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【ニュースリリース】がん研究会・大阪大学・凸版印刷、 最適な抗がん剤選択に向けた臨床研究を開始

2023年05月11日

公益財団法人がん研究会(所在地:東京都江東区、理事長:浅野 敏雄、以下 がん研)と凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)は、がん研の「がん化学療法センター」内に共同でがん研究を行うための共同ラボを2019年に開設。これまで3D細胞培養技術「invivoid®」による抗がん剤評価技術の共同研究を進めてきました。
このたび大阪大学大学院工学研究科(以下、大阪大学)を加えた三者で、「invivoid®」により患者のがん細胞を体外で培養し、複数の抗がん剤を暴露して得られた効果と、実際に患者に同じ抗がん剤を投与して得られた効果との比較を行う臨床研究(※1)を開始します。「invivoid®」を用いた抗がん剤選択検査の手法が確立することで、個々の患者ごとに最適な抗がん剤を選択するがん個別化医療の実現や、それに伴う経済的負担の軽減を可能にします。
本臨床研究の結果を踏まえ、がん研究会での「invivoid®」を用いた抗がん剤選択検査に関し、2025年の先進医療適用(※2)を目指します。

「invivoid®」による、抗がん剤選択検査フロー

■背景
がんの診断や治療が日々進歩する中、基礎研究分野では様々ながんと、関係する遺伝子が解明・特定されつつあります。一方、抗がん剤の治療選択検査として「包括的ゲノムプロファイル検査(※3)」が保険適用されていますが、遺伝子変異にマッチした投薬を受けられる患者の割合は一部(10%未満)に限られます(※4)。
また、患者のがん細胞をマウスに移植し、薬剤の効果判定を行う検査方法もありますが、標準の方法としてはまだ確立されていません。さらに、2022年に米国FDA(U.S. Food and Drug Administration)が、医薬品開発においてマウスなど動物実験から非動物実験に移行していくステートメント(※5)を出すなど、非動物実験のための3D細胞培養技術に注目が集まっています。
このような中でがん研、大阪大学、および凸版印刷は、「invivoid®」により、がん患者の細胞を体外に再現し、正しく抗がん剤を評価するための共同研究を推進しています。2019年に凸版印刷はがん研究会の化学療法センター内に共同ラボを設置し、患者から研究用として利活用に同意をいただいた検体(手術により摘出された腫瘍の残余検体)から樹立した、患者由来がん細胞を移植したマウスと、「invivoid®」で製作したがん細胞との比較検証を実施してきました。その結果、マウスと「invivoid®」との一致率は87.9%と従来技術よりも良好な結果を確認でき、抗がん剤評価において、「invivoid®」がマウスを代替できる可能性が示唆されました。(※6)

 

「invivoid®」とマウスの比較結果(※6)

従来技術と「invivoid®」の特徴について


このたび本結果を受け、がん研と凸版印刷と、3D細胞培養技術に関する基礎研究を凸版印刷と共同で進めている大阪大学の三者で「invivoid®」によるがん個別化医療を目指し、ヒトに対する抗がん剤の効果を「invivoid®」が予測できるかの臨床研究を開始します。本臨床研究開始に向けて、がん研と凸版印刷の共同ラボ設置に係る契約、および大阪大学を含む三者の共同研究契約を2026年3月まで延長しました。

■役割
・がん研: 大腸がん患者を対象とした薬剤感受性を検討する臨床研究の計画策定および実施
・大阪大学: 組織工学的観点からがん患者組織の培養における「invivoid🄬」の改良改善
・凸版印刷: 「invivoid®」を用いた大腸がん患者のがん微小環境を模倣した立体組織の製作

■今後の目標
がん研と凸版印刷と大阪大学は、「invivoid®」を用いた抗がん剤の効果判断の臨床研究を2023年9月までに開始することを目指します。また本臨床研究を通じて、がん個別化医療実現に向けて2025年の先進医療適用を目指します。

■「invivoid®」について
大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授と凸版印刷で共同開発した独自バイオマテリアルによる3D細胞培養技術で、がんモデルの他に、肝モデル、皮膚モデル、ミニ乳房モデル、そして、培養肉モデル等のミニ臓器を製作することが可能です。がんモデルの一部は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて開発されました(事業名:官民による若手研究者発掘支援事業、課題名:臨床がん三次元ハイスループットスクリーニングシステムの創製)。

■がん研究会について
がん研は「がん克服をもって人類の福祉に貢献すること」を基本理念として掲げ、がんの診断/治療/予防に貢献するとともに、がんの本体解明研究を追求することで、世界最高レベルのがんの研究と診療を行う施設として認知されることを目指しています。その実現に向けて、臨床への応用を踏まえた基礎・臨床の双方の分野でコミュニケーションを図る研究、いわゆる「トランスレーショナルリサーチ」を進め、患者が満足・納得いく医療の提供に取り組んでいます。

■大阪大学大学院工学研究科について
工学研究科は、大阪大学の伝統である自由で創造的な研究を行う学風を受けて、高度の専門知識を持つ創造的研究者と先進的技術者の育成を目指し、多くの世界的に優れた研究成果を上げています。共同研究講座や協働研究所ならびに各専攻を基軸に「産学連携」を積極的に展開し、優れた研究成果やリーダー人材を輩出することで、Open Innovation on Campus together with Industryを実践しています。

■凸版印刷について
凸版印刷は、新たな成長領域の一つと位置付けている「健康・ライフサイエンス」分野の研究開発を総合研究所で進めており、その取り組みとして国立大学法人大阪大学大学院工学研究科に「先端細胞制御化学(TOPPAN)共同研究講座」を2017年に設置。独自のバイオマテリアルを活用した3D細胞培養技術「invivoid®」を同研究科 松崎典弥教授と共同で開発。社会実装に向けて様々な研究を進めています。

※1 患者のがん組織を体外で培養し、そこに薬剤を暴露した結果とがん患者への治療結果を前向きに比較する観察型の臨床研究で、「invivoid®」の検査による治療介入は行いません。
※2 保険診療の対象に至らない、先進的な医療技術等のうち、厚生労働大臣の承認を受けたもの。
※3多数の遺伝子を網羅的に解析し治療方針策定の補助となる遺伝子異常の情報を得て、最適ながん薬物療法を提供することを目的とした検査。がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療連携拠点病院、がんゲノム医療連携病院でのみ実施可能。
※4 Cancer Discov (2022) 12 (11): 2509–2515.
※5 Science. 2023 Jan 13;379(6628):127-128.
※6 20症例のがん患者由来細胞に対し延べ58の薬剤の評価を行い、「invivoid®」と患者由来がん細胞をマウスに移植したマウスゼノグラフトモデルとの一致率は、87.9%、陽性的中率88.9%、陰性的中率86.4%、感度91.4%、特異度82.6%と各精度指標において、従来の2D培養や3D細胞培養を上回る良好な結果を確認でき、2023年4月に米国がん学会(4月14〜19日 フロリダ州)で発表しました。

* 本臨床研究で用いる「invivoid®」は、現時点では商用利用できる商品・サービスではありません。
* 本ニュースリリースに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。
以  上

 

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