研究内容
腫瘍線維化メカニズムの解明
高度線維化を伴うスキルス胃がんや膵臓がんなどが“難治がん“である理由は未だ不明です。私たちは、腫瘍間質の多様性に注目しシングルセル解析と疾患モデルマウスを用いた機能解析の融合により、腫瘍組織の線維化シグナルネットワークの全貌解明に挑みます。得られた網羅的データを基盤として、癌以外の組織線維化に適応可能なシグナルの創出、さらに線維化組織から高頻度に起こる発癌のメカニズム解明に繋がる事が期待されます。
腫瘍間質(ストローマ)を標的としたがん治療戦略・バイオマーカーの確立
免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療の新しい柱として期待されていますが、未だ治療が有効な患者さんは限られています。そのため、免疫療法の治療効果を飛躍的に高める治療戦略の確立が喫緊の課題と考えられます。これまで私たちは、高度な線維化を示す腫瘍に対してストローマル・リプログラミング(免疫賦活化)をおこない、免疫チェックポイント阻害剤を併用した複合がん免疫療法が有効であることを明らかにしてきました。現在は、この併用療法の効果が期待できる患者さんを選び出すバイオマーカーを同定するための研究をおこなっています。
がん発生期における組織幹細胞とがん幹細胞に関する研究
がんの起源(ルーツ)となる細胞は臓器や組織型によって異なるため、結果的にがん細胞の多様性が生み出されます。そのため、がんに対する治療方法は複雑となり、画一的な治療では十分な効果を得ることは出来ません。がんのルーツを探るためには、組織の維持・再生に重要な役割を持つ組織幹細胞や前駆細胞が、がん発生期にどのような挙動を示すか理解しなければなりません。そのため、私たちは組織幹細胞の分化系譜を追跡可能なマウスモデルを用いて、発がんプロセスを可視化し組織レベルで初期に起こる変化を明らかにするための研究をおこなっています。
多臓器連関が引き起こすがん進展機序の解明
がん発生から転移形成までのプロセスにおいて、がんの母地となる臓器だけでなく様々な臓器や細胞が相互に作用することで、がん細胞は自らにとって有利な環境を作ります。私たちは臓器を超えたコミュニケーションによって起こる微小な変化が、がん進展へ与える影響を明らかにし、がんに有利な環境形成を阻害することで遠隔転移を抑えることを目指します。