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がん研セミナー(10月9日)のお知らせ

2025年10月01日

演題:腫瘍局所の免疫解析から紐解く

がん治療抵抗性の詳細解明

 

演者:熊谷 尚悟 博士

(国立がん研究センター研究所 腫瘍免疫研究分野 研究員)

抄録:

がん細胞は、腫瘍の発生、進展の過程で進化することが知られ、がん進化の主な原動力は遺伝子異常の蓄積である。がん進化のもう一つの原動力は、優先的に生き残るクローンの選択である。がん細胞は腫瘍生態系の一部であるため、腫瘍浸潤免疫細胞を含む微小環境の様々な非悪性細胞との相互作用を通じて選択される。例えば、EGFR遺伝子変異肺がんやRHOA遺伝子変異胃がんのように、発がん作用の強いドライバー遺伝子の変化を持つがん細胞は遺伝子変異量が少なく、CD8陽性T細胞などの抗腫瘍免疫細胞を阻害し制御性T細胞や抑制性骨髄系細胞を誘導し活性化する様々な免疫抑制機構を同時に発達させることにより、発がんを誘導し「がん」として進展し(Kumagai S et al. Immunity 2020, Nat immunol 2020, Nat Rev Cancer 2021, Cancer cell 2022)、がん治療の過程で治療抵抗性を獲得する(Band H* and Kumagai S* (*equally contributed) et al. Nat Cancer 2025)。これらの事象は、一つのドライバー遺伝子変化が発がんと免疫逃避において二重の役割を持ちうることを示している。これらの知見に基づき、我々はヒトの腫瘍形成における「immuno-genomic cancer evolution」という新しい概念とそれに関連した「immuno-genomic precision medicine」という治療戦略を提唱した(Kumagai S et al. Nat Rev Clin Oncol 2024, Sci immunol 2025)。本講演では種々のがんの進展における免疫応答を最新の解析技術を用いて検討したデータを交えてがん免疫治療の展望に関して論じる。

 

日 時:2025年 10月 9日(木) 11:40〜12:30

場 所:吉田記念講堂

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