がん研セミナー(5月19日)のお知らせ
2026年02月09日
演題:ミトコンドリア伝播と抗腫瘍免疫応答
演者:冨樫 庸介 博士
(岡山大学学術研究院医歯薬学域腫瘍微小環境学分野/岡山大学病院・教授)
抄録:
がん細胞は免疫応答から逃避するために免疫抑制的な腫瘍微小環境(TME)を構築している。特に腫瘍浸潤リンパ球(TIL)にはミトコンドリア障害が存在するとされている。我々は、ヒト臨床検体由来のTILと同一患者由来がん細胞で共有されるmtDNA変異を同定した。その原因として、がん細胞由来ミトコンドリアが、TILへと伝播しTILのmtDNAをがん細胞由来の変異型mtDNAに置換させる現象を発見した。がん細胞由来の変異型mtDNAを獲得したT細胞は代謝異常や細胞老化を呈し、エフェクター機能およびメモリー形成が障害され、抗腫瘍免疫応答が低下した(Nature 2025)。さらにミトコンドリア伝播を評価できるマウスモデルで、シングルセルシーケンスを行ったところ、骨髄系細胞にも高頻度で伝播が観察された。野生型伝播を受けた骨髄系細胞は代謝フィットネスが亢進し、むしろ免疫応答を高めるようなMHC-II高発現の成熟したマクロファージへと分化した。一方で、変異型伝播を受けた場合には分化はするが未熟なままの状態で、低酸素応答・VEGFA産生を介して腫瘍増殖・転移を促すようなマクロファージになってしまった(投稿中)。このようなミトコンドリア伝播が様々な抗腫瘍免疫応答や病態に影響している可能性がある。
日 時:2026年 5月 19日(火) 17:00〜18:00
場 所:吉田記念講堂







