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実験内容イメージ

研究内容

生物は組織や個体を形成,および維持するため最少ユニットである細胞の分裂を繰り返します.その度に,ゲノム情報を担うDNAは限られた時間内に正確に複製される必要があります.しかし,DNAは巨大な分子であり,様々な構造をとり,その複製は平坦な道のりではありません.加えて,DNA複製は無限に同じクォリティで繰り返されるものではなく,細胞の老化と共にその機能不全のリスクが高まり,DNA複製機構の破綻による細胞死やゲノム情報の不安定化(突然変異や染色体異常)のリスクが高まります.このようなDNA複製を伴う遺伝情報の変化は生物集団に多様性を生む仕組みであり,生物進化の原動力ですが,ヒトを含む多細胞生物においては,組織および器官の機能不全の原因となり,がん細胞のような体内の恒常性から逸脱した細胞集団を生み出す原因にもなってしまいます.
細胞内には,DNA合成の効率・正確性が異なる多種多様なDNA合成を行う酵素(DNAポリメラーゼ)が存在し,それらのゲノム複製における役割の解明は遺伝情報の安定性を論ずる上で解明されるべき課題です.私たちは,様々な特徴をもつDNAポリメラーゼが協調し機能するメカニズムを検証し,DNA複製が潜在的に有するフレキシブルな仕組みを解明すべく,日々研究しています.そのために,DNA複製に必要な個々の生体分子の解析はもとより,情報科学的な方法を駆使し,全ゲノム領域を対象として包括的なDNA複製プロファイルを得る実験技術を適用し研究を進めています.また,がん進化のプロセスにおいて,DNA複製の機能がどのように変化しているかを明らかにし,新たな治療・予防の基盤の形成を目指します.

現在進行中のプロジェクト

  • ゲノム複製におけるDNAポリメラーゼ間の協調的な機能
  • がん細胞に頻出するDNAポリメラーゼ変異の解析
  • 転写装置がDNA複製が干渉するメカニズム
  • Oncogenic stressによって変化する複製メカニズム
DNAポリラーゼの機能のゲノム科学的解析 図:DNAポリラーゼの機能のゲノム科学的解析