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【がん研セミナー(1月31日)のお知らせ「制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の可能性」前田 優香 博士(国立がん研究センター 腫瘍免疫研究分野 ユニット長)】
2024年01月05日
がん研セミナー(1月31日)のお知らせ
論題:制御性T細胞を標的としたがん免疫療法の可能性
演者:前田 優香 博士(国立がん研究センター 腫瘍免疫研究分野 ユニット長)
抄録:がん治療の第4の選択肢としてがん免疫療法が市民権を得て久しいが、腫瘍免疫の存在が示唆されたのは19世紀初頭である。研究が進むにつれて、がん免疫療法の弱点や効果がある患者が限られていることも明らかになった。また、生体のホメオスタシスを調整している制御性T細胞(Treg)が有効な抗腫瘍免疫応答を負に制御していることが示された。Treg細胞は、自己に対する免疫応答や過剰な免疫応答を抑制し免疫恒常性の維持に重要な働きをしている。一方で、がん免疫では抗腫瘍免疫応答を抑制して発がんやがんの進展に関わっていることが知られている。がん組織に多数存在する活性化Treg細胞はケモカイン受容体CCR4が高発現しているため、抗CCR4抗体であるMogamulizumabの投与により活性化Treg細胞の除去と臨床効果が期待された。しかし、多くの患者で治療効果は認められなかった。これは、がん免疫療法において抗腫瘍免疫応答に重要な役割を果たすとされるセントラルメモリーCD8+T細胞が予想外に減少していることに起因すると考えられた。私共はCCR4の発現レベルに着目して用量を絞り込むことで、セントラルメモリーCD8+T細胞に影響を与えることなくTregのみを除去できる可能性を見出し、分子標的薬であるMogamulizumabをがん免疫療法として使用可能な新たな治療域を発見し、薬剤の投与量を調節することでTregの選択的除去が可能であることを示し、がん免疫療法の至適用量を考える上で重要な知見を報告した。本講演ではTregを標的とした新たながん免疫療法の可能性について紹介する。
日時:2024年1月31日(水) 16:00〜17:00
場所:吉田記念講堂