NEXT-Gankenプログラムは、10年後のがん医療のあるべき姿を見据えて、2020年より5年間にわたり研究本部が推進する研究プログラムです。 これまでにないレベルで研究系と有明病院の緊密な連携を可能とする新たな研究推進体勢を構築し、次世代のがん治療戦略につながる革新的な病態解明を行い、 合わせて次世代のがん研究を担う人材育成を行います。

Directors' Message

 がん研究会は、1934年、西巣鴨の地に日本で初めてのがん専門の病院として康楽病院(現がん研有明病院)を開設しました。この立ち上げ以来、研究所と病院は、常に共にあります。現在、この有明の地に移転しても、研究系の各部門、即ち、がん研究所、がん化学療法センター、がんプレシジョン医療研究センター(CPMセンター)が、がん研有明病院との緊密な連携のもと、体系的がん研究を推進しています。21世紀に入り、分子標的薬の開発は、がんの治療を大きく変えました。さらに、がんゲノム解析技術の急速な進展により、がんゲノムのがん遺伝子、がん抑制遺伝子の変異を探索し、その変異産物に対する分子標的薬を開発するという研究開発の流れが、世界の主流となり、すでに四半世紀以上の時間が経過しています。しかし、現在も、分子標的薬が著効を示すがんは半数にも満たないという状況であり、近年は、こうした流れでの治療薬開発には限界があるのではないかと考える研究者が多くなっています。
 今後、より多くのがん患者さんに対して、より高い有効性を示すがん治療薬を届けるためには、がんの発生・進展、特に、その転移・再発の分子メカニズムを、現在よりも遥かに深いレベルで明らかにし、その分子メカニズムを理解して、新たな治療標的を同定することが求められています。がん研は、その新たながんの理解から、革新的治療薬の開発までを一体として推進できるポテンシャルを有しています。そして、その新たな流れを考えるとき、なにより重要なのは、今までとは異次元と言えるくらいの深いレベルで、ヒトがんを理解するための基礎的がん研究の推進、言い換えれば革新的なヒトがん生物学の推進が重要となります。そのため今回、各種の先進的解析技術を導入して革新的ながん基礎研究を推進する新たな研究拠点として、がん研究会研究本部内にNEXT-Gankenプログラムを立ち上げる運びとなりました。大野真司プログラムディレクターと丸山玲緒副プログラムディレクターによる指揮のもと、多くの若手研究者が参画して、これまでにない体制で研究開発を推進することとなりますので、皆様には暖かなご支援を宜しくお願いいたします。

公益財団法人がん研究会 研究本部長
野田 哲生

 国民の2人にひとりが「がん」になり、3人にひとりが「がん」で亡くなる今、がんを克服することは「夢」ではなく、必ず達成しなければならない「目標」です。がんになった人が最善の治療とケアを受けることができるための医療は発展とともに、がんにならないように、がんになっても治るようにする医学の進歩が求められています。そのためには基礎研究、橋渡し研究(translational research)、臨床研究が3つの柱となります。NEXT-Gankenは、10年後のがん医療のあるべき姿を見据えながら、5年間に亘って3つの柱を効果的に組み合わせてがん克服のために挑戦するプログラムです。
 私たちはがんを患う人から、がん組織、がん細胞、そして遺伝子までをひとつの病気として捉えていかなければなりません。病院と研究組織が緊密な連携を図るがん研究会の特徴を最大限に生かし、がんを克服する治療を生み出すとともに、次世代のがん研究を担う人材育成こそが「NEXT-Ganken」が目指す未来です。
 世界の女性を襲う悪性疾患の中で最も多いのが乳がんです。NEXT-Gankenではがん全体を対象にすることはもとよりですが、乳がんの研究にも力を入れたいと考えています。
 がん克服のための研究に情熱を傾ける若手研究者が集い、「がんを克服した」未来を実現したいと思いますので、どうかご協力・ご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。

NEXT-Gankenプログラム プログラムディレクター
がん研有明病院 副院長・乳腺センター長
大野 真司

NEXT-Ganken Program

本プログラムにおいては、転移・再発がんの病態を明らかにすることを目指します。その際にがんを単なる塊ではなく「多様な細胞の集合体」として捉えます。腫瘍を構成する細胞ひとつひとつの「個性」を理解し、さらには細胞間で交わされる「会話」やそれらが作り出す「社会」の成り立ちを理解することによって、がんの本質に迫りたいと考えています。この研究の基盤となるのが、微量で貴重ながん検体を単一細胞レベルで詳細に解析する技術であり、そのレプリカであるオルガノイドを作製する技術であります。そこで得られるデータやリソースを基盤とし、そこに臨床系・研究系の様々な専門知識や技術を有機的に組み込むことにより、がん研でしか成し得ない唯一無二の研究を遂行できると考えています。

がん細胞多様性解明PJ

ヒトがん細胞の多様な「個性」をゲノム機能の側面から1細胞レベルで明らかにすることで、がん細胞の個性と多様性のダイナミクスを考慮した新しい治療戦略の創生を目指します。

がん細胞社会成因解明PJ

「がん細胞社会」を構成する各細胞の役割と細胞間で交わされる「会話」の全貌を知ることで、がん細胞社会の成り立ちを理解し、それを制御する治療戦略の考案を目指します。

個体がん共生システム解明PJ

ヒト個体内の様々な臓器で腫瘍が環境に適応する仕組みをシステムとして理解することで、その特徴と脆弱性を理解し、革新的な治療戦略を導き出すことを目指します。

コア解析基盤PJ

各プロジェクト推進に鍵となる検体を入手し、先進的技術により網羅的情報を収集します。貴重な検体が有する情報を最大限に活用するためのプラットフォームを構築し、そこから得られるデータやリソースを共有します。

先進バイオ技術開発PJ

国内の大学や研究機関と協力し、がん患者由来試料を対象とした先進バイオ解析技術の開発に関わる研究を行います。

Program Members

大野 真司

Program Director
Breast Surgery

丸山 玲緒

Associate Program Director
Cancer Biology / Informatics

上野 貴之

Associate Program Director
Breast Surgery

高橋 暁子

Project Leader
Cancer Biology

馬合木特 亜森

Scientist
Oncology

鈴鹿 淳

Scientist
Oncology

尾辻 和尊

Clinical Research Fellow
Breast Surgery

松永 有紀

Clinical Research Fellow
Breast Surgery

粂川 昂平

Clinical Research Fellow
Oncology / Bioinformatics

山川 薫

Technical Assistant
Molecular Biology

宮木 理帆

Technical Assistant
Bioinformatics

佐野 麻美

Administrative Assistant

岩見 真吾

Visiting Scientist
Mathematical Oncology

川上 英良

Visiting Scientist
AI Medicine

中岡 慎治

Visiting Scientist
Mathematical Oncology

高橋 洋子

Research Scholar
Breast Surgery

Advisory Board

Kornelia Polyak, M.D., Ph.D.

Adviser
Cancer Biology

Ian E. Krop, M.D., Ph.D.

Adviser
Medical Oncology

Recruit

NEXT-Gankenプログラムでは、この大きな課題に一緒に挑戦してくれる仲間を募集しています。大学院生、研究生として受け入れ可能です。見学等も随時受け付けております。ご興味のある方はぜひご連絡ください。

Contact

公益財団法人がん研究会 NEXT-Gankenプログラム

研究所
〒135-8550 東京都江東区有明3-8-31
サテライトラボ
〒135-0063 東京都江東区有明3-7-18 有明セントラルタワー6階

お問い合わせ
丸山 玲緒
reo.maruyama[at]jfcr.or.jp