がんと患者さんのゲノム情報を解読し、がんの個別化医療を実現する

ゲノムセンターでは、あらかじめ、がん患者に対する薬剤や放射線療法などの治療効果や副作用を予測し、患者一人一人に対し適切で最も有効な治療法を選択できるシステムの確立を目指しています。

注目の論文

希少な子宮・卵巣がん肉腫の
ゲノム異常パターンに基づく新しい分類法を開発

<概要>

  • 子宮および卵巣に生じるがん肉腫は、一つの腫瘍の中で、上皮性のがん腫と、非上皮性の肉腫が混在する稀ながんで、症例数は少ないものの、高い多様性を示します。治療が効きにくく、再発や転移をしやすいがんです。乳がんなどの他のがんで行われているように、生物学的な性質に基づいた病型分類を行い、病型に応じた治療を行う方法を開発する必要がありますが、症例数が少ないために、これまで病型分類を行うことができませんでした。
  • がん研究会の森誠一らの研究グループは、子宮および卵巣がん肉腫109症例の手術検体について、次世代シーケンサ(NGS)を用いた、がん肉腫では世界で最大規模の包括的オミックス解析(注1)を行いました。腫瘍のゲノム異常のパターンから、予後や臨床的特徴が大きく異なる4つの分子型に分類する方法を開発しました。
  • それぞれの分子型は特定のDNA修復機構(注2)の異常を背景として発生したものと考えられます。また各分子型の中に、免疫チェックポイント阻害薬(注3)やPARP阻害薬(注4)が効く可能性が高い症例があることが判明しました。
  • 腫瘍の中で、肉腫成分が出現する分子機構としてDNAメチル化(注5)が重要であることを見つけました。
  • これらの成果は、子宮・卵巣がん肉腫の新たな治療戦略の開発につながります。

本研究の成果は、Nature Publishing Groupオープンアクセス誌Nature Communicationsに、2019年10月31日付で公開されました。 詳細

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