【がん研先端研究セミナー(11月27日)のお知らせ「Nucleolar stress response癌分子標的治療への可能性」渡辺 健司 博士 (Danish Cancer Society Research Center, Genome Integrity Unit (Jiri Bartek lab) 博士研究員)】
2018年10月30日
がん研先端研究セミナー(11月27日)のお知らせ
演題:Nucleolar stress response癌分子標的治療への可能性
演者:渡辺 健司 博士 (Danish Cancer Society Research Center, Genome Integrity Unit (Jiri Bartek lab) 博士研究員)
抄録:核内小器官である核小体は、リボゾ−ムRNA (rRNA) を合成する場であることが知られているが、最近の研究で、細胞が紫外線や抗癌剤といった外的、または活性酸素などの内的要因によって生じるいわゆる核小体ストレスを感知し、応答するセンサーとしての機能が明らかになってきた。核小体を形成するrRNAの転写及びプロセッシングの停止やリボゾ-ムの会合阻害などが引き金となり、p53タンパク質の安定化による細胞周期停止やアポトーシス誘導が報告されている。しかしながら、細胞周期を停止した後、核小体ストレスの原因を解除する分子機構についての詳細はわかっていない。細胞内の転写産物全体のうち、RNAポリメラ-ゼI(Pol I)によって転写されるrRNAの割合は細胞内総RNA量の ~80%を占めていることから、核小体はもっとも転写活性が高い領域であり、さらには細胞増殖の活発な癌細胞では、正常細胞に比べPol I活性が高く、癌の生存に有利に働くことが知られている。このように核小体ストレスに対しては、慢性的に転写が活性化している癌細胞の方が正常細胞よりも感受性が高いと考えられるが、Pol Iの機能を阻害する化合物の抗腫瘍効果が期待されているものの十分な有効性は得られていない。このことから、癌細胞は何らかの核小体ストレスに耐えうる機構を持ち合わせていることが示唆される。本セミナーでは、我々が新規に見出した癌細胞が持つ核小体ストレスに対抗する機構を紹介する。またp53タンパク質にしばしば変異をもつ癌の治療において、核小体ストレスの応答因子が新たな分子標的となりうるか議論したい。 参考文献:Lindström MS et al., Oncogene. 2018 May;37(18):2351-2366
日時:2018年11月27日(火) 17:00〜18:00
場所:研究所1階セミナー室A
連絡先:斉藤典子 (5474)
*外部の研究者のご来聴を歓迎いたします。尚、本セミナーの内容は専門的であり、医学・生物分野の研究に携わる方を対象としております。