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第24回 比較腫瘍学常陸宮賞 受賞者記念講演会(5月19日)のお知らせ
2025年04月04日
演題:細胞の競合と協調によるがん制御の分子機構
演者:井垣 達吏 博士
京都大学大学院生命科学研究科・教授
抄録:
上皮組織中で隣り合う細胞どうしが互いに競合あるいは協調し、細胞増殖能や生存能に影響を及ぼし合うことがわかってきた。このような細胞間の競合と協調は、がんの発生や進展に重要な役割を果たしている可能性がある。私たちはこれまで、ショウジョウバエをモデル生物として用い、極性が崩壊したがん原性細胞が正常細胞に近接すると細胞死を起こして組織から排除される現象を見いだし、その分子機構を解析してきた。「細胞競合」と呼ばれるこの現象は、がん原性細胞におけるTNF-JNKシグナルを介した細胞死誘導や上皮からの物理的排除、また隣接する正常細胞における貪食能の亢進や細胞表面リガンドの局在変化を介した隣接細胞(がん原性細胞)の生存シグナル抑制によって駆動されることを見いだしてきた。一方、Rasを活性化した良性腫瘍クローンにある特定の遺伝子変異が入るとその周辺細胞の腫瘍悪性化が促進するという細胞間協調現象を見いだし、その分子機構を解析してきた。本講演では、細胞の競合と協調によるがん制御の分子機構について、私たちのこれまでの研究成果をご紹介しながら議論したい。
日 時:2025年 5月 19日(月) 16:00〜17:00
場 所:吉田富三記念講堂