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【ニュースリリース】がん細胞において二本鎖RNA認識経路を介して抗腫瘍免疫応答の誘導に成功〜染色体不分離に伴う二本鎖RNAの産生機構を解明〜
2024年12月20日
【本研究のポイント】
⚫ がん細胞において紡錘体形成チェックポイント(SAC) (*1) の阻害が、二本鎖RNA(dsRNA)認識経路(*2)を活性化して抗腫瘍免疫応答を引き起こすことを明らかにしました。今後、がん免疫療法の患者選択や新規治療法の開発等に繋がることが期待されます。
⚫ dsRNA を特異的に認識する抗体を用いた免疫沈降法により dsRNA を濃縮し、シークエンス解析(dsRNA-seq)を実施することで、染色体不分離に伴い産生されるdsRNAが由来する非コードゲノム領域を特定しました。
⚫ 染色体不分離の結果として生じる微小核からdsRNAを形成する転写産物が多く生じていることを示しました。
⚫ マウスモデルにおいて、紡錘体形成チェックポイントに対する阻害薬の投与が、dsRNA 認識経路の活性化を介して抗腫瘍免疫を誘導し、治療効果を発揮することを明らかにしました。
【概要説明】
公益財団法人がん研究会がん研究所細胞生物部の佐々木信成特任研究員、北嶋俊輔研究員らによる研究グループは、がん細胞において、紡錘体形成チ
ェックポイント(SAC) (*1) の阻害が、微小核の形成に伴い二本鎖 RNA (dsRNA)の細胞質内への蓄積を誘導し、dsRNA 認識経路 (*2) を介して、抗腫瘍免疫に関わる免疫細胞の遊走や活性化を促進する因子を分泌することを明らかにしました。また、二本鎖RNAを特異的に認識する抗体を用いて、細胞質内に蓄積するdsRNAを濃縮し、シークエンス解析により内在性 dsRNAの産生源となるゲノム領域を特定しました。さらに動物モデルを用いて、SAC阻害薬の投与が、dsRNA認識経路依存的に抗腫瘍免疫経路を活性化し、免疫細胞依存的に腫瘍の増殖を抑制することを明らかにしました。
これらの結果により、SAC 阻害薬による dsRNA 認識経路の活性化が、すでに報告されている dsDNA 認識経路の活性化と協調して免疫応答を高めるメカニズムが明らかになりました。今後、ゲノムの不安定性を標的としたがん治療法に対する適切な患者選択や新たな併用療法の発展につながることが期待されます。
本研究の成果は、米国学術誌「Molecular Cell」(オンライン版)に 2024年12月20日 AM1:00(日本時間)に公開されました。
(*1) 紡錘体形成チェックポイント(SAC)
細胞分裂の際に染色体と紡錘体が正しく結合しているかを監視する制御機構。
(*2) dsRNA 認識経路
細胞質内の異常な dsRNA を感知して抗ウイルス/抗腫瘍免疫を誘導するシグナル経路。
関連PDF
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