がんゲノム研究部｜部門紹介

部の紹介

がんゲノム研究部では、がんプレシジョン医療研究センターと共同で、一度に数万の遺伝子発現情報が得られるマイクロアレイや、網羅的にタンパク発現を調べることができる質量分析装置を用いて、がんの個性を規定する遺伝子探索を行い、個別化医療の実現に向けての研究を進めています。また、がん患者の遺伝学的体質診断のために、遺伝子多型を調べて抗がん剤の副作用を予測するための研究、抗がん剤に対する治療効果予測システムの確立、ゲノム創薬のための遺伝子抽出などに関するバイオインフォマティクス手法の研究も進めています。

部の紹介

当研究部門は2006年7月に設立されました。当研究部門では、2006年3月に終了したがんプレシジョン医療研究センターゲノム多様性プロジェクトで開発してきた内容を、今後の臨床応用へさらに発展させるための研究を行なっています。ゲノム多様性プロジェクトにおいては、(1)がん患者の遺伝学的体質診断と、(2)がんの遺伝学的個性診断の実現を目指し、(3)日本人がん患者に関するがんゲノム統合データベースの構築とデータ解析アルゴリズム開発を行ってきました。がん患者の遺伝学的体質診断の実現に向けて、SNP情報を用いたアソシエーション解析を基に、副作用と関連を示す遺伝子の抽出を行い、それら遺伝子を基にした副作用予測システムを確立しました。がんの遺伝学的個性診断では、マイクロアレイによるトランスクリプトームデータを利用した治療効果予測システムを開発しました。日本人がん患者に関するがんゲノム統合データベースの構築では、ゲノム情報・網羅的遺伝子発現情報に臨床情報を加えた研究用・公開用の各データベースを作成し、世界的にも稀で貴重な基盤情報を構築しました。このように当研究部では、がん研究のための新規バイオインフォマティクス手法の開発を行ない、治療効果予測における新たな候補遺伝子の探索を継続しています。また、開発してきた治療効果予測システムの改良や高精度化のための方法論に関する研究も進めています。

　一方、がんの新たな診断法を開発することを目的として、質量分析装置を用いたプロテオーム解析により、新たながんマーカーの探索を行うとともに、がん組織のタンパク発現を質量分析により可視化するシステムの開発も行ない、血液およびがん組織より抽出したタンパク質を質量分析装置での解析を行ってきました。質量分析装置を用いた組織の分子可視化システムの構築では、組織の前処理法の検討により、従来の50倍以上のピーク検出に成功しました。さらに、質量分析計からのタンパク発現を示すピークデータに対して、治療効果を予測するために有効な複数のピークを同時に同定する方法論も開発しました。

がんゲノム研究部長　野田哲生

研究内容

代表論文

研究業績へ

Ito, Y., Nagasaki, K., Miki, Y., Iwase, T., Akiyama, F., Matsuura, M., Horii, R., Makita, M., Tokudome, N., Ushijima, M., Yoshimoto, M., Takahashi, S., Noda, T., Hatake, K.: Prospective randomized phase II study determines the clinical usefulness of genetic biomarkers for sensitivity to primary chemotherapy with paclitaxel in breast cancer.
Cancer Sci, 102, 130-136 (2010)
Enomoto, Y., Ushijima, M., Miyata, S., Matuura, M., Ohtaki, M.: Inference on biological mechanisms using an integrated phenotype prediction model.
Hiroshima J Med Sci, 57, 7-15 (2008)
Goto, M., Matsuura, M.: Secular trends towards delayed onsets of pathologies and prolonged logevities in Japanese patients with Werner syndrome.
BioScience Trends, 2, 81-87 (2008)
Fujisawa, H., Isomura, M., Eguchi, S., Ushijima, M., Miyata, S., Miki, Y., Matsuura, M.: Identifying haplotype block structure using an ancestor-derived model.
J Hum Genet, 52, 738-746 (2007)
Ushijima, M., Miyata, S., Eguchi, S., Kawakita, M., Yoshimoto, M., Iwase, T., Akiyama, F., Sakamoto, G., Nagasaki, K., Miki, Y., Noda, T., Hoshikawa, Y., Matsuura, M.: Common peak approach using mass spectrometry data sets for predicting the effects of anticancer drugs on breast cancer.
Cancer Inform, 3, 285-293 (2007)

連絡先

松浦正明(部長)
〒135-8550　江東区有明3-8-31
Tel：03-3520-0111(内線 5338) Fax：03-3570-0515
E-mail：mmatsuura@jfcr.or.jp