医療安全体制の監査について

最終更新日 : 2024年3月14日

2023年度 第1回

公益財団法人がん研究会有明病院 医療安全監査委員会 監査結果概要

監査日時 : 2023年11月9日(木)13:00〜16:00
委員長: 長尾能雅(医師:名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部 教授)
委員 :
大滝恭弘(弁護士:帝京大学板橋キャンパス 医療共通教育研究センター 教授)
瀧澤邦夫(医療を受ける者:がん研有明友の会理事)
参加者 :
がん研有明病院
浅野敏雄(理事長)
佐野武(病院長)
米瀬淳二(副院長/医療クオリティマネジメントセンター長/医療安全管理責任者)
山本豊 (医療安全管理部長/医療安全管理者)
三谷浩樹(頭頚部長/医療機器安全管理責任者)
山口正和(薬剤部長/医薬品安全管理責任者)
寺内隆司(画像診断センター長/医療放射線安全管理責任者)
中山章子(医療安全管理部 看護師長/医療安全管理者)
鈴木美智子(医療安全管理部 副看護師長/医療安全管理者)
根本真記(医療安全管理部 主任薬剤師/医療安全管理者)
山本晃史(院長補佐/医療クオリティマネジメントセンター事務室室長代行)
山口智美(医療クオリティマネジメントセンター事務室/幹事)
根本さやか(医療クオリティマネジメントセンター事務室/幹事)
青木智恵子(医療クオリティマネジメントセンター事務室/書記)

1.委員長の選任

長尾委員の立候補について、満場一致で委員長に選任された。

2.監査事項

報告資料に基づき当院の医療安全管理体制について7つの議題の報告と、3部署の院内巡視を行った。

◆報告資料
  • 医療安全管理体制について
  • インシデント・アクシデントレポート報告数の分析
  • 医療機器安全管理体制について
  • 医薬品安全管理体制について
  • 医療放射線安全管理体制について
  • 病院機能評価中間結果における課題と取り組みについて
  • 医療安全相互ラウンド実施報告
◆院内巡視 

・ATC(外来化学療法室)
・内視鏡室
・薬剤部

3.評価と助言・提言

総評:

特定機能病院として求められている基本的な安全のガバナンス体制、要件を満たしている事を確認した。特に医療放射線安全管理に関しては特筆に値する先駆的な取り組みが見て取れた。それらを踏まえた上で、さらに改善が望まれる事項として、以下6点を指摘する。

  1. インシデント報告について:
    医師、看護師以外の職種からの報告数が、総インシデント報告数の20%以上となることを目標とされたい。それにより、院内全体の報告文化がさらに活性化され、多角的かつ有機的な改善活動に繋がることが期待できる。
  2. 重大事故発生時の対応について:
    事故発生から2年後に死亡した事例において、不可逆的な後遺障害が残る事が予測され、事故性の可能性を否定できないと判断されたのであれば、死亡時ではなく、死亡前から外部委員を含めた調査会を開催するという選択もあった。難しい判断だとは思うが、今後検討されたい。
  3. 医療機器について:
    医療機器と医療材料の一元管理体制の構築や、取り扱う物品範囲の明確化等について積極的に検討されたい。また、臨床工学技士の安全部門への専従配置は先駆的な取り組みといえる。今後、より効果的に機能することを期待する。
  4. 患者誤認防止について:
    現場において、患者誤認防止手順が正確に理解されていない。患者側からの2識別子の提示と医療側の手元にある2識別子情報の突合をしてから医療行為に入る、という大原則の理解が全体に弱く、患者が自分の名前を名乗れる場合と名乗れない場合、患者が医療者の前にいる場面といない場面での手順の違い等について、正確に説明できる職員が少なかった。
  5. 口頭指示の受け答えについて:
    受信者がメモに書いたものを読み上げ(read back)、発信者から承認を得る、という手順となっているが、メモ用紙の様式が統一されていない為、伝達内容にバラつきが生じるリスクがある。メモ用紙の様式を統一し、6Rを順に点検しながら記載し、読み上げる手順にした方が良い。また、メモに書けない場面での手順(check back・復唱)について、職員に浸透していない為、系統立てて教育する必要がある。
  6. ハイリスク薬について:
    ハイリスク薬のリストが電子カルテに掲載されているが、ハイリスク薬の概念等について、職員に正しく浸透していない。例えば、薬剤部がハイリスク薬に関して行っている取り組みを全職員へ周知するなどすれば、ハイリスク薬の取り扱いの重要性の理解が進むのではないか。また、ハイリスク薬の中でも特に重要な「ハイアラートドラッグ」を別途選定し、対策する段階にきていると考えられる。

次回監査に向けて:

  • 本提言を全職員に周知し、改善目標を共有されたい。
  • 次回監査時、「病院の年度目標とQ.I管理体制の連動」、「院内におけるインフォームドコンセント管理体制」等について、概説を頂きたい。

以上

2023年度 第2回

がん研究会有明病院 2023 年度 第 2 回医療安全監査委員会 監査結果概要

監査日時 : 2024年2月15日(木)11:55〜15:00
委員長: 長尾 能雅 (医師:名古屋大学医学部附属病院 患者安全推進部 教授)
委員 :
大滝 恭弘 (弁護士:帝京大学板橋キャンパス 医療共通教育研究センター教授)
瀧澤邦夫(医療を受ける者:がん研有明友の会理事)
参加者 :
がん研有明病院
浅野敏雄(理事長)
佐野武(病院長)
米瀬淳二(副院長/医療クオリティマネジメントセンター長/医療安全管理責任者)
山本豊 (医療安全管理部長 医療安全管理者)
笹平 直樹 (院長補佐/インフォームドコンセント管理責者/肝胆膵内科部長)
山口正和 (薬剤部/医薬品安全管理責任者)
望月 俊明 (医療品質改善部長/集中治療部副部長/DMAT チームリーダー)
中山章子(医療安全管理部 看護師長/医療安全管理者)
鈴木美智子(医療安全管理部 副看護師長/医療安全管理者)
根本真記(医療安全管理部 主任薬剤師 医療安全管理者)
馬場 慎也 (チーフコンプライアンスオフィサー/コンプライアンス室長/法務知財室長)
宮北 康二 (脳腫瘍科部長/IC 委員会副委員長)
川崎 健一 (A I 医療推進室長)
山本晃史(院長補佐/医療クオリティマネジメントセンター事務室室長)
根本さやか(医療クオリティマネジメントセンター事務室/幹事)
山口 智美 (医療クオリティマネジメントセンター事務室/幹事/書記)

1.監査事項

報告資料に基づき当院の医療安全管理体制について 5 つの議題の報告と、2 部署の院内巡視を行った。

◆報告資料

医療安全管理体制と取り組みの現状について

  • インシデント・アクシデントレポート報告数の分析
  • 手術室の麻薬管理について
  • 院内におけるインフォームドコンセントの実際と管理
  • B 型肝炎ウイルス再活性化防止管理体制
  • 病院の年度目標と Q.I 管理体制の連動現状と課題
◆院内巡視
  • 9 階東病棟
  • 外来

2.評価と助言・提言

総評:

日本におけるがん診療のリーディングホスピタルとして、適切にデータ管理を行い、病院長、医療安全管理部長共に優れたマネジメント発揮されていることを確認した。さらに、改善が望まれる事項として、以下の 5 点を指摘する。

  1. インシデント報告について:
    • 医師、看護師以外の職種からのインシデント報告率を 20%とする目標達成に向け、引き続き努力していただきたい。特にリハビリテーション部門からの報告が重要と考えられるため、検討いただきたい。
    • 紹介した酸素ボンベの残量警告デバイスの導入を検討してはどうか。
  2. 麻薬管理について
    • 受け払い手順の徹底が必要であり、担当職員を教育する際の手順の明確化と行動のモニタリングが重要である。
  3. インフォームドコンセントの実際と管理:
    • 非常に充実した管理体制が組まれていることを認識したが、IC のコンテンツのひな型にコスト(患者負担)に関する記載を含めると良い。
    • IC 文書の審査体制が 2 名の医師で短期間に行われているということであるが、審査基準に差がでないようにすることが課題となる。
    • 審査委員会の中に外部委員(非医療者)を加えることも、将来的に検討いただきたい。実際に文書を読むのは患者であるため、医療者以外でも理解できるかという視点が必要である。
    • 患者の熟慮期間(IC を受けてから患者自身が決断するまでの時間)をどの程度確保されているかを調査する段階になっている。患者の熟慮期間の視覚化ができるとよい。
  4. 院内巡視(9 階東病棟/外来部門):
    • 外来の処置時のタイムアウトについては、整備段階である。マーキング、サインイン、タイムアウト、サインアウトなど、侵襲的医療行為における安全確認については、手術室のみに留まらず、病棟や外来でも求められつつあるので、検討されたい。
    • 近年、外来での転倒転落対策、ハイリスク患者のスクリーニング・標識等が重要なテーマになっている。患者がどのエリアにいても職員側でリスクを認識できるような工夫が必要である。ストラップ装着や黄色のファイルの携帯などを検討していただきたい。
    • 外来の各所に丸椅子が設置されていた。転落防止のため、背もたれ付きの椅子にするなどの対応が望まれる。
  5. Q.I 管理体制の連動:
    • PDCA はプランに7〜8割の重きを置くことが有用とされる。単なる起承転結とならないような管理体制、助言・指導を目指していただきたい。
    • 毎年病院は上位指標を複数提示し、各部署はその中から自部署の目標を選択して1年間取り組むという QI の連動体制を展開されるとよい。
    • 当委員会での講評結果については、全職員に周知されたい。
次回の医療安全監査委員会に向けて:

医療安全監査の実施時期について、11 月、2 月ではなく、次年度は前期(4 月〜9 月)と後期(10 月〜 3 月)に分けて開催してはどうか。前期は制度や立案した年度目標、組織の全体像の概説、また特定機能病院に求められている様々な要件等について把握し、後期は、半年後の成果および各現場で発生した問題等に焦点を当てた監査になれば一貫性のある監査となると考えられる。

以上

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