印刷

診療科・部門紹介
診療科・部門紹介

免疫・遺伝子治療科

免疫・遺伝子治療科

免疫・遺伝子治療科とは|診療科の特徴と実績

診療科の特徴

血液腫瘍、固形がんの治療効果のさらなる向上を目指して、主に患者さんの血液細胞(骨髄細胞、末梢血液幹細胞など)を体外に取り出してサイトカインや遺伝子で修飾し、体内に戻すことによって治療を行う臨床研究を計画・実行しています。

診療実績

乳がん患者に対する耐性遺伝子(MDR1)治療を平成12年度から開始し、今までに3例の治療を行いました。MDR1遺伝子は細胞膜に発現するP-糖蛋白をコードする遺伝子で、P-糖蛋白は種々の天然物由来の抗がん剤をATP依存的に細胞外に排出するポンプとして働きます。
MDR1遺伝子導入によりP-糖蛋白を発現する細胞は種々の抗がん剤に耐性を示します。したがって、がん患者より採取した正常造血幹細胞にMDR1遺伝子を導入して患者に戻し移植して患者の正常骨髄細胞を抗がん剤耐性とすることで、その後の抗がん剤投与時における骨髄抑制が回避できると考えられます。

一方、臨床の進行乳がんに対する自己造血幹細胞移植併用大量化学療法は最も強力な治療で、CR(完全寛解)への導入率は高いのですが移植後の骨髄機能は概して不十分であり、その後の化学療法が困難で、そのために微小残存病変・再発がんに対する有効な治療法が存在しないという問題があります。がん研における耐性遺伝子治療は、進行再発乳がん患者より採取したCD34陽性細胞に多剤耐性遺伝子MDR1を導入して患者に移植することにより、大量化学療法後のdocetaxelなどによる地固め療法・維持療法における骨髄抑制を軽減させ、治療を安全に遂行し、これによりがんの再発を遅らせ、生存期間の延長を目指すものです。

これまでに3人の患者が本治療に登録され、2人の患者がMDR1遺伝子導入細胞の移植とその後のdocetaxel治療を受けました。移植後の患者末梢血にはMDR1遺伝子導入細胞・P-糖蛋白陽性細胞が検出された。患者へのdocetaxel治療によりP-糖蛋白陽性細胞の割合は増加し、MDR1遺伝子導入細胞が患者体内で抗がん剤耐性細胞として機能したことが推定された。両症例とも2005年1月現在で3年以上CRを継続しており、再発の兆候はありません。
当研究は乳がんに対する、また血液幹細胞に遺伝子を導入する遺伝子治療としては日本初の試みであり、優れた成果があがっています。

このページのTOPへ