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【がん研セミナー(9月3日)のお知らせ「次世代プロテオミクスが拓く医学生物学の新地平:90年来のがんの謎を解く」中山 敬一 博士(九州大学 生体防御医学研究所 教授)】

2019年07月17日

がん研セミナー(9月3日)のお知らせ

 

演題:次世代プロテオミクスが拓く医学生物学の新地平:90年来のがんの謎を解く

 

演者:中山 敬一 博士(九州大学 生体防御医学研究所 教授)

 

抄録:初めてヒトゲノム解読がなされてから15年近く経つが、それでも生命の基本作動原理の理解には遠く及ばないのが現状である。その最大の理由は、細胞活動の直接の機能分子がゲノム(DNA)ではなく「タンパク質」であるからである。多くの研究者はタンパク質の性質の解明には力を注いでいるものの、「量」については驚くほど大雑把であるが、精密なタンパク質定量は数理科学の導入にとって必須である。われわれは全てのタンパク質を絶対定量するため、ヒトの全リコンビナントタンパク質25,000種を試験管内で合成し、この情報を基に高速ターゲットプロテオミクスで短時間に多数のタンパク質の絶対定量を可能にする技術(in vitro proteome-assisted MRM for Protein Absolute QuanTification: iMPAQT)という方法を発明した(特許第5468073号)。このiMPAQT法を用いて多くのタンパク質の絶対定量を行った。特に正常細胞とがん細胞について、その代謝状態の変化をもたらすキー酵素を探索した。この結果、がんにおける代謝シフトは、炭素ソース利用をエネルギー産生から高分子化合物合成へリモデリングする大規模な適応戦略であることが明らかとなり、今までワールブルグ効果として知られていた好気的解糖シフトは、その一部を見ているに過ぎないことが判明した。さらに主要な窒素源であるグルタミン代謝もがんでは大きくシフトしていることを発見した。われわれはこれを「第二のワールブルグ効果」と呼び、そのキー酵素を同定することに成功した。このようにiMPAQT法を駆使してがん代謝の全貌を解明することによって、その性質と治療標的が浮かび上がってきた。

 

Reference: A large-scale targeted proteomics assay resource based on an in vitro human proteome. Matsumoto M., et al. Nature Methods, 2017; mTORC1 and muscle regeneration are regulated by the LINC00961 encoded SPAR polypeptide. Matsumoto A., et al. Nature, 2017; Robotic crowd biology with Maholo LabDroids. Yachie N., et al. Nature Biotechnol., 2017; Pkm1 confers metabolic advantages and promotes cell-autonomous tumor cell growth. Morita M, et al., Cancer Cell, 2018

 

日時:2019年9月3日(火)16:00〜17:00

 

場所:吉田記念講堂

 

連絡先:清宮 啓之(内線5491)

 

*外部の研究者のご来聴を歓迎いたします。尚、本セミナーの内容は専門的であり、医学・生物分野の研究に携わる方を対象としております。

 

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