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研究者紹介

清宮啓之

所属

清宮啓之

がん化学療法センター, 分子生物治療研究部 部長

連絡先

〒135-8550 江東区有明3-8-31
Tel:03-3570-0466
Fax:03-3570-0484
Mail:hseimiya@jfcr.or.jp

経歴

1990年3月 東京大学薬学部薬学科卒業
1995年3月 東京大学大学院薬学系研究科生命薬学博士課程修了(薬学博士)
1993年4月〜1995年3月 日本学術振興会 特別研究員(がん)
1995年4月〜2004年1月 (財)癌研究会癌化学療法センター基礎研究部 研究員
2000年1月〜2001年10月 米国ニューヨーク大学医学部 博士研究員
2004年2月〜2004年12月 (財)癌研究会癌化学療法センター基礎研究部 主任研究員
2005年1月 (財)癌研究会癌化学療法センター分子生物治療研究部 部長
2008年4月 明治薬科大学大学院薬学研究科 客員教授(兼務)
2009年8月 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 客員教授(兼務)
2010年4月〜2020年3月 東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻 客員准教授(兼務)
2014年8月 横浜市立大学医学研究科 客員教授(兼務)
2018年5月 国立研究開発法人理化学研究所 創薬・医療技術基盤プログラム プロジェクトリーダー(兼務)
2020年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻 客員教授(兼務)

研究分野

・がん分子標的治療
・テロメア・テロメラーゼ
・グアニン四重鎖(G-quadruplex)
・ポリADP-リボシル化酵素(PARP)・タンキラーゼ
・がん幹細胞

所属学会・研究会

・日本癌学会:監事(2020年〜)、利益相反委員(2014年〜2019年、2016〜2019年 委員長)、International Session組織委員(2008〜2017年)、国際委員(2015年〜)、Cancer Science Associate Editor(2007年〜)、Secretary for Editor-in-Chief(2002年〜2008年)、第11回日米がん合同会議組織委員(2019年)
・日本がん分子標的治療学会:理事(2014〜2016年)、評議員、総務幹事、倫理・利益相反委員
・日本臨床腫瘍学会:教育企画部会委員(2014〜2019年)、新臨床腫瘍学(第4〜6版)編集委員(2014年〜)、用語小委員(2015〜2018年)
・文科省科研費新学術領域研究『先端モデル動物支援プラットフォーム(AdAMS)』:分子プロファイリング支援活動班長(2016年〜)、若手支援技術講習会実行委員(2016年〜)
・医薬品医療機器総合機構(PMDA):専門委員(2013年〜)、科学委員会 医薬品専門部会ワーキンググループメンバー(2013年)、非臨床試験の活用に関する専門部会委員(2015〜2016年)
・日本学術会議:連携会員、臨床医学委員会 腫瘍分科会 幹事(2017年〜)
・日本学術振興会:専門委員(2011年他)、科研費審査委員表彰(2017年)
・文科省科研費新学術領域研究『がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動』:化学療法基盤支援活動班員(2010〜2014年)、班長(2015年)、がん若手研究者ワークショップ実行委員(2011〜2015年)
・がん研究会国際がん化学療法シンポジウム(JFCR-International Symposium on Cancer Chemotherapy):Executive Member, Committee Member(2007年〜)
・名古屋癌治療国際シンポジウム:Advisor(2013年〜)
・日本RNAi研究会:役員(2009年〜)
・関東ホルモンと癌研究会:幹事(2008年〜)、第20回研究会当番幹事(2020年)
・抗悪性腫瘍薬開発フォーラム:幹事・実行委員(2006年〜)
・日本分子生物学会
・日本薬学会
・米国癌学会(AACR)
・Journal of Biological Chemistry, Editorial Board Member(2017年〜)
・Frontiers in Cancer Molecular Targets and Therapeutics, Review Editor(2011年〜)
・Gene Expression, Editorial Board
・Journal of Cancer Research and Clinical Oncology, Editorial Board

受賞

2000年 日米癌研究者交流計画フェロー
2004年 日本癌学会奨励賞
2016年 JCA-Mauvernay Award
2017年 日本がん分子標的治療学会鶴尾隆賞
2019年 がん研究会学術賞

研究テーマ

1. テロメア動態とがん

細胞が分裂増殖するには自身のDNAを複製する必要がありますが、通常の仕組みではDNA鎖の両端(テロメアDNA)が完全には複製されず、徐々に失われていきます。テロメアはもともと染色体の末端を保護する役割を持っていますので、その短縮が限界に達すると、細胞はもはや分裂することが出来なくなります。細胞も老化する、というわけです。これは、私たちの身体の中で、異常な増殖性を持った細胞ががん化するのを未然に防ぐ仕組みのひとつとなっています。がん細胞では、テロメラーゼと呼ばれるテロメア合成酵素が活性化しており、テロメアが安定に維持されます。がん細胞が無限に分裂出来るのはこのためです。私たちはテロメラーゼ阻害剤の開発を進め、これらががん細胞の無限増殖を阻止することを実証してきました。最近は、テロメア非コードRNA(TERRA)によるがんの進展制御に関する基礎研究や、グアニン四重鎖と呼ばれる特殊な核酸高次構造を標的とした分子創薬研究を展開しています。

2. ポリADP-リボシル化による細胞制御

ポリADP-リボシル化(PAR化)は、タンパク質に最も大きな物性変化を与える翻訳後修飾の一つで、PARPと呼ばれる一群の酵素によって触媒されます。ゲノムの安定性や遺伝子発現をはじめ、様々な生物学的事象を調節する一方、ポリADP-リボース鎖の機能特異性を担保する仕組みなど、不明な点も多く残されています。近年、PARP阻害剤ががん抑制遺伝子BRCA1/2変異がんに対する合成致死性治療薬として認可されており、本酵素ファミリーは新たな分子標的シーズとして脚光を浴びています。私たちは、タンキラーゼと呼ばれるPARPに着目しています。タンキラーゼはテロメラーゼによるテロメアの維持を促進するのみならず、がんドライバーであるWnt/beta-cateninシグナルを正に制御します。私たちは、同シグナルを活性化したがんに対する革新的治療薬としてのタンキラーゼ阻害剤の開発や、同阻害剤の薬効を予測するバイオマーカーに関する研究を進めています。

3. がん幹細胞の治療抵抗性と標的分子

抗がん剤が効かない、あるいは最初は効いていたのにやがて効かなくなる現象を薬剤耐性と呼びます。これは腫瘍が可塑性および不均一性を備えたがん細胞集団で構成されていることによるとされています。がんの可塑性および不均一性は、確率論的なクローン進化に加え、がん幹細胞を最上位とする細胞階層性によってもたらされると考えられます。とりわけ、がん幹細胞は自己複製能・多分化能・強い造腫瘍性を保持し、薬剤や放射線に対する耐性および高い転移性を示すことから、がんの根治を阻む「女王蜂」的な存在として注目を集めています。私たちは、難治性の高い脳腫瘍である神経膠芽腫(グリオブラストーマ)のがん幹細胞や、日本人の罹患率が高い胃がんの患者由来がん幹細胞などに焦点を当て、機能ゲノミクスや網羅的遺伝子発現解析により、がん幹細胞の成り立ちや治療標的となる分子を追究しています。

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