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【ニュースリリース】ネオアンチゲン特異的CD4+ Tリンパ球が 腫瘍増殖を抑制する機構の解明 〜治療が難しかったがんに対する、新たな治療法の開発に期待〜

2024年09月17日

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長:中村祐輔) 難病・免疫ゲノム研究プロジェクトの清谷一馬プロジェクトリーダー(旧所属:公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター 免疫ゲノム解析グループリーダー)らの研究グループは、シカゴ大学を中心とする共同研究で、ネオアンチゲンを特異的に認識するCD4+ Tリンパ球が間質細胞に変化を起こし、腫瘍増殖を抑制することを明らかにしました。

(これまでの研究について)
腫瘍組織には、細胞障害性T細胞と呼ばれるCD8+ Tリンパ球が入り込んでいます。そのCD8+ Tリンパ球はがん細胞の目印となる抗原を見つけ、がん細胞を攻撃することがわかっています。近年、ヘルパーT細胞と呼ばれるCD4+ Tリンパ球もがん治療において重要な役割を果たすことが知られてきました。我々は、がんの目印に結合するTリンパ球の受容体(TCR)を遺伝子導入したCD4+ Tリンパ球が、長期間にわたり、強い腫瘍増殖抑制効果を示すことを明らかにしてきました。しかし、その詳細なメカニズムについてはまだよくわかっていませんでした。

今回の研究では、マウスモデルを使い、がん細胞のみに存在する目印であるネオアンチゲンと、ネオアンチゲンに結合するTCRを複数種類見つけ出しました。これらのTCR遺伝子を導入したCD4+ Tリンパ球を作製し、その腫瘍抑制メカニズムを検討しました。

(研究成果のポイント)
◆ 作製したCD4+ Tリンパ球は、がん細胞を直接攻撃するのでなく、がん細胞の周辺に存在する間質細胞を変化させて、がん細胞の増殖を抑えることを明らかにしました。
◆ マウスで長期間にわたり腫瘍抑制活性を示すCD4+ Tリンパ球には、一つの抗原に対して複数種類のTCRが存在することを見出しました。

以上の結果から、これまで注目されてきたCD8+ Tリンパ球を用いたがん免疫療法に加え、ネオアンチゲンを標的としたCD4+ Tリンパ球も重要であることがわかりました。このことにより、新たながん免疫細胞療法が展開し、これまでの治療法でも効果のなかったがんに対する選択肢となることが期待されます。

本研究成果は、2024年9月14日に国際科学誌「Science Immunology」に発表されます。
ウェブサイト: https://www.science.org/doi/10.1126/sciimmunol.adp6529


用語解説
CD8+ Tリンパ球: 細胞表面に CD8 分子を発現している T 細胞で、細胞傷害性 T 細胞またはキラーT 細胞とも呼ばれます。 がん細胞やウイルス感染細胞などを認識して攻撃し、破壊する細胞です。
CD4+ Tリンパ球: 細胞表面にCD4分子を発現しているT細胞で、多くはヘルパーT細胞として細胞傷害性T細胞やB細胞の活性を促進する細胞です。
ネオアンチゲン: がん細胞で起こる遺伝子変異(遺伝子の傷)により生じ、正常細胞には存在しない新たながん特異的な抗原です。T細胞ががん細胞を攻撃するとき、がん細胞の目印となります。
間質細胞: 生体組織の支持構造・環境を提供する細胞です。がん細胞との相互作用により腫瘍の成長や転移などを助けることが知られています。マクロファージ、樹状細胞や線維芽細胞などから成ります。

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