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診療科・部門紹介

呼吸器センター

最終更新日 : 2024年4月1日

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診療実績

肺癌

年間約730例の肺癌治療を行っています。その内訳は、手術施行例が約380例、化学療法を主体とした治療が約300例、放射線治療(体幹部定位放射線治療;ピンポイント照射)主体が約50例となっています。

●外科療法

当院の肺癌に対する外科療法の歴史は古く、1955年に施行された第1例目の手術から始まりました。その後は順調に症例を重ね、2021年の12月で症例数は6947例に到達しました。症例数の増加に対応すべく、2016年からは今までの月・水・金曜日の3日間に加えて木曜日にも手術枠を設け、1週間に12-14件(肺癌以外の手術例も含む)の手術を行っています。また、小型肺癌の増加に伴って当院でも胸腔鏡手術(ロボット支援下手術を含む)による肺葉切除+リンパ節郭清(肺癌の標準手術)を行う比率が増加しており2021年には98%を超えました。

進行肺癌に対しては、集学的治療(手術+化学療法、化学放射線療法)を呼吸器内科・放射線治療科とチーム一丸となって取り組んでいます。

手術成績は年々向上しています。

2010年から2016年に原発性肺癌に対して完全切除を行った症例1736例の予後は、Stage 0の5年全生存率(5-y OS)は95.4%、Stage IAが92.2%、Stage IBが79.7%、Stage IIが73.4%、Stage IIIAが60.2%でした。

手術の安全性は、全国的にみても確実に向上しています。当院における肺癌手術関連死亡(術後30日以内+在院死亡)の比率も年々減少しており、2010年代は0.2%と低率(全国平均は0.6%)です。

●薬物療法

手術ができない肺癌に対しては薬物療法が治療の中心となります。

最近の医学の進歩により作用機序の異なる薬剤がたくさん登場しています。

以前からある細胞障害性抗癌剤(2剤併用の点滴治療)、ある遺伝子異常を標的とする分子標的治療薬、腫瘍の増殖を支える血管の成長を妨げる血管新生阻害薬、免疫の抑制を解除して効果を示す免疫治療薬などです。

分子標的治療薬の標的となる遺伝子異常はEGFR, ALK, ROS1, BRAF, MET, NTRK, RET, KRAS、HRE2など数多くの遺伝子に見つかっており、それらを同時に検査するNGSを用いたがん遺伝子検査を呼吸器センターでは積極的に行っています。

また免疫治療薬の代表である免疫チェックポイント阻害薬は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体など、複数の薬剤が臨床で使えるようになっており、積極的に適応を検討しています。

以前からある細胞障害性抗癌剤に対する副作用対策も進歩し、悪心、嘔吐などの毒性は、以前よりマイルドになっています。
がんの組織型や遺伝子検査などの結果に合わせて、より良い標準治療を行えるようにカンファレンスで検討の上で提案します。

当院では、年間約250例の患者さんが薬物療法を受けられています。薬物療法の進歩により、長期間薬の効果を認める患者さんも経験するようになっています。

●放射線療法

手術ができない肺癌の中で、癌が胸部に限局している場合には、薬物療法と併用して放射線療法を行っています。放射線療法は1回10分程度、週5日間の治療を、非小細胞肺癌では6-7週間、小細胞肺癌では3-6週間、連続して行います。薬物療法と同時に行う場合は入院で、薬物療法終了後に行う場合は通院で行っています。当院では年間60人前後の患者さんが薬物療法と放射線療法の併用療法(集学的治療)を受けられています。

放射線治療の照射方法として、従来の照射法である三次元原体照射 (3D-CRT: three-dimensional radiation therapy) に加え、IMRT- VMATを用いた放射線治療を行っています (IMRT:Intensity-modulated radiation therapy, VMAT: Volumetric-modulated arc therapy)。IMRT-VMATを用いた照射技術により、肺腫瘍を取り囲む正常組織(肺・心臓・脊髄・食道等)に照射される放射線量を減らし、副作用の低減を目指しています。また、IMRT-VMATを用いることにより、従来の照射法(3D-CRT)では根治照射困難である症例が、根治照射可能となる他、3D-CRTと比較し、腫瘍へよりしっかり根治線量が照射されることを可能にし、治療効果の改善が望めます。

一方で、転移の無いT期の早期肺癌の中で、手術ができないか、手術を希望しない患者さんに対して、体幹部定位放射線治療 (SBRT: Stereotactic Body Radiation Therapy)を行っています。体幹部定位放射線治療 SBRTとは、肺癌に対して高い精度で集中して放射線をあてる治療法で、ピンポイント照射とも呼ばれています。治療は通院で、1回40-60分、1週間連続して治療を行います。当院では年間30-40人前後の患者さんが体幹部定位放射線治療を受けられています。

●肺癌の病理診断

全てのがん(癌と肉腫)の最終診断は、病理診断に基づいて行われます。画像診断や血清マーカーなどの結果で癌の疑いがある場合には、肺病変では気管支鏡やCTガイド下針生検・開胸肺生検等で組織を採取して顕微鏡下に病理診断を行います。通常は、細胞診も併せて行っており、より確実な診断ができるように努力しています。組織診と細胞診における問題点や臨床側からの要望などに関しては、呼吸器Cancer Boardで臨床医とディスカッションしています。がん研病理部の肺癌グループは、肺癌の病理診断・研究では、全国でも活発な活動を展開しています。日本の肺癌取扱い規約、肺癌診療ガイドライン、WHO規約にも大きく貢献しています。また、がん研の病理部は、手術中の迅速診断も多く実施しており、その結果に基づいて、肺切除の範囲を変更したり、リンパ節郭清の範囲を手術中に決定している症例もあります。

また、肺癌治療においては形態診断だけではなく遺伝子診断が重要となっています。EGFR、ALK、ROS-1、BRAF、MET、RET、NTRK, KRAS、HER2といった遺伝子の変異を調べ分子標的薬の使用が可能かを検討します。next generation sequencing (NGS) 一度にこれら複数の遺伝子が解析可能な検査も行われています。

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転移性肺腫瘍

年間の転移性肺腫瘍の切除件数は、100例を超えました。ここ数年の間に各種がんにおける化学療法が飛躍的に進歩しました。中でも、大腸癌における化学療法の進歩は目覚ましく、その結果として大腸癌肺転移に対する手術適応も変化しつつあります。かつては手術適応なしと判断した患者さんでも化学療法後に残存した肺転移に対して手術が可能となる症例もでてきました。化学療法の進歩のおかげで大腸癌肺転移の切除成績は、飛躍的に向上しました。大腸癌肺転移手術後の5年生存率は、有効な化学療法のない時代では約50%でしたが、化学療法導入後では約72%と著明に改善しました。その他の主な原発巣の肺転移術後の5年生存率(2000年以降に肺転移手術を施行した症例の手術成績)は、子宮癌60%、乳癌79%、頭頸部扁平上皮癌56%、骨原性肉腫52%、軟部原性肉腫56%と改善してきています。原発部位を担当する主科と連携をとりながら、肺転移に対しても積極的に外科療法に取り組んでいます。

2022年(呼吸器外科)

2022年はコロナ禍の影響から脱却して2021年と同様の手術数でした。肺癌の切除数は昨年度より若干減少しましたが、手術総数は600例を超えました。今後は導入化学療法後の患者さんやサルベージ手術(救済手術)の頻度が増加することが予想されます。

手術術式(全摘術、肺葉切除、区域切除、部分切除)やアプローチ法(標準開胸手術、胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術)などは病変の病期(広がり)や患者さんの体力を考慮して決定しています。決して傷の大きさや数だけにこだわるのではなく、手術内容にこだわって手術に臨んでいます。手術術式・方法などにご質問がある場合は遠慮なく担当医にお申しつけください。

部分切除術での胸腔ドレーン留置期間は0〜1日、術後入院期間は約4日です。区域切除や肺葉切除術では胸腔ドレーン留置期間は1〜3日、術後入院期間は約5日です。退院後はまず自宅療養を行い、退院後1週間前後の外来で創部の確認、採血、胸部レントゲン写真を確認させていただき、問題なければ職場復帰可能となります。術後経過には個人差がありますので、退院前に担当医にご相談ください。

2023年(呼吸器内科)


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