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診療科・部門紹介
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泌尿器科

泌尿器科

最終更新日 : 2016年11月30日

泌尿器科とは|診療科の特徴|診療実績スタッフ紹介業績紹介

診療科の特徴

最適な治療を提供するために

当科では2016年11月現在11人の常勤医師と4人の非常勤医師で診療を行っています。多くのがん患者さんが当院に来院されますが、患者さんの希望に沿って、複数の治療選択肢のなかから、最適な治療を提案できるような診療を心がけています。提示する治療方針に関しては、泌尿器科医を中心に放射線科医、腫瘍内科医、病理医、薬剤師、看護師がカンファレンス(キャンサーボード)にて率直な意見を出し合って検討した上で、最適な治療法を、患者さんに提案できるようにしております。担当医師個人の独断に偏らない、それぞれの専門家による質の高い医療を提供するように努めています。また治療成績の向上を図るために、毎年癌の進行度による治療成績を解析して、よりよい治療を模索しています。

当科に入院された患者さんには3-4名の医師(担当チーム)が担当につき日々診療に当たります。癌の治療をしっかりと行い、順調に退院できるように、毎日担当チームで話し合いを行っております。また患者さん一人一人が予定されている治療を納得して受けることのできるよう、わかりやすい説明を心がけております。

がんの種類別に当科で施行している主な治療、特徴的な治療について説明します。

前立腺がん

がん研有明病院で施行している前立腺がん手術

ダヴィンチによる手術ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術

腹腔鏡下根治的前立腺摘除術をロボット支援下に行う手術です。保険診療でうけていただくことが可能です。当科では昨年(2015年度)に104名の方が、本手術を受けられました。

ダヴィンチは世界的に普及している、最新鋭の内視鏡手術支援ロボットです。ロボットが独自に手術を行うのではなく、術者がロボットを操作して行います。ロボット本体と操作台、助手用のモニターなどで構成され、ロボット本体には3 本のアームと1 本のカメラが装着されています。

ダヴィンチでは3D カメラで体内を立体的に映し出します。鮮明な3D 画像、ズーム機能により、患部を拡大視野でとらえることが可能です。また3 本のアームを術者が自由に操作することができます。様々な形状の鉗子は人間の手と同等以上の可動域があり、これにより精密な操作が可能となります。また手ぶれがなく手先の震えが鉗子の先に伝わらないように手ぶれを補正します。

患者さんにおいては 1) 出血量が少ない(輸血例は少数)、2) 傷口が小さく目立たない(患者さんの皮膚を切開する傷口は、鉗子を挿入する8〜12mmほどの幅で、最大で6カ所です、そのため傷口が小さく目立ちません)、3)術後の回復が早い(小さな傷口のみで行われる手術なので、皮膚や筋肉を切開した痛みは少なく術後の回復も早い傾向にあります。平均入院期間は10日前後です。)、等のメリットがあります。

ロボットの操作には熟練が必要なため、執刀はダヴィンチ手術システムの使用のための認定ライセンスを受けた医師およびロボット手術チーム(看護師・手術技師)が担当します。

【手術室(ダヴィンチ使用手術)】

ミニマム創内視鏡下前立腺全摘除術

開腹手術の概ね半分以下の小切開(4-7cm程度)のみで前立腺を摘除します。腹腔内操作を行わないため、術後の腹腔内合併症のリスクが低いことが特徴です。ダヴィンチ手術と同様に、保険で認められた、前立腺がんに対する低侵襲手術です。東京医科歯科大学で開発・洗練された手術で(http://www.tmd.ac.jp/med/uro/practice/schedule/02.html)、当院でも同手術の資格を持った医師(学会より認証された施設基準医、練達医)が手術を行っております。

ダヴィンチによる手術は緑内障の方、脳動脈瘤を有する方、過去の腹部手術で腹腔内の癒着が強い方は受けることができません。ミニマム創内視鏡下前立腺全摘除術は腹腔内の操作は行わず、また頭低位にしないで施行可能なためにこれらの疾患を有する患者さんにも施行が可能です。

高リスク前立腺がん/局所進行がんに対する広範前立腺摘除術

進行が遅いといわれる前立腺がんですが、局所進行がん(T3以上)やグリソンスコア(前立腺がんの悪性度)の高い症例では、高頻度で前立腺がんが前立腺を超えて周囲に拡がっています。当科では手術による根治度をより向上させるために、このような高リスクの前立腺がんに対しては前立腺の周囲も含めて大きく切除する広範前立腺全摘除術を積極的に行っています(図1, 2)。これまでの当院の手術症例の解析では、合併症発生率は通常の手術と変わりません。我々は1994年より高リスク癌に対して広範前立腺摘除を開始し、現在までに約2000人の患者さんがこの手術を受けられました(日本有数の手術件数)。本手術はダヴィンチによる手術ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術やミニマム創内視鏡下前立腺全摘除術でも施行することが可能です。進行癌症例においては従来の開腹手術を提示すこともあります。

当院の高リスク前立腺がんに対する開腹広範前立腺全摘除術の治療成績は、世界のトップレベルの施設と同等あるいはそれ以上であり、高リスクがんの約半数は手術のみで根治が期待できます。また、残りの半数の患者さんには放射線療法、ホルモン療法を追加し、根治をめざすことが可能です。

【当科における前立腺全摘除後の癌特異的生存率】

前立腺広範摘除に関して当科より報告した論文

  1. Yamamoto S, Kawakami S, Yonese J et al. Feasibility of antegrade radical prostatectomy for clinically locally advanced prostate cancer: a comparative study with clinically localized disease. Int J Urol 17, 720-6, 2010
  2. Yamamoto S, Kawakami S, Yonese J et al. Long-term oncological outcome and risk stratification in men with high-risk prostate cancer treated with radical prostatectomy. Jpn J Clin Oncol 42, 541-7, 2012

がん研有明病院における前立腺がん診断(PSAが高いと指摘された方へ)

健診などでPSA (Prostate-specific antigen: 前立腺特異抗原) が高い男性は前立腺がんの可能性がありますので、是非当院に来院し診察を受けてください。一般的にPSAが4 ng/ml以上では、異常値と指摘されますが、PSAが異常値でも前立腺がんが存在しない方もたくさんいます(PSAは正常の前立腺組織からも分泌されます)。当科ではPSAが異常値の方には、前立腺MRIの施行を提案しております。近年、前立腺MRIは飛躍的進歩をとげており、高い精度で、前立腺がんの有無、大きさ、位置を予測することが可能となっています。PSAが異常値でも、前立腺MRIにて癌が指摘されない場合は、侵襲性を伴う前立腺生検を施行せずに経過をみることもあります(不要な生検の回避)。一方、前立腺MRIにて癌の可能性が指摘された場合は、前立腺生検を勧めています。

当科における前立腺生検

前立腺がんの診断には、前立腺に針を刺して組織を採取し、そこにがん細胞が存在するかどうかを見る「前立腺針生検」という検査が必要です。当科では、前立腺MRIの情報をもとにして同部位を狙って生検するMRI狙撃生検を行っております。またMRIで癌が疑われない領域(MRI陰性領域)においても癌が存在する可能性があるため、MRIの陽性部位に関係なく8か所(左右計4か所)の生検を行っております。MRI狙撃生検と8か所の定位置の生検で、治療が必要な前立腺がんを効率よく(少ない生検本数で癌の見逃しを少なくして)、発見することができます。また前立腺がんの有無のみならず、その大きさや悪性度を、より正確に診断するよう努めております。これらの情報は、万が一前立腺がんと診断された場合に、最適な治療方針を選択する上で不可欠なものとなります。

(手術療法と放射線療法のどちらが推奨されるか、手術療法を選択する場合に神経血管束の温存は可能か、放射線療法を選択する場合にホルモン療法の併用が必要か、などの方針を決定する上で重要です)。

前立腺針生検は、会陰と呼ばれる陰嚢と肛門のあいだの皮膚から行う経会陰生検ルートでの生検を原則として行っています。MRIで陽性部位のある方には、同部位を狙った狙撃生検を施行しております。それに加えて、前立腺の定位置の組織を採取する生検(系統的生検)を8カ所行っております。

検査後すぐに歩行、食事、排便排尿が可能で、尿道に管を入れる必要はありません。1泊2日で行っており、入院日に生検を行い、翌日退院となります。

文献
  1. Kawakami S, Okuno T, Yonese J, Igari T, Arai G, Fujii Y, Kageyama Y, Fukui I, Kihara K. Optimal sampling sites for repeat prostate biopsy: a recursive partitioning analysis of three-dimensional 26-core systematic biopsy. Eur Urol. 2007 Mar;51(3):675-82; discussion 682-3
  2. Kawakami S, Hyochi N, Yonese J, Yano M, Fujii Y, Kageyama Y, Fukui I, Kihara K. Three-dimensional combination of transrectal and transperineal biopsies for efficient detection of stage T1c prostate cancer. Int J Clin Oncol. 2006 Apr;11(2):127-32.
  3. Kawakami S, Yamamoto S, Numao N, Ishikawa Y, Kihara K, Fukui I. Direct comparison between transrectal and transperineal extended prostate biopsy for the detection of cancer. Int J Urol. 2007 Aug;14(8):719-24.
  4. Numao N, Kawakami S, Yokoyama M, Yonese J, Arisawa C, Ishikawa Y, Ando M, Fukui I, Kihara K. Improved accuracy in predicting the presence of Gleason pattern 4/5 prostate cancer by three-dimensional 26-core systematic biopsy. Eur Urol. 2007 Dec;52(6):1663-8. 33.
  5. Numao N, Kawakami S, Yonese J, Koga F, Saito K, Fujii Y, Ishikawa Y, Fukui I, Kihara K. Three-dimensional 26-core biopsy-based patient selection criteria for nerve-sparing radical prostatectomy. Int J Urol. 2008 Dec;15(12):1061-6.
  6. Kawakami S, Numao N, Okubo Y, Koga F, Yamamoto S, Saito K, Fujii Y, Yonese J, Masuda H, Kihara K, Fukui I. Development, validation, and head-to-head comparison of logistic regression-based nomograms and artificial neural network models predicting prostate cancer on initial extended biopsy. Eur Urol. 2008 Sep;54(3):601-11.
  7. Numao N, Kawakami S, Sakura M, Yoshida S, Koga F, Saito K, Masuda H, Fujii Y, Yamamoto S, Yonese J, Ishikawa Y, Fukui I, Kihara K. Characteristics and clinical significance of prostate cancers missed by initial transrectal 12-core biopsy. BJU Int. 2012;109:665-71.

腎がん

ミニマム創内視鏡下腎部分切除術

CTや超音波検査などの画像診断技術の進歩により、小さな腎がんが偶然に発見されることが多くなってきています。近年、小さな腎がんに対しては腎機能をできるだけ温存する腎部分切除が推奨されています。当科においては腹腔鏡下小切開手術(ミニマム創手術)を取り入れ、体への負担の少ない手術をおこなっています。

ミニマム創手術は開放手術の利点と腹腔鏡手術の利点をともに活かし、両者の欠点を解消あるいは軽減することを目指して開発されました。臓器を取り出せるサイズ(4~7 cm程度)の1つの切開をおき、このミニマム創から内視鏡や手術器具を挿入して手術を完了します。状況に合わせていつでも創の大きさは調整(延長)できるため、患者さんの状況に合わせた低侵襲と安全性を担保することができます。

ミニマム創手術の利点

ミニマム創手術は従来の開放手術と比べて以下のような利点があります。

  1. 傷が小さい(従来手術の1/2-1/3)
  2. 内視鏡を用いて拡大視および全員での観察が可能
  3. 原則として手指を傷の中に挿入しないので、感染などのリスクを軽減できる

  

ミニマム創腎部分切除術の治療成績

腎部分切除後、大半の患者さんは手術翌日から食事、翌々日から歩行を開始し、手術後3-4日程度で退院できるくらいの状態(食事可能、ドレーンなし、100m以上の歩行可能)となります。また、癌の根治性については他の手術と同等であり、小さい傷であっても根治性を損なわずに手術をおこなうことが可能であることが報告されています1, 2。

手術についての詳細は次のホームページにおいても紹介されています。

東京医科歯科大学 腎泌尿器外科学教室 http://www.tmd.ac.jp/med/uro/index.html
日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会 http://www.minimumendo.jp/

文献
  1. Kihara K, Koga F, Masuda H, Saito K, Tatokoro M, Yokoyama M, Matsuoka Y, Numao N, Kawakami S, Fujii Y. Gasless single-port clampless partial nephrectomy for peripheral renal tumor: Surgical, short-term oncological, and functional outcomes. The 106th annual meeting of the American Urological Association, Atlanta, GA, USA, 2012/05/21
  2. Kihara K, Koga F, Masuda H, Saito K, Tatokoro M, Yokoyama M, Matsuoka Y, Numao N, Kawakami S, Fujii Y. Feasibility of gasless single‐port clampless partial nephrectomy for peripheral renal tumor: An experience of 118 consecutive cases. The 27th Annual Congress of the European Association of Urology, Paris, France, 2012/2/27.

腹腔鏡下腎摘出術

当科では腎臓がんに対して腹腔鏡下手術を導入し、患者さんの身体的負担の少ない手術治療に取り組んでいます。腎臓を全部摘出する必要のある比較的腫瘍径の大きな腎臓がん(5cm以上)に対しておもに施行しています。腹腔鏡下手術とは、お腹に5〜12mm程度の穴を3〜4箇所程度開けて、カメラや手術器具をその穴から挿入し、モニターに映し出された映像下に行う手術です。内視鏡による拡大視効果によって細かい血管などの構造の観察が可能となり、従来の開腹手術よりも少ない出血量で手術が可能となります。腹腔鏡下での腎摘出では、3〜6cm程度の傷一ヵ所と5mm〜1cm程度の数ヵ所の傷で手術の完遂が可能です。

【腹腔鏡下腎摘出術(手術室風景)】

尿路上皮がん(膀胱がん、腎盂尿管がん)

進行性尿路上皮がんに対する化学療法と拡大手術

当科では、診断時に既に転移を有するような進行した尿路上皮がん(膀胱がんもしくは腎盂尿管がん)の治療に、積極的に取り組んでいます。中でも、リンパ節転移のみで遠隔転移(肺、肝臓、骨など他の臓器への転移)がない一部の患者さんに対しては、抗がん剤と手術を組み合わせて、根治を目指した治療に取り組んでいます。

ここでは、
1. 転移性尿路上皮がんに対するGEP化学療法
2. 化学療法と拡大手術を組み合わせた集学的治療
についてご説明いたします。
1.転移性尿路上皮がんに対するGEP化学療法

当科では、転移性尿路上皮がん(転移を有する膀胱がんもしくは腎盂尿管がん)に対して、独自に開発したGEP化学療法(ゲムシタビン、エトポシド、シスプラチン)を施行し、優れた治療成績を報告しています。

GEP化学療法開発の経緯

転移性尿路上皮がんに対する標準的治療は、GC化学療法(ゲムシタビン、シスプラチン)です。骨髄抑制、口腔粘膜障害、倦怠感などの副作用が少なく、ガイドラインにおいて第一選択の化学療法として推奨されています。
しかし、GC化学療法の治療効果は、従来の古い化学療法と比べても決して満足できるものではありません。我々は、転移性尿路上皮がんの治療成績を改善するため、このGC化学療法にエトポシドという抗がん剤を1種類付け加えた3剤併用化学療法(GEP化学療法)を開発しました。
治療のスケジュールは図1の通りです。4週間を1周期として施行します。

治療成績

当科では、このGEP化学療法を2000年10月より導入し、約7割の患者さんで一時的に病巣が30%以上縮小するなど、優れた治療成績を報告しています1-3。

2.化学療法と手術を組み合わせた集学的治療

転移性尿路上皮がんの患者さんで、前述した化学療法が奏効した場合、特にリンパ節転移のみを有する方に対して、当科では積極的に根治を目指した手術(転移巣も含めた拡大切除)を行い、優れた治療成績を報告しています。

化学療法後の手術の意義

転移性尿路上皮がんの患者さんで化学療法が奏効した場合、一旦がんが消失したように見えても、残念ながら大部分の方で、その後がんの再発が認められます。 そこで当科では、特にリンパ節転移のみを有する方に対して、消失・縮小した転移巣も含めた拡大切除を加え(集学的治療)、再発を減らしたり遅らせたりして長期生存につなげようという試みを行っております。

治療成績

まずは前述のGEP化学療法を施行し、治療効果を認めた患者さんのうち、病巣がすべて切除できる可能性がある患者さんの約8割に、転移巣も含めた拡大切除を積極的に施行し、約3割の患者さんに長期生存を認めました3。特に、元気でリンパ節転移のみの患者さんでは拡大切除に恩恵を認めました。

術後補助化学療法

また当科では、拡大切除で摘出した標本において、癌の残存を認めるなど高い確率で再発が予想される患者さんに対して、積極的に術後の補助化学療法を追加しています。術前補助化学療法の有無にかかわらず、GEP化学療法を追加することで、約5割の患者さんで長期にがんの再発を抑制できることも報告しています。

  1. Tukamoto T, et al: Phase I/II study of a combined gemcitabine, etoposide, and cisplatin chemotherapy regimen for metastatic urothelial carcinoma. Cancer. 2006 Jun 1;106(11):2363-8.
  2. Saito K, et al: Impact of C-reactive protein kinetics on survival of patients with advanced urothelial carcinoma treated by second-line chemotherapy with gemcitabine, etoposide and cisplatin. BJU Int. 2012 Nov;110(10):1478-84.
  3. Urakami S, et al: Phase II trial of first-line chemotherapy with gemcitabine, etoposide, and cisplatin for patients with advanced urothelial carcinoma. Urol Oncol. 2013 Apr 4. doi:pii: S1078-1439(13)00030-6. 10.1016/j.urolonc.2013.01.007. [Epub ahead of print].

浸潤性膀胱がんに対する膀胱温存療法

浸潤性膀胱がんに対する標準的根治治療は膀胱全摘術です.膀胱を摘出したくないというのは、すべての患者さんの願いですが、かつて行われた単独の膀胱部分切除の治療成績は極めて不良で、膀胱癌の空間的多発、再発という性格から全摘が標準治療となっております。しかし、浸潤性膀胱がんの患者さんの一部では、根治性を損なわずに膀胱温存が可能と判断される場合があります。低用量化学放射線療法併用膀胱部分切除による試みです。本治療は、東京医科歯科大学泌尿器科で始まり、既に優れた治療成績が報告されております。

対象症例
  1. 浸潤がんであること
  2. 浸潤がんの範囲が膀胱内で広範囲でないこと (膀胱頸部、三角部は含まないこと) 

が条件です。

低用量であっても、放射線、抗がん剤化学療法を併用することで、副作用をほとんどきたすことなく、大きな治療効果があがることは、各種がんで証明されております。ただし、がん組織のなかにはこうした治療に抵抗な部分 (がんの幹細胞)が残りますので、これを膀胱部分切除で取り除くことになります。

具体的な治療の流れ

低用量化学放射線 (治療期間は4〜5週間)
→4〜6週間後に画像診断と病理診断による浸潤がんの治療効果判定
→きわめて有効と判断された場合には膀胱部分切除、明らかながんの残存がみられた場合には膀胱全摘

当科では、リンパ節転移などを有する進行性の膀胱がんが多く、全身化学療法を術前治療の主体としております。浸潤性膀胱がんのなかで、上記治療に合致する症例は、それほど多くはありませんが、可能な場合には、積極的に情報提供を致しますので、担当医とご相談下さい。

精巣がん(もしくは性腺外胚細胞がん)

難治性精巣がんに対する積極的化学療法と救済手術療法

精巣がん(胚細胞がん)は、たとえ転移を有していても抗がん剤治療に非常に良く反応し、通常は比較的高い確率で治癒が望める疾患です。一方で、がんの組織型、転移の部位と進行度から厳しい予後が予測され、実際に思うような治療効果が得られない難治例もあります。当科は、そのような難治性精巣がん(胚細胞がん)症例の治療経験も豊富であり、精巣がんを患った全ての患者様において、治癒を目指した積極的治療に取り組んでおります。

当科の治療成績

1995〜2011年に、当科で治療した進行胚細胞がん91例(転移性精巣がん78例、性腺外胚細胞がん13例、他院で抗がん剤治療歴のある症例は除く)の治療成績を図に示しました。5年生存率は、全体で91%、IGCCCG(International Germ Cell Cancer Collaborative Group)分類の予後不良群でも83%です。

91例中39例で、抗がん剤治療後の残存病変の外科的切除を行っており、内32例(82%)で治癒を得ております。


当科における転移性精巣がん(進行胚細胞がん)治療の原則
  1. 一次化学療法のレジメンにはVIP(エトポシド、イフォマイド、シスプラチン)療法 * を採用しています1。その後の再発時、もしくは治療抵抗性となった場合のレジメンには、TGP(パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン)療法 を採用しています。最大限の治療効果を求めて、可能な限り減量や投与間隔の延長はせず、主治医、看護師、病棟薬剤師が協力して、厳重な副作用管理を行ないます。
  2. 徹底した抗がん剤治療で腫瘍マーカーの正常化を得た後に、残存病変があれば極力外科的切除を行います。

* 当科では、一次化学療法のレジメンにVIP療法を採用しております。一般的に用いられるBEP(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)療法と比較して、ブレオマイシンによる肺障害のリスクがないという利点があります。

文献
  1. Tanaka H, Yuasa T, Fujii Y, Sakura M, Kitsukawa S, Urakami S, Yamamoto S, Masuda H, Fukui I, Yonese J. First-line combination chemotherapy with cisplatin, etoposide, and ifosfamide for the treatment of disseminated germ cell cancer: re-evaluation in the granulocyte colony-stimulating factor era. Chemotherapy (in press).

その他

新規抗がん剤の治験

薬物治療は、目覚ましい進歩をとげ、人々の生命や健康を支えています。しかし、現在でも治らない病気もあります。進行してから見つかったがんや、再発したがんも治りにくい病気です。新しい薬剤を待ち望んでいる患者さんがいます。新しい薬剤を創るためには、国(厚生労働省)の審査・承認が必要であり、そのために行われる試験を「治験」と言います。

がん研有明病院泌尿器科では、放射線科医、腫瘍内科医、病理医、薬剤師、看護師など、診断、治療の専門家から成るキャンサー・ボードでの検討を踏まえ、治験に積極的に参加しています。

治験負担軽減費

治験に参加される患者さんの負担が軽減のために、交通費等を一部負担できる場合があります。
当院で実際どのような治験が行われているかは、臨床試験・研究センターの「会議の記録の概要」についても記載されていますのでご参照ください。
http://www.jfcr.or.jp/hospital/department/facilities/new_medicine/clinical_trial/index.html

前立腺全摘後尿失禁に対する人工尿道括約筋手術

前立腺がんに対する前立腺全摘除後の尿失禁は、術後、6か月までは急速に改善し、その後はゆるやかに改善または、不変であるとされています。約18〜24か月を越えてさらに改善することはありません。その段階で、中等度から高度尿失禁(目安として、一日100グラム以上)の方は、その後急速に改善する可能性は低いので、尿失禁に対する外科的治療を考慮します。外科的な治療を必要とする尿失禁患者は、全摘除患者の約2〜3%に発生するといわれています。多数の医療機関で全摘除が施行されているのに比較して、男性尿失禁治療に習熟している医師、医療機関は極めて少ないのが実情です。苦しんでおられる重症尿失禁の患者さんに、当科では、人工尿道括約筋埋め込み術を積極的に行っております。当科スタッフは、既に80例以上の経験を有しております。現在、パッドやオムツを数枚以上常用されている方も、1枚程度またはパッド不要になる可能性があります。

人工尿道括約筋埋め込み術の概要

人工尿道括約筋埋め込み術は、尿道に巻きつけたカフを括約筋の代わりとして用いて、陰嚢内のポンプを押すことでカフを弛緩させて排尿を制御します(図)。弛緩して開いたカフは2分程度で自然に閉じます。その有効性は極めて高く、尿失禁の程度に関係なく改善すること、尿失禁に対する既治療(コラーゲンほか)の有無や、放射線照射の既往もその効果に影響を与えません。しかし、人工物を埋め込む手術ですので、それに伴うリスクもあります。感染や故障、尿道損傷などにより植え込んだ人工括約筋を抜去せざるを得なくなる状況が、一般的には手術直後から5-10年の間に20-30%程度に生じるとされています。

治療の流れ

入院は手術の1-2日前にしていただきます。手術は原則として全身麻酔で行い、手術時間の目安は1時間半から2時間程度です。特に問題なければ5-6日目くらいに退院となります。 手術直後は人工括約筋を作動させておらず、尿失禁は続いています。手術の影響がほぼ完全になくなった6-8週間後に1泊2日で入院し、実際に使用(アクチベーションといいます)し始めます。 本手術は2012年4月より保険診療として認められるようになり、経済的な負担はだいぶ軽減されました。まずは、ご相談頂ければ幸いです。

軽度〜中等度尿失禁に対する治療選択

尿道スリング手術も考慮します。本手術は、人工括約筋埋め込み術と異なり、自然排尿が担保されます。世界的には、広く行われておりますが、本邦では極めて限られた施設で行われているのみです。本治療は、日本医科大学泌尿器科と共同で、治療にあたっております。

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