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【プレスリリース】人工知能で胃がんを発見する!続報 -AIを活用したリアルタイム動画での内視鏡診断への応用-

2018年11月21日

ポイント
●人工知能(AI)を活用した、内視鏡画像(静止画)から胃がんを検出するシステムを応用し、動画でのリアルタイム診断への可能性を検証しました
●調査対象の胃がんを94.1%の精度で発見することができました
●1病変の診断にかかる時間は1秒(中央値)でした

公益財団法人がん研究会有明病院(院長:佐野 武、所在地:東京都江東区)の平澤俊明医師(上部消化管内科副部長)、石岡充彬医師(同医員)、と株式会社AIメディカルサービス(CEO: 多田智裕、所在地:東京都新宿区)の多田智裕医師(ただともひろ胃腸科肛門科院長/東京大学医学部客員講師)らの研究グループは、人工知能(AI)の内視鏡画像診断支援システムを活用し、動画でのリアルタイム診断へ発展応用しました。
胃がんの早期発見・早期治療介入を目的として、胃内視鏡検査による胃がん検診実施件数は増加傾向にある一方で、幅広い施設において内視鏡検診の質をいかに担保するかが大きな課題のひとつとなっています。先に本研究グループでは、最先端のAI技術を用い、撮像された内視鏡画像(静止画)から胃がんを高い精度で検出するシステムを世界で初めて報告しました。この技術を臨床応用し、内視鏡検査時にリアルタイム動画での胃がん検出支援システムを構築・実用化することで、検査医間での内視鏡の質の格差の是正を図ることを目標としています。当院で行なった早期胃がんの内視鏡治療時の動画を用いて、AIが正しく病変を検出するか検証しました。その結果、全胃がんの94.1%を検出し、静止画での報告に匹敵するレベルでした。また、病変が画面内に写り込んでからAIが認識するまでに要した時間はわずか1秒でした。これまで、AIを活用した胃がんのリアルタイム診断システムの報告はなく、本報告は世界初です。今後さらに改良を進め、実臨床での内視鏡検査時リアルタイム診断支援システムの実用化を目指します。
本研究成果は、消化器内視鏡専門医学雑誌『Digestive Endoscopy』オンライン版(2018年11月18日付)に掲載されました。

「研究の背景」
胃がんは日本におけるがん罹患数および死亡数の上位を占める疾患である一方、早期発見によって95%以上の5 年生存率が得られる疾患でもあります。胃がん検診は長年にわたって胃X 線(バリウム)検査が推奨されていましたが、胃内視鏡検診による胃がん死亡率減少効果が認められ、2015 年に厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」中間報告書で対策型検診としての胃内視鏡検査の実施が厚生労働省により推奨されたことから、各自治体で広がりを見せています。一方で、早期胃がんは時に慢性炎症と類似した微細な胃粘膜の変化を示すのみで、発見が容易でない場合もままあります。胃内視鏡検査医の知識や経験、技量の質の差の改善をはじめ、検診の質をいかに担保するかが大きな課題のひとつとなっています。
近年、AI による画像認識能力は飛躍的な向上を見せており、医療分野での報告も散見されるようになりました。これまで、本研究グループは世界に先駆け、(株)AI メディカルサービスが独自に開発したニューラルネットワーク注1)によるディープラーニング・システム注2)を用い、AI に機械学習注3)をさせることによって、撮像された内視鏡画像(静止画)から胃がんを検出するシステムを開発し、高い精度(全胃がんで92.2%、6 mm 以上の胃がんで98.6%)での胃がんの検出に成功し、これを報告しました。我々はこの技術を応用することで、内視鏡検査時にリアルタイムでの胃がん検出を支援し、検査医間での内視鏡の質の格差の是正を図りたいと考えています。

「AI を用いた内視鏡診断システムの開発」
当院および研究協力施設で蓄積された膨大かつ高品質な内視鏡画像を教師用データ(AI に覚えさせる内視鏡画像)として、株式会社AI メディカルサービスが独自に開発したニューラルネットワークによるディープラーニング・システムを用いて学習させることで構築された内視鏡診断支援システムをもとに、静止画のみならず動画でのリアルタイム診断へ技術を発展応用させました。

「内視鏡診断システムの評価」
1.内視鏡診断支援システムの検証用データ
がん研有明病院で2018 年5 月から8 月に当院で内視鏡治療を行った胃がん68 症例の内視鏡治療時動画を用いて、今回のリアルタイム内視鏡診断システムを検証しました。

2.成績
リアルタイム内視鏡診断システムは、68病変中64病変(94.1%)を、病変が画面内に写り込んでからわずか1秒(中央値)で検出しました。この高い検出率は、静止画での報告に匹敵するレベルです。また、リアルタイム内視鏡診断システムが検出できなかった4病変には、熟練した内視鏡医にとっても診断が非常に困難な、周囲の胃炎と類似した病変や、微小病変でした(いずれも当会もしくは関連病院で発見した病変)。

【図1】



図1(左)慢性胃炎の中に、10mmの早期胃癌が隠れています(矢印)。周囲の炎症と早期胃がんを区別することは、内視鏡医でも必ずしも容易ではありません。 (右)AI が早期胃がんの位置を青枠で正確に指摘しています。

「今後の展望」
内視鏡診断支援システムのAI は学習を重ねることで診断能力の更なる向上が期待できます。今後さらに改良を進め、実臨床での内視鏡検査時リアルタイム診断支援システムの実用化を目指します。

「用語解説」

注1)ニューラルネットワーク:
人間の脳の神経細胞ネットワークを模倣し、数理モデル化したものの組み合わせのことです。
注2)ディープラーニング:
ニューラルネットワークの層を増やすことにより、画像認識などの処理能力を画期的に向上させた 機械学習の一形態です。AI の急速な発展を支える技術です。
注3)機械学習:
コンピューターが、与えられた多量の画像などから特徴やルールを自律的に学ぶことです。

「論文名、掲載誌、著者およびその所属」
○論文名
Detecting gastric cancer from video images using convolutional neural networks
○掲載誌
Dig Endosc. 2018 Nov 18. [Epub ahead of print]
○著者
Mitsuaki Ishioka1 , Toshiaki Hirasawa 1 , Tomohiro Tada 2 - 4 .
○著者の所属機関
1 がん研有明病院 消化器内科
2 株式会社AI メディカルサービス
3 ただともひろ胃腸科肛門科
4 東京大学医学部附属病院 腫瘍外科

「本研究の実施」
本研究は、公益財団がん研究会と株式会社AI メディカルサービスの独立した共同研究によって実施されました。

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