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研究内容

最終更新日 : 2015年5月14日

目次

  1. モデル動物で発がんの過程を解明する(ホメオドメイン蛋白の機能解析)
  2. 白血病関連遺伝子Tribl, Sytl1の解析
  3. 骨軟部腫瘍におけるキメラ遺伝子と動物モデル

骨軟部腫瘍におけるキメラ遺伝子と動物モデル

骨軟部肉腫は、骨や軟骨、筋肉、血管など支持組織または結合組織と呼ばれる組織から発生するがんで、ヒトのがん全体の1%程度を占める稀ながん(稀少がん)です。骨軟部肉腫にはキメラ遺伝子(融合遺伝子)という、本来2つの遺伝子が1つに融合した遺伝子をもつものが多いことが特徴です。キメラ遺伝子は、染色体が相互転座した結果生じるもので、ヒトのがんでは、肉腫の他に血液腫瘍や肺がん等で存在し、がんの発生原因となる重要な遺伝子異常であることがわかっています。興味深いことに、肉腫におけるキメラ遺伝子は骨軟部肉腫の性質(組織型)によって全て異なります。

ところで、多段階を経て起こるがん化ですが、最初にがんが発生する場所(細胞)を発生母地と呼びます。多くのがん(胃がん、大腸がん、乳がんや白血病など)では発生母地は明らかですが、骨軟部肉腫の中にはがんになる元の細胞が何だったのか、手掛かりのないものが少なからず存在します。発生母地が特定できれば、そのがんの性質に対する理解が深まり、新たな治療法のヒントにつながるはずです。

発生母地のわからない骨軟部腫瘍の1つにユーイング肉腫がありました。主に小児や若年者に骨に発症する悪性腫瘍ですが、長い間発生母地の細胞が特定できていないがんでした。このため、ユーイング肉腫を発生する動物モデルを作ることは、これまで非常に困難でした。遺伝子操作技術を用いてがんの動物モデルを作る場合、発生母地の細胞にキメラ遺伝子等の原因遺伝子を導入し、発現させることが一般的です。原因遺伝子は、がんの種類によって異なるため、遺伝子の導入・発現は正しい発生母地で行われる必要があり、不適切な細胞にがん遺伝子が発現してもがんの発生は通常みられません。ところが、ユーイング肉腫の場合、この母地細胞の手がかりが不明でした。

私たちは、ユーイング肉腫が小児や若者の骨に出来るという事実から、母地細胞が発生期の骨や軟骨に関係するのではないかと考えました。そこで、マウスの胎児からマイクロダイセクションという手法で取った骨軟骨前駆細胞に、ユーイング肉腫のキメラ遺伝子であるEWS-FLI1をレトロウィルスベクターで導入した後、マウスに移植することで、ヒトのユーイング肉腫に良く似たがんを発症させた動物モデルを作ることに成功しました。この動物モデルによって、ユーイング肉腫の発生初期から転移に至るまでの病態変化を遺伝子レベルで解明することが可能になりました。

この成功を受けて、発がん研究部では、さらに滑膜肉腫や胞巣状軟部肉腫の新たなモデルを作製し、新規治療薬の評価に役立てたいと考えています。

ユーイング肉腫モデルの作製

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