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第75回がん研先端研究セミナー(8月4日)のお知らせ

2025年07月08日

演題:RNA脱メチル化酵素の分子・細胞レベルの機能解明

演者:田中 和無爲

  (京都大学化学研究所生体機能設計化学領域 博士後期課程3年)

 

抄録:

RNAの分子レベルの変化である転写後修飾は、遺伝子発現を変化させることで、代謝や細胞内シグナル経路を変化させ、ひいては個体の健康にも影響する。真核生物のmRNAにおいて最も頻繁に見られる修飾塩基にN6-メチルアデノシン(m6A)が存在し、生体内のm6A量は動的かつ緻密に制御されている。m6A量を制御する因子に、m6A脱メチル化酵素FTO(Fat mass and obesity associated protein)があり、FTOの発現量異常はm6A量に直接影響することから、がんや神経変性疾患など、種々の疾患と関連することが報告されている。

私はこれまで新たなFTO阻害剤スクリーニング系を確立することによって、新規骨格を有するFTO選択的な阻害剤を見出した(Tanaka et al., Chem. Commun., 2023)。この阻害剤は、反応液を還元環境に保つために加えられていたL-アスコルビン酸濃度に依存して阻害活性が低下するという、これまでの報告にない特徴を持つことを明らかにした。これらの結果から、得られた化合物が完全新規の阻害様式によってFTOを阻害することが示唆されたため、その詳細を検討した。

また、この阻害剤の活性に影響を与えたL-アスコルビン酸は、FTOの活性に必要不可欠であることを見出した。しかし、培養細胞の培地の多くにはL-アスコルビン酸が添加されていないことや、FTOをノックアウトしても培養細胞内のm6A量が変動しないという報告から、培養細胞内のFTOは活性を持たないことが考えられた。このことを踏まえ、培地にL-アスコルビン酸を添加することで、細胞内m6A量が減少することを明らかにした。

本セミナーでは、FTOの分子・細胞レベルでの機能解明に向けて取り組んだ内容について発表するとともに、今後の展開について議論したい。

 

Tanaka et al., Cheml. Commun., 59 (72), 10802-10812 (2023)

 

日 時:2025年8月4日(月)16:00 〜 17:00

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