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研究内容

最終更新日 : 2015年5月14日

目次

  1. モデル動物で発がんの過程を解明する(ホメオドメイン蛋白の機能解析)
  2. 白血病関連遺伝子Tribl, Sytl1の解析
  3. 骨軟部腫瘍におけるキメラ遺伝子と動物モデル

白血病関連遺伝子Trib1とSytl1の解析

ホメオドメイン遺伝子が引き起こす白血病の研究を通して、新たな疾患関連遺伝子が浮かび上がって来ました。現在、発がん研究部ではTrib1とSytl1に焦点を当てた研究を行っています。

Trib1はpseudokinase(偽キナーゼ)という蛋白をコードする遺伝子で、進化の過程で古くから保存されているtribblesファミリーに属します。私たちは、白血病発症においてHoxa9/Meis1と協調作用を示す遺伝子としてTrib1を発見しました。Trib1は、それ自身が白血病のがん遺伝子として働くとともに、Hoxa9/Meis1白血病の発症速度を著しく早める能力を示しました。キナーゼという酵素は、蛋白質に含まれるチロシンやセリン、スレオニンというアミノ酸のリン酸化を促す働きがあり、細胞内のシグナル伝達に不可欠です。偽キナーゼは、キナーゼと一次構造が良く似ていますが、肝腎のリン酸化機能を欠如しており、機能に謎が多い蛋白です。

Trib1は、C/EBPαという血液細胞の分化や増殖制御に重要な転写制御因子のユビキチン化を促進する機能があることがわかってきました。一方で、Trib1はRAS/MAPKに働きかけて、そのシグナル伝達を亢進させる機能も持っています。C/EBPαとRAS/MAPK経路どちらもが、白血病細胞の発生や維持に重要なことが古くから知られていることから、Trib1がこの2方向に同時に働きかけることに、その強力な発がん作用が秘められていることが示唆されます(図1)。

図1 Trib1の機能

白血病細胞は、生体内では骨髄の造血ニッチに存在して初めて生存・増殖することが可能で、さらにニッチ内での間質細胞との相互作用が白血病細胞の進展や治療抵抗性と深く関わっています。したがって、白血病の根治を目指すためには、白血病細胞と間質細胞との相互作用の詳細を解き明かす必要があります。

Sytl1はMeis1の標的遺伝子として同定されました。Sytl1は、synaptotagmin-like遺伝子ファミリーに属し、細胞内小胞や膜結合型受容体の細胞内輸送を促進する分子です。私たちの研究から、Sytl1が白血病細胞内の受容体の膜への輸送を促進することによって、白血病がサイトカインを分泌する間質細胞へより有利な位置を占めるようにしている可能性が浮かび上がりました。その結果、Sytl1を発現している白血病細胞は造血ニッチに定着し、生体内で確固たる立場を築くことが可能になるわけです。

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