がん細胞は、細胞分裂の度に染色体数が変動する「染色体不安定性」と呼ばれる性質を有していることがあり、この性質を獲得することが、がんの生物的悪性度と相関していることが知られています。しかし、その臨床的な重要性にも拘らず、染色体不安定性の発生メカニズムは、まだよく分かっていません。正確な染色体の分配を達成するための要訣はどこにあるでしょうか?そして、がん細胞では、どのプロセスに「病巣」が潜んでいるのでしょうか? 私たちは、1)染色体の構築過程、2)染色体と微小管の結合過程、3)染色体分離のタイミングを決める過程、が鍵を握っているに違いないと考え、生化学的・顕微鏡的手法を用いて調べています。
研究室では、一人一プロジェクトを担当しています。つまり、その課題の推進においては、初学者であっても主体的に研究を進め、自由な発想で、サイエンスを存分に楽しんでもらうことを大切にしています。綿密なディスカッションは勿論大切ですが、実験をやっている本人がしっかりと考えているということが、最も大事なことです。私たちの研究室では、一人一人が独立したサイエンティストです。
そして、研究は、論文を発表するまでがひと単位。実験を完了した時点は、未だ折り返し地点でしかなく、論文にまとめあげるという行程を走り抜いてこそ完了します。実験をするのは楽しく愉快ですが、論文発表までは険しい道のりとなることが多々あるので、現実的にはなかなか厳しい目標です。それでも研究室の知力体力を総動員して、全メンバーに完走してもらいたい!と意気込んでいます。
細胞分裂といった古典的なテーマであるが故に、新しいことを見つけるのが難しいのでは?と思われる方もいるでしょう。しかし、実際には、分からないこと、不思議なことばかりです。細胞分裂は、あなたの好奇心を待っています。