springer
Ishizawa T., Kokudo N.

◆Noncolorectal, Nonneuroendocrine Liver Metastasis
Chap.11 Liver Metastasis from Stomach Cancer
Springer
Saiura A.

2016年

◆ICG Fluorescence Imaging and Navigation Surgery
Chap.26 Liver Parenchymal Staining Using Fusion ICG Fluorescence Imaging
Inoue Y., Ishizawa T., Saiura A.

 


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