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研究内容

研究内容目次

  1. がん微小環境選択的な分子標的治療法の研究
  2. 遺伝子発現解析を基盤とした分子標的治療のゲノミクス研究

がん微小環境選択的な分子標的治療法の研究

固形がんでは、血管形成不全のため、正常な組織にはみられない微小環境(低酸素やグルコース飢餓状態などのストレス環境)が存在します。このような微小環境は、がんの悪性化や薬剤耐性の原因となることが知られています。一方で、がんに特徴的であるため、治療のための良い標的として利用できると考えられています。実際、微小環境の特徴を積極的に利用しようという試みが活発に行われるようになってきています。例えば、血管形成に重要な内皮細胞や周皮細胞を標的とした血管新生阻害剤は、微小環境の特徴を利用した治療法の成功例であり、今では分子標的薬開発研究の主流の一つとなっています。

こうした中、私たちは、がん細胞自体を攻撃するため、低酸素やグルコース飢餓といった微小環境ストレスに対するがん細胞の適応応答(ストレス応答)に着目して研究を進めています。特に、小胞体に異常タンパク質が蓄積することによって活性化するunfolded protein response(UPR)に着目し研究を行っています。このUPRが活性化すると、がん細胞は低酸素やグルコース飢餓といった微小環境ストレス下でも生存できるようになります。それだけではなく、UPRの活性化したがん細胞は、既存の多くの抗がん剤に耐性化してしまうことも明らかになっています。そのため、微小環境ストレス下にあるがん細胞のUPRを制御することによって、治療効果が得られるのみならず、既存の抗がん剤の効果が増強されることも期待できます。

私たちは、UPRを標的とした分子標的治療法の開発に向けて、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を基盤に、UPRに伴って誘導される遺伝子群の同定とその機能解析を行っています。また、UPRの制御機構の解明、UPR阻害剤の探索とその作用機序解析の研究などを行っています。すでにversipelostatinなどの有望なUPR阻害剤を見出すことにも成功しており、こうした化合物については、臨床開発に向けた研究にも取り組んでいます。

微小環境に対するがん細胞の適応応答を標的化

微小環境に対するがん細胞の適応応答を標的化
血管から離れたがん細胞は、低酸素やグルコース飢餓などの微小環境ストレスにさらされる。こうした微小環境ストレス下では、がん細胞のUPRを活性化し、小胞体分子シャペロンGRP78やGRP94の誘導を促す。このUPRの活性化は、ストレス環境下でのがん細胞の生存に重要な役割を果たしている。抗腫瘍活性を有するversipelostatin(VST)はUPR抑制を指標に単離された。

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