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診療科・部門紹介

がん疼痛治療科

最終更新日 : 2016年11月24日

がん疼痛とは診療科の特徴診療実績スタッフ紹介

がん疼痛とは

服部政治
服部政治
がん疼痛治療科部長

がんの痛みには、がんそのものがもたらす痛み、転移した部位の痛み、治療に伴う痛みなど多くの痛みが関与します。

痛みには、おなかが痛い・下腹部が痛いなどの内臓痛、手足が痛い・腰が痛い・肩が痛い・動くと痛い・体重をかけると痛い・呼吸をすると痛いなどの体性痛、びりびりとする・じんじんする・やけどしたような・電気が走るような痛みなどの神経障害性疼痛があります。また、不安や抑うつ気分に伴って起こる心因性の痛みもあります。

このような痛みを放置すると、日常生活に支障を来すばかりでなく、体力を消耗して、がんの治療そのものにも影響を及ぼしかねません。通常の飲み薬や貼り薬の鎮痛薬で痛みを制御できる場合はいいのですが、それでは不十分な場合は、我々専門家による鎮痛薬の調整や神経ブロック、脊髄鎮痛法などを行って痛みの「治療」をする必要があります。

もしみなさんが、「医療用麻薬、麻薬性鎮痛薬、オピオイド鎮痛薬などを使えば麻薬なのだからあらゆる痛みが軽減できるはずだ」、と思っているとすればそれは間違いです。残念ながら飲み薬や貼り薬だけでは取れない痛みは数多くあります。薬の量や種類をいくら増やしても痛みや苦痛が軽くならないこともあります。その場合は、眠気などの副作用で日常生活ができなくなるほどになることも少なくありません。そうならないためには、早めにがんの痛み治療の専門家に診てもらうことが重要です。

診療科の特徴

がん疼痛治療科は、「痛みが薬だけでは軽減しない」、「薬がただ増えるだけで眠くて仕方がない」、「おなかが張って苦しいけど、鎮痛薬では楽にならない」など、痛みや苦痛をなんとかしてほしいという患者さんの希望に応えるために2014年4月に設立された新しい専門科です。我々は、がんの痛みを軽減するために、内服、貼付、注射薬、神経ブロック、脊髄鎮痛法など、患者さんひとりひとりに合わせた、あらゆる痛みの治療法を考えて実施していきます。皆さんが主治医から処方されている鎮痛薬では痛みが思うように軽減できない時や、鎮痛薬の副作用で眠気が強く日常生活に支障を来している時などには、ペインクリニックの医療技術を駆使して痛みの軽減を図るのです。我々が実践している治療内容を以下に簡単にまとめましたのでご覧ください。



1) 一般的な鎮痛薬の調節

痛みが軽度であれば、打撲傷や歯を抜いた後などに処方される非ステロイド性鎮痛薬やアセトアミノフェンといった内服薬が出されます。これらの薬剤でうまく鎮痛ができないときに、問題点を見つけて内服時間や回数の変更などのアドバイスを行います。

2) オピオイド鎮痛薬の調節

「オピオイド鎮痛薬」は麻薬性鎮痛薬の専門的な言い方です。「麻薬」と聞くと誰もが恐怖心を抱くことでしょう。そこにはみなさまの大きな誤解があるからです。オピオイドは、上記の1)では痛みが軽くならない時に使用する「痛みの程度に応じて調節できる」鎮痛薬です。よく「強い鎮痛薬」と表現されますが、そうではなく「強い痛みにも対処できる鎮痛薬」なのです。「強い鎮痛薬」=「強い副作用」というイメージを持たれがちですがそれも誤りです。副作用に、眠気、便秘、一時的な吐き気などはありますが、胃・腎臓・肝臓など臓器を悪くするような副作用はありません。また、一度使用したら二度と止めることができないと思われがちですが、これも間違いです。急に止めると退薬症状(冷や汗、不安など)が出ますが、少しずつ減量すれば中止することが可能です。また、痛みに対して使用している限りは、中毒や依存症になることはありません。

がん疼痛治療科では、一般的な薬剤に加えて、オピオイド鎮痛薬を使用して痛みを軽減させます。患者さんの生活スタイルや病状に合った薬剤の選択、投与量の調節、副作用の吐き気や便秘に対する治療薬の処方なども専門家として診ながら行います。

3) 注射薬での調節

入院中の患者さんに実施することが多いですが、鎮痛薬の注射薬を使用します。検査・手術・消化管の問題などで薬を飲むことができない場合や、痛みに必要な鎮痛薬の量を決める時に使用します。

当院では、患者さんが痛みを感じたときにご自身でも対応可能な精密ポンプを使用しています(写真)。ここでも患者さんひとりひとりに合わせた薬剤、量を計算しながら調整していきます。


4) 神経ブロック療法(神経破壊法)

鎮痛薬の内服や貼付だけでは十分痛みを軽減することができない場合、痛みを感じている神経をブロックする神経ブロック療法(神経破壊)があります。「神経破壊」というと躊躇されると思いますが、痛みを感じている神経をマヒさせることで過剰な痛みの刺激を感じないようにする方法と思っていただければいいです。実施すると多くの方で鎮痛薬の量を大幅に下げることができます。

神経ブロックには、内臓の痛みに適応となる腹腔神経叢ブロック、上腸間膜動脈神経叢ブロック、下腸間膜動脈神経叢ブロック、上下副神経叢ブロックが、肛門部の痛みに適応となるフェノールサドルブロック、肋骨部の痛みに適応となる肋間神経ブロックや胸部脊髄くも膜下フェノールブロックなどがあります。(図)

神経ブロックをすることで内服の鎮痛薬が減ると、副作用も少なくなります。

適応については患者さん各々で異なりますので、主治医と相談しながら決めていきます。

5) 脊髄鎮痛法

脊髄の近くにカテーテルを入れ、直接鎮痛薬を投与する方法です。内服に必要な量の何十分の一の量で、よりよい鎮痛効果を発揮します。硬膜外鎮痛法と脊髄くも膜下鎮痛法があります。内服や貼付薬で痛みが取れない場合や神経ブロックの適応にならない場合に選択します。当科では、このカテーテルが抜けたり、感染したりしないように、体内に埋め込む手術も行っています。

カテーテルから薬液を注入するためのポンプを携帯して生活しなくてはならない欠点はありますが、多くの患者さんの痛みや腹部膨満感の軽減に寄与している鎮痛方法です。

6) 専門的がん疼痛治療の教育と実践

上記のように、がんの痛みに対してあらゆる治療法を用いて対処するのが我々の使命であり、その技術や経験を、がん研有明病院で治療を受けている患者さんに一日でも早く提供するのはもちろんのこと、その技術を連携施設や地域でさらに向上させ、さらには日本の医学教育に生かしていくことを我々は目指します。

<外来診療日>

 
AM          
PM 服部政治     立花潤子  

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