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【ニュースリリース】子宮内膜がん・前がん病変における早期の変化を解明 〜鍵となる遺伝子変異とDNAメチル化異常を発見〜

2024年05月27日

【ポイント】
・正常子宮内膜からから子宮内膜がんへ変化する過程で、子宮内膜増殖症(以後、増殖症と略)のうち、異型なし増殖症と異型あり増殖症への進行に際して、がん化抑制遺伝子PTENの変異と特有なDNAメチル化異常が生じていることを明らかにしました。
・区別が難しいと言われていた異型なし増殖症と異型あり増殖症病理診断を補完する新たな検査法を開発することが可能になり、患者さんのその後の経過や生活の質を改善することが期待されます。
・異型なし増殖症から異型あり増殖症への進行には、FOXA2, SOX17, HAND2といった正常子宮内膜の増殖や分化に重要な転写因子が重要な働きを示すことが分かりました。

【概要】
 子宮内膜増殖症は子宮内膜がんの前がん病変です。組織学的に、正常な細胞が増殖している子宮内膜増殖症(異型なし増殖症)と、がん細胞に近い異常な細胞が増殖している子宮内膜増殖症(異型あり増殖症)の2つに分けられています。子宮内膜がんの患者さんの約半数で、異型なし増殖症、異型あり増殖症を経て子宮内膜がんに至ったものと考えられています(図1)。
公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクトの森誠一プロジェクトリーダーを中心とする研究グループは、異型なし増殖症、異型あり増殖症について、病変部の遺伝子変異とDNAメチル化状態を精査し、それぞれの間でどのような変化が生じているのか調べました。 
異型なし増殖症から異型あり増殖症に進行する際に生じる遺伝子変異として、子宮内膜がんのがん化に重要なPTENというがん化抑制遺伝子の変異が見つかりました(図1)。 
DNAメチル化異常を調べたところ、異型なし増殖症から異型あり増殖症に進展する際に、ゲノム上で遺伝子発現を調節する領域の相当な部分でDNAメチル化が亢進していることが分かりました(図1)。異型なし増殖症と異型あり増殖症を区別する病理診断は専門家でも難しいのですが、DNAメチル化の程度が大きく異なっていた領域を用いることで、8割を超える精度で正しく弁別することができました。病理診断を補完する新たな検査法の開発につながる発見です。
 さらに詳細な情報解析により、増殖や分化に関わるような転写因子の働きが、異型あり増殖症に進行する際に大きく変化していることが分かりました。例えば子宮内膜細胞を増殖させる作用を有するFOXA2やSOX17の働きが活性化し、細胞の増殖を止めて分化させる作用のあるHAND2の働きが不活性化していました(図1)。
 本研究により、異型なし増殖症と異型あり増殖症の遺伝子変異・DNAメチル化異常の特徴が判明し新たな診断法開発の糸口となっただけでなく、異型なし増殖症から異型あり増殖症への進行過程における鍵となる分子機構の一端が明らかになりました。
 本研究の成果は2024年5月11日にThe Journal of Pathologyにおいて、印刷版に先立ちオンライン版として公開されました。


図1:本研究の概要 正常子宮内膜→異型なし増殖症→異型あり増殖症→子宮内膜がん というがん化の過程において、特に異型なし増殖症から異型あり増殖症に病気が進行する際に生じている遺伝子変異とDNAメチル化異常を調べ、種々の変化が起こっていることを見出しました。
  • 図1(画像をクリックすると拡大します)
    図1(画像をクリックすると拡大します)

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