染色体分配の鍵を握るAurora B複合体(CPC)のユニークな分子構造を発見
〜クロマチン分子HP1をリクルートするCPCのINCENPサブユニットが持つ
「二連結合領域SSHドメイン」の発見とその重要性について〜

がん研究所実験病理部の迫洸佑特任研究員、野澤竜介研究員、広田亨部長は、古川亜矢子准教授(京都大学農学研究科 応用生命科学専攻応用生化学講座)、栗田順一特任助教(横浜市立大学生命医科学研究科 プロジェクト研究室)、西村善文名誉教授(同研究室)らとの共同研究により、以下の研究成果を得ました。

  1. INCENPは、保存性の高いHP1結合モチーフ(PVI-motif)のみならず、その下流のアミノ酸配列が関与してHP1と結合する。
  2. この結合部位はINCENPの天然変性領域中に位置しており、HP1結合時にのみβ-strand (PVI-motif)とα-helix (下流配列)に構造が変化する。
  3. この結合領域を「SSH ドメイン (Structure composed of Strand and Helix)」と名付けた。
  4. SSH ドメインは、INCENPのHP1結合能力を大幅に増強し、分裂期におけるAurora Bのキナーゼ活性と染色体分配の恒常性維持に必須である。

なお、がん細胞においてはHP1結合低下に伴うCPCの機能低下が起こっており(Abe et al., 2016)、その分子機能を担う結合構造基盤が今回明らかになったことから、今後はCPCの分子制御のさらなる理解や創薬研究にも繋がると期待されます。本研究成果は、2024年5月23日付でJournal of Cell Biology誌にオンライン掲載されました。

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