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研究内容

最終更新日 : 2015年5月15日

研究内容目次

  1. テロメアとがん細胞の不老不死性
  2. グアニン4重鎖を標的としたがん創薬
  3. ポリADP-リボシル化酵素タンキラーゼの機能と阻害剤
  4. がん幹細胞の治療抵抗性と攻略因子

がん幹細胞の治療抵抗性と攻略因子

がんの根治を阻む「がん幹細胞」

抗がん剤が効かない、あるいは最初は効いていたのにやがて効かなくなる現象を薬剤耐性といいます。特に後者のパターンを獲得耐性といいますが、これは腫瘍が可塑性(plasticity)および不均一性(heterogeneity)を備えたがん細胞集団で構成されていることによるとされています。がんの可塑性および不均一性は、確率論的なクローン進化(clonal evolution)に加え、がん幹細胞(cancer stem cells)を最上位とする細胞階層性によってもたらされると考えられます。とりわけ、がん幹細胞は自己複製能・多分化能・強い造腫瘍性を保持し、薬剤耐性や高転移性を示すことから、がんの根治を阻む「女王蜂」的な存在として注目を集めています。私たちは、脳腫瘍の中でも特に難治性の高い神経膠芽腫(glioblastoma)や、近年罹患率が増加している前立腺がん、そして罹患数も死亡数も多い胃がんや大腸がんに焦点を当て、これらの根治を阻む元凶となるがん幹細胞の性質を調べています。

ケミカルバイオロジーや機能ゲノミクス探索を動員したがん幹細胞研究

プロジェクトの代表例として、グアニン4重鎖と呼ばれるDNAの特殊構造を安定化する化合物(G4リガンド)が神経膠芽腫のがん幹細胞を効果的に攻撃することを見出し、その作用メカニズムを詳しく調べています(→「グアニン4重鎖を標的としたがん創薬」の項目を参照して下さい)。グアニン4重鎖以外にも、がん幹細胞の生存増殖や幹細胞性(stemness)を制御する分子シグナル経路、微小環境ニッチなどが新たな制がん創薬ターゲットになると予想しています。私たちは近年、バーコードshRNAライブラリーを用いた機能ゲノミクス探索やマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析により、前立腺がん幹細胞の造腫瘍性に寄与する遺伝子としてTRIB1というシグナル伝達タンパク質を同定することに成功しました。RNA干渉を利用してTRIB1を人工的に枯渇させた前立腺がん細胞は、免疫不全マウスに移植しても腫瘍を形成できなくなっていることを見出しました。

消化器がん患者由来検体を用いた腫瘍内不均一性・がん幹細胞研究

がん幹細胞の研究を行う上で重要なポイントのひとつとして、腫瘍内で認められるがん細胞の不均一性・多様性をいかに保持した条件下で解析を行うか、といった問題が挙げられます。そういった意味では、長期間継代培養されてバイアスのかかった細胞株を用いることは、がん幹細胞の研究を進める上で最適な条件ではないかもしれません。私たちは、がん研有明病院との連携を強め、腫瘍本来の不均一性・多様性を観察の主眼とした共同研究を進めています。所内倫理審査委員会の承認のもと、胃がんもしくは大腸がん患者さん由来の検体を使わせていただきながら、シングルセル解析やセルソーティングなどの最新技術を駆使しながら、腫瘍内不均一性やがん幹細胞の可塑性に迫る研究を推進しています。そこから明らかになってきた標的候補因子群には、特異的な小分子阻害剤が存在するキナーゼなども挙がっており、これらをピンポイント攻撃する新たな薬物療法の考案を進めています。

 

 

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