がん化学療法センターについて

所長のメッセージ

最終更新日 : 2022年5月2日

ご挨拶

所長 藤田直也

所長 藤田直也

がん化学療法センターのHPをご覧いただきありがとうございます。所長の藤田直也です。

がん化学療法センターは、「腹水肝がん」を発見した偉大ながん研究者である吉田富三先生の主導により、1973年4月28日に設立されました。吉田富三先生は、腹水肝がんの研究を通じ、転移を含む全身に散らばったがんの治療には、局所療法として主に用いられる外科療法や放射線療法だけでなく、抗悪性腫瘍薬を用いた全身的な治療(がん化学療法)の重要性を早くから認識されていました。そこで、がん化学療法はがん治療の最後の砦であるとの強い信念のもとで当センターの設立に尽力されました。がん化学療法で用いられる抗悪性腫瘍薬の開発に不可欠な抗がん剤のスクリーニングを効率的に推進するためには、純粋ながん研究で世界をリードしている当時既にがん研究会にあったがん研究所とは別組織として設立することが望ましいと考え、当センターが新設されました。また、臨床部門との連携や国内の研究機関・製薬企業との協働が抗悪性腫瘍薬の開発に必須であるとの明確な将来展望の下で、基礎・臨床・制がん剤情報の三部門からなる当センターの枠組みを吉田富三先生は設定されました。この将来展望は、産官学連携による抗悪性腫瘍薬開発が強く求められている現状をも先取りしたものであり、吉田富三先生の先見の明には今更ながら驚かされております。

当センター設立にご尽力された吉田富三先生は、当センター開所前に惜しくも急逝され、初代所長には桜井欽夫先生が着任されました。その後は菅野晴夫先生、鶴尾隆先生、吉田光昭先生が歴代所長として当センターの活性化・拡充に尽力されてきました。現在、当センター設立当初に設置された基礎研究部、臨床部、制がん剤情報室に加え、分子生物治療研究部・分子薬理部・ゲノム研究部が新設されており、基礎研究と臨床研究の橋渡し、抗悪性腫瘍薬の研究開発、そして欧米における新薬開発情報の収集と国際的な人的交流の推進に各部が大きな役割を果たしています。各部の使命や研究内容は、各部のHPからご覧いただければ幸いです。

がん特有な生命現象に関わる責任分子が次々と同定され、このような責任分子を標的にしたがん分子標的治療薬が数多く開発されています。さらに、がん自体を標的にするのではなく、腫瘍微小環境を構成している免疫細胞や間質細胞や毛管内皮細胞などを標的にした抗悪性腫瘍薬も開発されてきています。しかし一方で、新しい治療薬に期待されたほどの効果が認められないという問題、人種差を含めた患者選択の問題、思わぬ副作用の出現、薬剤耐性など様々な問題が生じていることもまた周知の事実です。これらの問題を克服するためには、がんを特徴付ける遺伝子・タンパク質の同定・解析、がん多様性を生み出す分子機構解析、腫瘍微小環境の解析などの基礎研究の重要性が増しています。さらに、臨床との連携により初めて可能となるヒト臨床検体を用いた耐性変異解析や転移機構解析などが、臨床への速やかなフィードバックと新規抗悪性腫瘍薬開発に欠かせないものとなってきています。当センターには、長年培ってきた薬剤スクリーニングの技術と蓄積してきた抗悪性腫瘍薬感受性情報があり、各部で進められている基礎研究成果と融合することで、社会的にも求められている基礎研究成果の臨床への橋渡しと新規薬剤開発が成し遂げられるものと確信しています。さらに当センターでは、がん研究会―がん化学療法国際シンポジウム(JFCR-ISCC)を毎年主催するなど、国際的な薬剤開発情報の交換も積極的に進めており、がん研究と抗悪性腫瘍薬開発において当センターが果たすべき役割はますます重要になっていくものと思われます。

がん化学療法センターは、設立当初の目的である細胞傷害性を指標とした抗がん剤スクリーニングを行なう研究機関から、基礎研究と臨床を融合した新時代の抗悪性腫瘍薬の開発を使命とした研究機関へと変貌しております。今後も、がん研究と抗悪性腫瘍薬開発の中心機関としての役割を果たすべく更なる努力を重ねていきますので、皆様のご協力とご支援をいただきますよう、よろしくお願い致します。

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