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【プレスリリース】肥満に伴う腸内細菌の変化が肝がんの発症を促進する

2013年06月27日

≪ポイント≫

・肥満になると脂質の消化吸収を助ける1次胆汁酸を2次胆汁酸へ変換する腸内細菌が増加することを、マウスを用いた実験により明らかにしました。
・ 2次胆汁酸の影響で細胞老化を起こした肝星細胞が炎症性サイトカインを分泌することで周囲の肝細胞の発がんが促進されることを発見しました。 
・ 同様のメカニズムがヒトの場合にも働いている可能性が見出されたことから、肥満に伴う肝がんの効果的な予防法開発への応用が期待されます。

 

 大谷直子 主任研究員(がん研究会 がん研究所 がん生物部/JST さきがけ)と 原 英二 部長(がん研究会 がん研究所 がん生物部/JST CREST)らの研究グループは、肥満による肝がん発症機構の一端を明らかにしました。

 肥満すると肝がんを含む様々ながんの発症率が著しく上昇することが知られていましたが、そのメカニズムについてはこれまで良く分かっていませんでした。本研究グループはマウスを用いた実験により、肥満になると2次胆汁酸を産生する腸内細菌が増加し、体内の2次胆汁酸の量が増え、これにより肝臓の肝星細胞が細胞老化を起こすことを見出しました。更に、細胞老化を起こした肝星細胞は、発がん促進作用を有する炎症性サイトカインを含む細胞老化関連分泌因子(SASP因子)を分泌することで、周囲に存在する肝細胞のがん化を促進することを明らかにしました。臨床サンプルを用いた解析から、同様のメカニズムがヒトの肥満に伴う肝がんの発症に関与している可能性も示され、本研究は肥満に伴う肝がん発症メカニズムの一端を明らかにしたと考えられます。今後、糞便中に含まれる2次胆汁酸産生菌の量を測定することで肝がんの発症リスクを予想したり、2次胆汁酸産生菌の増殖を抑制することで肝がんの予防につながる可能性が期待されます。


 本研究の成果は、JST戦略的創造研究推進事業の一環として得られ、英国の科学雑誌『Nature』オンライン版(英国時間6月26日付:日本時間6月27日)に掲載されました。

 ※詳細は添付のリリース文書をご覧ください。

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