部門紹介

ご挨拶

最終更新日 : 2017年10月4日

部長 片山量平がんの治療法の進歩に伴い、これまで主流だった手術療法、放射線療法、細胞障害性の化学療法に加え、分子標的薬や免疫療法など様々な治療が用いられるようになり、これまで極めて予後不良であった進行がんの生存期間が、著しく改善しつつあります。

殺細胞性の抗がん剤は、がんの無秩序な増殖能を抑えることを目標として作られてきました。そのために、これまでの抗がん剤は強い抗腫瘍効果を示す一方でがん細胞に対する特異性が低く、増殖期にある正常細胞をも障害してしまう危険性(副作用)を回避することが困難でした。そこで、複数の抗がん剤を併用する多剤併用療法により、副作用の出方を抑えてより高い腫瘍縮小効果を得るための試みも多数なされてきています。

また、近年のがんの基礎研究の発展に伴い、がん細胞の特徴・特性を規定する分子機構が明らかにされ、それらの機構に関与する標的分子やパスウェイを同定し、その機能を制御することによってがんの根治に結びつけようとする分子標的治療の研究が盛んに行われてきました。その研究成果により、グリベック、イレッサ、クリゾチニブをはじめとして、多くの分子標的治療薬が開発され、その一部は対応する分子標的を有するがんに対しての治療薬として承認され、実臨床においても高い治療効果を示しています。この分子標的治療薬は、効果が認められる患者さんとそうでない患者さんを、遺伝子検査などにより、あらかじめ選択することで患者さん個人ごとに最適な治療法を選択することが可能となってきています。しかし、がん分子標的薬により、どれほど高い治療効果が得られた場合でも、多くのケースで1年から数年すると、がんが薬剤に対する耐性を獲得し再発してしまうことが大きな問題となっており、耐性のメカニズムを明らかにし、耐性を克服できる治療薬や治療方法の開発が盛んに進められています。

さらに近年では、免疫チェックポイント阻害薬を中心に、がん免疫療法も様々ながん腫において期待されており、一部の薬剤は既に承認され実臨床で使用されています。現時点ではどのような患者さんに高い治療効果が得られるのか(バイオマーカー)、についてはっきりはしていませんが、一定の割合で高い治療効果(比較的長期間の腫瘍増殖抑制効果)が認められており、今後バイオマーカーとなりうる因子の発見に加え、より効果的ながん免疫療法の発展のための基礎研究が重要です。

がん化学療法センター基礎研究部では、創設以来、がん化学療法に関する基礎研究と新しい抗がん剤の開発研究という大学ではあまり行なわれないユニークな研究が進められてきました。これまでに民間企業との共同研究の成果として、サンラビン、ミフロール、THP-アドリアマイシンなどの抗がん剤を開発しています。また、耐性化したがんに有効な抗がん剤としてME-2303、 MX-2、 CPT-11、リゾキシンなどを研究し,その一部は現在臨床のフェーズ試験に入っています。また、抗がん剤耐性を克服するMS-209などの薬剤研究も進めてきました。がんの基礎研究としては、がんの分子標的治療薬開発の際に標的となる新規分子の同定を目指し、様々な研究を展開してきました。私自身は、先々代の部長であられた故鶴尾隆博士、先代の部長であり、現在がん化学療法センター所長の藤田直也博士の後任として、2017年に部長を拝命いたしましたが、これまでに基礎研究部で続けられていた研究に、臨床検体からの培養細胞株とマウスゼノグラフトモデルの樹立を通じ、私自身が力を入れて組んできた「がん分子標的治療薬耐性機構についての基礎研究と耐性克服法の探索研究」、「がんの新規分子標的探索研究」、「がん幹細胞研究」等を融合させることで、臨床への応用を念頭に置いた基礎研究に力を注ぎ更なる発展を目指していきたいと考えています。

特にがん研独自の分子標的治療法開発、あるいはその開発に関わるような基礎的な分子機構解明や標的分子の発見を行なうことを最優先で進めていきます。また、がんの転移を抑制する薬剤に関しては未だ有効な薬剤が臨床応用されていないのが現実であり、この手術不能な転移がんを標的にした薬剤開発を、引き続き藤田所長らとともに進めていくことで、今後のがん化学療法に新たな展開・方向性を示す試みを続けていきたいと考えております。

臨床の現場での治療の上での課題・疑問を臨床検体を用いて基礎的に解明していくとともに、基礎研究から開発・応用研究をシームレスに行なえるといったがん化学療法センター特有なユニークな研究環境を維持し、これからますます増加すると考えられるがんの患者さんに、いち早く有効な新しい抗がん剤を開発し届けるよう努力していきます。

2017年10月4日
部長 片山量平

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