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がんにおける新たな血管新生機構を発見
〜肉腫の融合遺伝子とその標的分子の機能を明らかにする〜

ASPSは希少がんである軟部肉腫の一つで、AYA世代(思春期・若年成人)に好発します。腫瘍の増殖は緩やかですが、血管形成が盛んなことから全身に転移する傾向が強く、予後不良な疾患です。がんの成長にしたがってがん巣内での血管形成が必要になってきます。正常の血管では血管内皮細胞が周皮細胞に裏打ちされた構造を取りますが、がんの新生血管ではしばしば周皮細胞が欠如し、漏れが生じやすい不完全な血管形成が生じます。一方、がんの中にはより完全な血管構造が豊富に存在するタイプがあり、これらのがんは血行性転移が頻発する傾向を示します。ASPSはAYA世代の大腿や臀部、上腕といった深部の軟部組織に発生する悪性の肉腫で、ゆっくりとした発育態度を示します。その一方で、胞巣状構造と呼ばれる腫瘍細胞と周皮細胞に富む血管組織が一体化した病巣を形成するため、比較的早期から高頻度で肺などへの転移を示します。効果的な治療薬が未開発であり、予後不良な疾患です。ASPSはその発生起源が不明な謎の多い腫瘍でもあります。

研究チームでは、ASPSの原因遺伝子であるAT3をマウス胎児の間葉系細胞に導入したモデルを作製しましたが、このモデルではASPSに見られる胞巣状構造と肺転移が忠実に再現され、ASPSの特性の理解に役立ってきました。さらに血管形成機構や融合遺伝子機能、標的遺伝子の解明への貢献が期待されていました。

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