p16INK4a-RB経路

増殖能を有する正常な細胞においては通常p16INK4a遺伝子の発現は極めて低く、p16INK4aはほとんど機能していません。しかし、正常細胞が分裂寿命に達したり、発癌ストレスが生じた場合には、p16INK4a遺伝子の発現が著しく上昇し、細胞老化を起こすことが明らかにされてきました (Hara et al., Mol. Cell. Biol., 1996; Serrano et al., Cell, 1997) 。これらは正常細胞が有する癌化を防ぐための自己防御機構と考えられています。 細胞老化の過程で如何にしてp16INK4a遺伝子の発現が誘導されるかについての分子メカニズムはほとんど未知でしたが、2001年に我々は転写因子であるEts1/2とその抑制因子であるId1によりp16INK4a遺伝子の発現が調節されていることを見出しました (Ohtani et al., Nature, 2001) 。 一方、これまで細胞老化の研究は主に、培養細胞を用いて行われてきましたが、最近の研究からp16INK4a遺伝子発現及びそれに伴う細胞老化の誘導は培養条件に大きく影響を受けることが明らかになってきております。 このため、培養細胞ではなく生体内でp16INK4a遺伝子の発現調節機構ならびに細胞老化の誘導機構を解析してゆくことが必要になってきています。そこで、我々はp16INK4a遺伝子の発現をマウスの生体内でリアルタイムに検出できるインビボ・イメージングシステムを開発し(Yamakoshi et al., J. Cell Biol., 2009) (図-4)、生体内におけるp16INK4aの発現誘導機構と細胞老化の役割を解析しています。このシステムを用いることで老化反応をリアルタイムに可視化することができます。現在、生体内での細胞老化の作用機序並びにその役割の解明を目指しています。

イラストレーション2


Copyrights (c) 2009 Japanese Foundation For Cancer Research. All Rights Reserved