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研究内容

最終更新日 : 2015年5月15日

研究内容目次

  1. テロメアとがん細胞の不老不死性
  2. ポリADP-リボシル化による細胞制御
  3. がん幹細胞の治療抵抗性と標的分子
  4. がんと脂質代謝
  5. 内分泌療法再燃がんの克服

がんと脂質代謝

がん細胞では不思議なことに、外来性脂質の多寡にかかわらず、脂肪酸の新規合成が盛んです。脂肪酸合成酵素(fatty acid synthase: FASN)をはじめ、幾つかの脂質代謝酵素ががんの発生や悪性化を促進することがすでに知られており、これらががん治療の新たな標的分子となる可能性が期待されています。但し、その作用機序は明らかでなく、また、これらの酵素を効果的に阻害する手段も未だ十分には確立されていません。私たちはこれまでに、脂肪酸代謝酵素であるアシル-CoA合成酵素(acyl-CoA synthetase: ACS)が、
(1)ミトコンドリア依存的な内因性アポトーシス経路の阻害因子として働き、がんの生存や薬剤耐性に関わること、
(2)がん微小環境ストレスのひとつである低pH下において、ミッドカインなどの液性因子の遺伝子・蛋白質発現を誘導し、これによってがん細胞の生存を促進すること
などを見出してきました。これらの成果は、脂質代謝系ががんの有望な治療標的であることを支持しています。ACSの阻害は既存の抗がん剤の治療効果を高めることも分かり、現在、その分子機序や他の酵素群(ATPクエン酸リアーゼ:ATP-citrate lyase:ACLYなど)の関与も調べています。

がん細胞では、解糖系の亢進に加えて脂肪酸の新規合成が盛んです。 がん細胞では、解糖系の亢進に加えて脂肪酸の新規合成が盛んです。
左:一般にがん細胞では、グルコース(ブドウ糖)の取り込みおよび分解(解糖)が亢進しています。これを目印としてがんを早期発見するのが、いわゆるPET診断です。右:がん細胞では脂肪酸を新しく合成する働きも盛んです。この経路に関わる一連の脂質代謝酵素群は、脂肪酸合成の亢進あるいはそれ以外のメカニズムをも介し、がん細胞の生存と増殖を促していることが判明しつつあります。

脂質代謝酵素阻害剤による制がん 脂質代謝酵素阻害剤による制がん
左:脂肪酸の活性化酵素であるアシル-CoA合成酵素(ACS)の阻害は、抗がん剤処理した脳腫瘍細胞内に発生する細胞死シグナルを増幅し、抗がん剤の効果を高めます(Cancer Sci 2009)。右:ACSの働きを活発にした脳腫瘍細胞で認められる遺伝子発現変化(Oncogene 2009)。

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