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研究内容

最終更新日 : 2017年10月5日

目次

  1. がん分子標的薬耐性機構の解明と耐性克服薬の探索
  2. がん転移分子機構の解明とそれに基づく創薬
  3. がん幹細胞(Cancer stem cell)の機能解析と分子標的の同定
  4. 生存増殖シグナル伝達系の解析と分子標的の探索

がん分子標的治療薬への耐性化機構の解明と克服薬の探索

がんの薬物療法は近年になりよりがん特異的な分子標的治療薬の登場により大きな変化を遂げてきた。分子標的薬は、対象となる標的を有するがんに対しては非常に高い効果を示す一方で、治療を続けていくうちに耐性腫瘍が生じることが問題となっており、その耐性機構、耐性克服のための治療法開発が強く望まれている。我々は、近年、分子標的薬の登場により治療が大きく進歩しつつある肺がんを中心にこの分子標的薬耐性研究を進めている。

肺がんはがんの中で最も死亡者が多く,年間7万人以上の方が肺がんで命を落とされており、より効果的な治療法の開発が切望されている。進行肺がんでは,外科手術による治療が困難な場合が多く,薬物療法や放射線療法が中心となっている。薬物療法としては近年までは細胞障害性の抗がん剤による化学療法が中心であった、この約10年の間にEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(GefitinibやErlotinibなど)の登場と、EGFR活性化型変異の発見を契機に,分子標的薬の有用性が高まってきた。さらに2007年には、 強力ながん遺伝子としてALK融合遺伝子が発見され、現在ではALKチロシンキナーゼ阻害薬(CrizotinibやAlectinib)が承認され使用されている。その後、 RET,ROS1,NTRK1と様々な融合遺伝子陽性肺がんが見つかっており、これらに対しては各種分子標的薬の臨床試験が現在行われている。

EGFR変異やALK融合遺伝子のように標的となる遺伝子異常がある症例では対応する分子標的治療薬が顕著な腫瘍縮小効果を示すことが多いが、治療を始めてから半年〜数年程度するとほとんどのケースにおいて治療抵抗性を獲得した耐性腫瘍が出現することが現在の大きな問題となっており、耐性の分子機構解明と耐性克服法の発見が、より効果的な薬物療法の発展にとって重要である。そこで我々は、(1)培養細胞を用いて分子標的薬耐性細胞を作成し、その耐性機構について検討すること、(2)マウスに腫瘍細胞を移植したXenograftモデルを用いて、耐性腫瘍の作成および耐性機構の検索、耐性克服薬の効果の検討し、(3)実際に分子標的薬での治療を受けた患者様由来の検体(耐性前後の検体)を用いて耐性機構を検索する、などの方法を駆使し研究を進めている。

これまでに、ALK融合遺伝子陽性肺がんに対する第2世代ALK阻害薬Alectinibに対する耐性を引き起こす変異を新たに同定し、その変異がAlectinib耐性変異を引き起こすメカニズムを立体構造シミュレーションにより明らかにし、さらにその耐性に対してCeritinibが有効であることを見出し報告してきた。また、ALK陽性肺がんにおけるCeritinib耐性機構の同定のために米国マサチューセッツ総合病院との共同研究お行い、世界に先駆けて複数の耐性機構の同定に成功している。

ALK融合遺伝子陽性肺がんに加えて、ROS1融合遺伝子陽性肺がんに対するROS1/ALK阻害薬Crizotinibに対する耐性を引き起こす変異を新たに同定し、さらにそれらの耐性変異に対して現在米国で甲状腺がんに承認されており、本邦においても臨床試験が進行中のCabozantinibが有効であることを発見している。

以上の様に、我々はin vitro,マウスモデル,臨床検体の解析を駆使し、耐性機構の同定と耐性克服法の発見をめざして研究を行い、より効果的な分子標的療法の開発につなげていきたいと考えている。

Recent publications:

1: Katayama R, Lovly CM, Shaw AT. Therapeutic Targeting of Anaplastic Lymphoma Kinase in Lung Cancer: A Paradigm for Precision Cancer Medicine. Clin Cancer Res. in press, 2015

2: Katayama R, Kobayashi Y, Friboulet L, Lockerman EL, Koike S, Shaw AT, Engelman JA, Fujita N. Cabozantinib overcomes crizotinib resistance in ROS1 fusion-positive cancer. Clin Cancer Res. 2015 Jan 1;21(1):166-74.

3: Aoyama A, Katayama R, Oh-Hara T, Sato S, Okuno Y, Fujita N. Tivantinib (ARQ 197) exhibits antitumor activity by directly interacting with tubulin and overcomes ABC transporter-mediated drug resistance. Mol Cancer Ther. 2014 Dec;13(12):2978-90.

4: Katayama R, Friboulet L, Koike S, Lockerman EL, Khan TM, Gainor JF, Iafrate AJ, Takeuchi K, Taiji M, Okuno Y, Fujita N, Engelman JA, Shaw AT. Two novel ALK mutations mediate acquired resistance to the next-generation ALK inhibitor alectinib. Clin Cancer Res. 2014 Nov 15;20(22):5686-96.

5: Friboulet L, Li N, Katayama R, Lee CC, Gainor JF, Crystal AS, Michellys PY, Awad MM, Yanagitani N, Kim S, Pferdekamper AC, Li J, Kasibhatla S, Sun F, Sun X, Hua S, McNamara P, Mahmood S, Lockerman EL, Fujita N, Nishio M, Harris JL, Shaw AT, Engelman JA. The ALK inhibitor ceritinib overcomes crizotinib resistance in non-small cell lung cancer. Cancer Discov. 2014 Jun;4(6):662-73.

6: Katayama R, Aoyama A, Yamori T, Qi J, Oh-hara T, Song Y, Engelman JA, Fujita N. Cytotoxic activity of tivantinib (ARQ 197) is not due solely to c-MET inhibition. Cancer Res. 2013 May 15;73(10):3087-96.

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