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がんプレシジョン医療研究センター所長 メッセージ

日本のゲノム研究をリードされ、2022年の3月末まで本研究センターの所長を務められた中村祐輔先生は、20年以上前から「オーダーメイド医療」を確立する必要性を唱えてきました。本センター名の中の「がんプレシジョン医療」は、この「オーダーメイド医療」と、ほぼ同義語です。2015年にオバマ前米国大統領が一般教書演説で「Precision Medicine Initiative」を掲げてから、「プレシジョン医療」という言葉が定着しましたが、そのゴールは「the right treatments at the right time, every time, to the right person」、すなわち、「必要な治療法を、必要であればいつでも、それを必要としている人に」という意味です。
下図で示すように、「プレシジョン医療」は、がんの予防・診断から新規の免疫療法まで、広い分野を包括するものです。個々人の親から子へ受けつがれる遺伝的な特性に応じたがん予防も、超高齢社会を迎えているわが国には極めて重要です。また、最新のゲノム技術などを利用した、がんのスクリーニングや再発のモニタリングは、がんの早期発見につながり、治癒の可能性を高めます。効果のない治療法で副作用に苦しみ、その間にがんが進行することも回避しなければなりません。このために、個々のがんの特性をゲノム・エピゲノム・プロテオーム・がん微小環境解析などを通して十分に理解し、最適で副作用リスクを最小限にする治療法の選別が必要になってきます。さらに、今後の進展が期待されている免疫療法として、遺伝子異常に基づく個別化ワクチン療法や個別化T細胞療法研究などの新しい治療法開発にも取り組んでいきたいと考えております。
私も、所長として、中村祐輔前所長が、常々言われていた「研究が研究で終わるのではなく、患者さんに希望を提供し、そして、最終的にはご家族と一緒に笑顔を取り戻すことができるように努力していく」ことを忘れずに、がんプレシジョン医療の開発を進める所存です。