【ニュースリリース】ALK融合遺伝子陽性肺がんにおける薬剤耐性がん細胞の新たな治療標的候補を発見
2022年03月17日
1.ポイント
・ALK阻害薬未治療の患者検体より樹立したALK陽性肺がん細胞にALK阻害薬を実験的に処理すると、大半のがん細胞は死滅するものの1%にも満たない薬剤抵抗性のがん細胞が残存し、それらはGSK3阻害剤に比較的高い感受性を示すことを発見しました。
・ALK阻害薬に耐性となった患者より樹立した耐性細胞は、ALK阻害薬に耐性を示す一方で、GSK3阻害剤の併用により、ALK阻害薬に再度感受性化することを実験的に明らかにしました。
2.研究の概要
数あるがん腫の中で死因の第1位は肺がんであり、その半数以上は肺腺がんが占めます。日本人の肺腺がん患者の3-5%では、ALK融合遺伝子※1が、がんの原因遺伝子として認められています。ALK融合遺伝子陽性肺がん(ALK肺がん)に対しては、ALKチロシンキナーゼ阻害薬(ALK阻害薬)※2が高い有効性を示しており、これまでに5種類のALK阻害薬が承認されています。中でも第2世代ALK阻害薬と呼ばれるアレクチニブが1次治療薬として広く使用されています。これまで主に2次治療以降で使用されてきた第3世代ALK阻害薬のロルラチニブですが、最近1次治療薬としても使用可能となり、現在承認されている5種類のALK阻害薬いずれもが、1次治療から使用できるようになっています。一方で、これらALK阻害薬による治療から数年以内に薬剤耐性がん細胞※3が出現し、がんが再増悪することが臨床上の問題となっています。多くの症例において薬剤耐性がん細胞が出現する原因としては、どれほど顕著な抗腫瘍効果が認められた場合でも、ごくわずかながん細胞(薬剤抵抗性残存細胞)※4が残存するためであると考えられています。しかし、どのようにしてごく少数のがん細胞が治療薬存在下でも生き延びられるのか、それらの薬剤抵抗性細胞にはどのような治療薬が有用であるかといったことは十分に明らかになっていません。
がん研究会の片山量平(がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部 部長)、清水裕貴(同研究部所属、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程 大学院生)らの研究グループは、実験的に樹立したロルラチニブ抵抗性残存細胞が、GSK3阻害剤※5に対して高い薬剤感受性を示すことを見出しました。また、ロルラチニブ抵抗性残存細胞はGSK3阻害剤を併用することでロルラチニブ再感受性化することが示唆されました。さらに、実際にアレクチニブ治療に対して耐性となった患者より樹立されたALK阻害薬獲得耐性細胞も、ALK阻害薬とGSK3阻害剤を併用することでALK阻害薬に感受性化することを発見しました。
本研究から、GSK3阻害はALK阻害薬獲得耐性細胞の克服のみでなく、ALK阻害薬抵抗性細胞の出現を抑制できる可能性が実験的に示されました(図1)。
本研究の成果は、Nature Publishing Groupのパートナー誌であるnpj Precision Oncologyに、2022年3月17日に公開されました。
3.論文名、著者およびその所属
○論文名: GSK3 inhibition circumvents and overcomes acquired lorlatinib resistance in ALK-rearranged non-small-cell lung cancer
○ジャーナル名
npj Precision Oncology(Nature Publishing Groupのパートナー誌)
○著者
Yuki Shimizu1,2, Koutaroh Okada1,2, Jun Adachi3, Yuichi Abe4, Ryohei Narumi4, Ken Uchibori5, Noriko Yanagitani5, Sumie Koike1, Satoshi Takagi1, Makoto Nishio5, Naoya Fujita6, Ryohei Katayama1,2*
(* 責任著者)
○著者の所属機関
1.公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部
2.東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻
3.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 プロテオームリサーチプロジェクト
4.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
5.公益財団法人がん研究会 がん研有明病院 呼吸器内科
6.公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター
4.研究の詳細
背景と経緯
肺がんの半数以上を占める肺線がん患者の3-5%ではがん化を促進するドライバーがん遺伝子であるALK融合遺伝子が認められています。ALK陽性肺がん患者に対する治療薬として、現在5種類のALK阻害薬が承認されており、その中でも第2世代ALK阻害薬アレクチニブが1次治療薬として広く用いられています。また、近年では、主に2次治療以降で用いられている第3世代ALK阻害薬ロルラチニブが、ALK陽性肺がん患者に対する1次治療薬としても承認され、ロルラチニブを含む5種類のALK阻害薬すべてが1次治療で使用できるようになりました。しかしながら、これらALK阻害薬による治療後、ほとんどの患者において、ALKキナーゼ領域内に薬剤結合親和性を低下させるような変異が生じるなど多様な機構を介して獲得耐性が出現することが示唆されています。近年、薬剤耐性獲得がん細胞が出現する原因として、まず治療後にごくわずかな一部の細胞(薬剤抵抗性残存細胞)が残存することが考えられています。しかし、これら薬剤耐性を獲得する前段階のがん細胞(薬剤抵抗性残存細胞)がどのような機構で生き残るかは十分に明らかになっておらず、これら薬剤抵抗性残存細胞に対する有効な治療法は確立されておりません。
研究内容
まず初めに、がん研究会の倫理審査委員会承認済みのプロトコールに則り同意の得られたALK陽性肺がん患者の胸水より細胞株を複数樹立しました。その中で、ALK阻害薬に感受性を示す患者由来細胞株JFCR-028-3をロルラチニブに比較的短期間暴露させることで、ロルラチニブに対して可逆的な耐性を示すロルラチニブ抵抗性残存細胞を樹立しました。
樹立したJFCR-028-3のロルラチニブ抵抗性残存細胞に有効な阻害剤を探索するために、約90種類の既承認薬や臨床試験中の薬剤を中心として構成された阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングを実施した結果、GSK3阻害剤LY2090314とロルラチニブを併用することにより、JFCR-028-3ロルラチニブ抵抗性残存細胞のより顕著な増殖抑制および細胞死誘導を示すことが明らかとなりました(図2)。さらに、JFCR-028-3細胞にロルラチニブとGSK3阻害薬を最初から処理したところ、1週間後に残存してくる抵抗性細胞の数が顕著に減少しました。
また、実際にアレクチニブ治療後に耐性となったALK陽性肺がん患者より樹立された獲得耐性細胞に対して、上記と同様の薬剤ライブラリースクリーニングを行った結果、GSK3阻害剤をロルラチニブに併用することで、増殖抑制効果が見られました(図3)。
本研究により、GSK3の阻害剤が、ロルラチニブ抵抗性残存細胞を抑制することで、ロルラチニブ獲得耐性細胞の出現自体を抑制する可能性を示唆されました。現在、GSK3阻害剤はアルツハイマー型認知症の治療薬として臨床試験が行われていますが、薬剤耐性がんの患者に投与した際の有効性や安全性を明らかにするためには、前臨床および臨床試験によるさらなる検討が必要です。
5.本研究への支援
本研究は、下記機関より資金的支援等を受けて実施されました。
・国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)
「異分野先端技術融合による薬剤抵抗性を標的とした革新的複合治療戦略の開発」ほか
・独立行政法人 日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金
・文部科学省(MEXT) 科学研究費助成事業
新学術領域研究「細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御」
・公益財団法人 日本財団
6.用語解説
(※1)ALK融合遺伝子
未分化リンパ腫キナーゼ (Anaplastic lymphoma kinase :ALK)遺伝子がコードするALKタンパク質は受容体型チロシンキナーゼであり、通常、増殖因子(ALK-ALと呼ばれるリガンド)依存的にALKタンパク質が活性化します。一方で、染色体転座や逆位などの現象により、EML4などの多量体形成能を有する遺伝子とALK遺伝子が融合遺伝子を形成する場合があり、これによりALK融合タンパク質は、増殖因子非依存的に多量体形成を介して、恒常的にALKキナーゼが活性化され、がん化が促進されると考えられています。
(※2)ALK阻害薬
ALKを標的とした分子標的薬であり、現在、我が国においては、クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ、ロルラチニブの5剤が承認されています。
(※3)薬剤耐性がん細胞
分子標的薬などによる治療後、腫瘍が退縮した後に出現する薬剤存在下でも生存・増殖するがん細胞であり、不可逆的な薬剤耐性を示し、治療後のがん再発の原因として考えられています。
(※4) 薬剤抵抗性残存細胞
治療後により多くのがん細胞は死滅する一方で、一部のがん細胞は薬剤存在下で休眠のような状態などを取ることにより生存していると考えられています。このような残存細胞は、獲得耐性細胞とは異なり、薬剤によるストレスがなくなることで、元のがん細胞の性質に戻るといった薬剤に対する可逆的な抵抗性を示すと考えられています。この残存細胞に継続的に薬剤によるストレスを与えることで、遺伝子変異などが生じ、最終的に獲得耐性細胞になると考えられています。
(※5)GSK3阻害剤
グリコーゲン合成酵素3(Glycogen synthase kinase 3 ; GSK3)は、グリコーゲン代謝や細胞分裂など多岐に渡る生命現象に関与するセリン・スレオニンキナーゼです。GSK3阻害剤は、このGSK3キナーゼを標的にする薬剤であり、幾つかの臨床試験が行われています。
・ALK阻害薬未治療の患者検体より樹立したALK陽性肺がん細胞にALK阻害薬を実験的に処理すると、大半のがん細胞は死滅するものの1%にも満たない薬剤抵抗性のがん細胞が残存し、それらはGSK3阻害剤に比較的高い感受性を示すことを発見しました。
・ALK阻害薬に耐性となった患者より樹立した耐性細胞は、ALK阻害薬に耐性を示す一方で、GSK3阻害剤の併用により、ALK阻害薬に再度感受性化することを実験的に明らかにしました。
2.研究の概要
数あるがん腫の中で死因の第1位は肺がんであり、その半数以上は肺腺がんが占めます。日本人の肺腺がん患者の3-5%では、ALK融合遺伝子※1が、がんの原因遺伝子として認められています。ALK融合遺伝子陽性肺がん(ALK肺がん)に対しては、ALKチロシンキナーゼ阻害薬(ALK阻害薬)※2が高い有効性を示しており、これまでに5種類のALK阻害薬が承認されています。中でも第2世代ALK阻害薬と呼ばれるアレクチニブが1次治療薬として広く使用されています。これまで主に2次治療以降で使用されてきた第3世代ALK阻害薬のロルラチニブですが、最近1次治療薬としても使用可能となり、現在承認されている5種類のALK阻害薬いずれもが、1次治療から使用できるようになっています。一方で、これらALK阻害薬による治療から数年以内に薬剤耐性がん細胞※3が出現し、がんが再増悪することが臨床上の問題となっています。多くの症例において薬剤耐性がん細胞が出現する原因としては、どれほど顕著な抗腫瘍効果が認められた場合でも、ごくわずかながん細胞(薬剤抵抗性残存細胞)※4が残存するためであると考えられています。しかし、どのようにしてごく少数のがん細胞が治療薬存在下でも生き延びられるのか、それらの薬剤抵抗性細胞にはどのような治療薬が有用であるかといったことは十分に明らかになっていません。
がん研究会の片山量平(がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部 部長)、清水裕貴(同研究部所属、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程 大学院生)らの研究グループは、実験的に樹立したロルラチニブ抵抗性残存細胞が、GSK3阻害剤※5に対して高い薬剤感受性を示すことを見出しました。また、ロルラチニブ抵抗性残存細胞はGSK3阻害剤を併用することでロルラチニブ再感受性化することが示唆されました。さらに、実際にアレクチニブ治療に対して耐性となった患者より樹立されたALK阻害薬獲得耐性細胞も、ALK阻害薬とGSK3阻害剤を併用することでALK阻害薬に感受性化することを発見しました。
本研究から、GSK3阻害はALK阻害薬獲得耐性細胞の克服のみでなく、ALK阻害薬抵抗性細胞の出現を抑制できる可能性が実験的に示されました(図1)。
本研究の成果は、Nature Publishing Groupのパートナー誌であるnpj Precision Oncologyに、2022年3月17日に公開されました。
3.論文名、著者およびその所属
○論文名: GSK3 inhibition circumvents and overcomes acquired lorlatinib resistance in ALK-rearranged non-small-cell lung cancer
○ジャーナル名
npj Precision Oncology(Nature Publishing Groupのパートナー誌)
○著者
Yuki Shimizu1,2, Koutaroh Okada1,2, Jun Adachi3, Yuichi Abe4, Ryohei Narumi4, Ken Uchibori5, Noriko Yanagitani5, Sumie Koike1, Satoshi Takagi1, Makoto Nishio5, Naoya Fujita6, Ryohei Katayama1,2*
(* 責任著者)
○著者の所属機関
1.公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部
2.東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻
3.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 プロテオームリサーチプロジェクト
4.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
5.公益財団法人がん研究会 がん研有明病院 呼吸器内科
6.公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター
4.研究の詳細
背景と経緯
肺がんの半数以上を占める肺線がん患者の3-5%ではがん化を促進するドライバーがん遺伝子であるALK融合遺伝子が認められています。ALK陽性肺がん患者に対する治療薬として、現在5種類のALK阻害薬が承認されており、その中でも第2世代ALK阻害薬アレクチニブが1次治療薬として広く用いられています。また、近年では、主に2次治療以降で用いられている第3世代ALK阻害薬ロルラチニブが、ALK陽性肺がん患者に対する1次治療薬としても承認され、ロルラチニブを含む5種類のALK阻害薬すべてが1次治療で使用できるようになりました。しかしながら、これらALK阻害薬による治療後、ほとんどの患者において、ALKキナーゼ領域内に薬剤結合親和性を低下させるような変異が生じるなど多様な機構を介して獲得耐性が出現することが示唆されています。近年、薬剤耐性獲得がん細胞が出現する原因として、まず治療後にごくわずかな一部の細胞(薬剤抵抗性残存細胞)が残存することが考えられています。しかし、これら薬剤耐性を獲得する前段階のがん細胞(薬剤抵抗性残存細胞)がどのような機構で生き残るかは十分に明らかになっておらず、これら薬剤抵抗性残存細胞に対する有効な治療法は確立されておりません。
研究内容
まず初めに、がん研究会の倫理審査委員会承認済みのプロトコールに則り同意の得られたALK陽性肺がん患者の胸水より細胞株を複数樹立しました。その中で、ALK阻害薬に感受性を示す患者由来細胞株JFCR-028-3をロルラチニブに比較的短期間暴露させることで、ロルラチニブに対して可逆的な耐性を示すロルラチニブ抵抗性残存細胞を樹立しました。
樹立したJFCR-028-3のロルラチニブ抵抗性残存細胞に有効な阻害剤を探索するために、約90種類の既承認薬や臨床試験中の薬剤を中心として構成された阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングを実施した結果、GSK3阻害剤LY2090314とロルラチニブを併用することにより、JFCR-028-3ロルラチニブ抵抗性残存細胞のより顕著な増殖抑制および細胞死誘導を示すことが明らかとなりました(図2)。さらに、JFCR-028-3細胞にロルラチニブとGSK3阻害薬を最初から処理したところ、1週間後に残存してくる抵抗性細胞の数が顕著に減少しました。
また、実際にアレクチニブ治療後に耐性となったALK陽性肺がん患者より樹立された獲得耐性細胞に対して、上記と同様の薬剤ライブラリースクリーニングを行った結果、GSK3阻害剤をロルラチニブに併用することで、増殖抑制効果が見られました(図3)。
本研究により、GSK3の阻害剤が、ロルラチニブ抵抗性残存細胞を抑制することで、ロルラチニブ獲得耐性細胞の出現自体を抑制する可能性を示唆されました。現在、GSK3阻害剤はアルツハイマー型認知症の治療薬として臨床試験が行われていますが、薬剤耐性がんの患者に投与した際の有効性や安全性を明らかにするためには、前臨床および臨床試験によるさらなる検討が必要です。
5.本研究への支援
本研究は、下記機関より資金的支援等を受けて実施されました。
・国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) 次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)
「異分野先端技術融合による薬剤抵抗性を標的とした革新的複合治療戦略の開発」ほか
・独立行政法人 日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金
・文部科学省(MEXT) 科学研究費助成事業
新学術領域研究「細胞社会ダイバーシティーの統合的解明と制御」
・公益財団法人 日本財団
6.用語解説
(※1)ALK融合遺伝子
未分化リンパ腫キナーゼ (Anaplastic lymphoma kinase :ALK)遺伝子がコードするALKタンパク質は受容体型チロシンキナーゼであり、通常、増殖因子(ALK-ALと呼ばれるリガンド)依存的にALKタンパク質が活性化します。一方で、染色体転座や逆位などの現象により、EML4などの多量体形成能を有する遺伝子とALK遺伝子が融合遺伝子を形成する場合があり、これによりALK融合タンパク質は、増殖因子非依存的に多量体形成を介して、恒常的にALKキナーゼが活性化され、がん化が促進されると考えられています。
(※2)ALK阻害薬
ALKを標的とした分子標的薬であり、現在、我が国においては、クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ブリグチニブ、ロルラチニブの5剤が承認されています。
(※3)薬剤耐性がん細胞
分子標的薬などによる治療後、腫瘍が退縮した後に出現する薬剤存在下でも生存・増殖するがん細胞であり、不可逆的な薬剤耐性を示し、治療後のがん再発の原因として考えられています。
(※4) 薬剤抵抗性残存細胞
治療後により多くのがん細胞は死滅する一方で、一部のがん細胞は薬剤存在下で休眠のような状態などを取ることにより生存していると考えられています。このような残存細胞は、獲得耐性細胞とは異なり、薬剤によるストレスがなくなることで、元のがん細胞の性質に戻るといった薬剤に対する可逆的な抵抗性を示すと考えられています。この残存細胞に継続的に薬剤によるストレスを与えることで、遺伝子変異などが生じ、最終的に獲得耐性細胞になると考えられています。
(※5)GSK3阻害剤
グリコーゲン合成酵素3(Glycogen synthase kinase 3 ; GSK3)は、グリコーゲン代謝や細胞分裂など多岐に渡る生命現象に関与するセリン・スレオニンキナーゼです。GSK3阻害剤は、このGSK3キナーゼを標的にする薬剤であり、幾つかの臨床試験が行われています。
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