p53- p21Waf1/Cip1/Sdi1経路

p16INK4aと同様に重要な細胞老化の誘導因子であるp21Waf1/Cip1/Sdi1は、主に、ゲノムの守護神として知られるp53によりその発現が調節されていることが様々な培養細胞を用いた実験から明らかにされています。しかし、生体内においてはp21Waf1/Cip1/Sdi1遺伝子の発現およびその役割については不明な点が多く、殆ど明らかにされていません。p21Waf1/Cip1Sdi1遺伝子はp53の主要なターゲットであるにもかかわらず、ヒトの癌において殆ど変異は認められませんし、p21Waf1/Cip1/Sdi1遺伝子欠損マウスにおいては野生型マウスと比較して腫瘍形成の増加は認められないことも知られています。 この理由として、p21Waf1/Cip1/Sdi1欠損マウスにおいては、他のp21Waf1/Cip1/Sdi1ファミリー蛋白であるp27Kip1やp57Kip2がp21Waf1/Cip1/Sdi1の機能を代償している可能性が考えられます。このため、p21Waf1/Cip1/Sdi1遺伝子を欠損させたマウスを解析するだけでは、生体内におけるp21Waf1/Cip1/Sdi1遺伝子の機能を解明することは困難であると考えられます。p21Waf1/Cip1/Sdi1ノックアウトマウスを用いた解析とあわせて、生体内でのp21Waf1/Cip1/Sdi1の発現を解析出来る新しいモデルマウスが必要です。そこで、最近、我々は生物発光を利用して、生体内におけるp21Waf1/Cip1/Sdi1遺伝子の発現動態をリアルタイムに解析できるインビボ・イメージングシステムを開発し(Ohtani et al., PNAS, 2007)、p53- p21Waf1/Cip1/Sdi1経路の発癌と個体老化における役割を解析しています(図-5)。

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