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患者さん・ご家族の方へ
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がんと上手に付き合うためのヒント

がんと上手に付き合うためのヒント

最終更新日 : 2023年6月12日

患者さん、ご家族が体験することが多い、不安や困りごとを取り上げながら、がんや治療と付き合う上でのヒントとなりそうな情報を紹介します。

がんになってもあなたらしく過ごすためのハンドブック

がんになってもあなたらしく過ごすためのハンドブック 身体のつらさケア、心のつらさケア、口腔ケア、スキンケア、睡眠ケア、日常生活、姿勢の工夫などで、心身のストレスを和らげましょう!

病院1F「がん情報コーナー」で配布中です。

監修:がん研究会有明病院 看護部
企画・編集:樺山書店
制作協力:潟^イカ

一人暮らしで頼れる人がいない

「おひとりさま安心ガイド ー がんや治療と付き合う上でのもしもの備え ー」

おひとりさま安心ガイド
ダウンロードはこちら

がんや治療と付き合いながら自分らしく生活するためには、あなたが大切にしていること、あなたの支えとなるもの、“もしも” の備えなどについて、前もって考えておくこと、周囲の信頼する人や医療者と、話し合っておくことが重要です。

この冊子は、そのためのヒント集です。全部通して読んでみても、 関心がある部分だけを読んでいただいてもかまいません。

“もしも” に備えて、誰かと一緒に考えてみたいと思った時には、ぜひ“がん相談支援センター” をご利用ください。

みんな仕事はどうしてる?

病気がわかった後、治療中、そして治療が一段落した後に、仕事に関して迷ったり、悩んだりする方は少なくありません。

  • 病気や治療のことを職場にどのように話せばよいかわからない・・・
  • 働きたいけど、治療をしながら働けるのか不安・・・
  • 今の職場で、病気になる前のように働けるか不安・・・
  • 治療のために休職したいけれど、収入が減ってしまうと、治療費や生活費が不安・・・
  • 治療が終わって体調もよくなってきたので、新たな仕事を探したい           など

ここでは、以下について解説します。

あなたにとっての働くことの意味は?

あなたにとって、働くことにはどのような意味がありますか?

  • 生活費のため
  • 治療費のため
  • 職場で自分が必要とされているから
  • これまでの仕事の経験を活かしたい 
  • 働くことは生きがいだから
  • 自分の能力を活かしたいから
  • 社会や人とのつながりを持っていたいから
  • 社会貢献したいから        など

働くことの意味は、一人ひとり違います。今は仕事より、治療や家庭、自分自身のことを優先したいなど、病気をきっかけに、働くことの意味や優先順位が変化することもあります。

ちょっと立ち止まって、今のあなたにとっての働くことの意味をもう一度考えてみてください。

大切なことだからこそ、焦らずに、じっくりと考えてみましょう

病気や治療に関連したストレスを抱えるなかで、「治療があるから仕事を続けることはできない」「“今すぐ” 決めなくてはいけない」と焦ってしまい、病気がわかってすぐに仕事を辞めてしまった方も、いらっしゃるようです。

病気のことで気持ちの動揺や落ち込みが大きい時には、普段の判断力が十分には発揮できないことがあるかもしれません。大切なことだからこそ、「本当に、今、仕事を辞めなければ/休まなければいけないのか?」について、じっくりと考えてみてください。

病気や治療のこと、自分のからだとこころの状態を理解しましょう

まずは、今明らかになっている範囲で、自分の病気や治療のことを理解しましょう。どのような治療になるのか、からだや生活にはどのような影響がありそうか、を考えてみるとよいと思います。また、病気や治療は、からだだけでなく、こころにも影響を及ぼすことがあります。今の自分のこころの状態を見つめてみることも大切です。

病気や治療、自分のからだとこころの状況を整理して理解することは、簡単ではないかもしれません。家族など信頼できる誰かの力を借りたり、主治医や看護師、がん相談支援センターにもご相談ください。

理解しておきたいこと
病気のこと □がんの病状 □治療内容 □今の体調 □その他
今後の治療のこと □治療内容  □治療スケジュール □通院頻度 □予測される副作用・合併症 □その他
こころの状態 どんなことに心配・不安を感じているか □気持ちの落ち込みが続いていないか □その他 
仕事にどのような影響がありそうか、問題になりそうなことは何か、整理してみましょう

病気や治療によって、今の仕事にどのような影響がありそうでしょうか? 問題になりそうなことは何でしょうか?

あなたの仕事の内容や、雇用契約条件や労働条件、通勤手段などによっても、仕事への影響の程度は変わってくるかもしれません。

治療と仕事の両立で感じた困りごとの例
働き方について 体調や治療の状況に応じた柔軟な勤務がしにくい
体調や症状・障害に応じた仕事内容の調整が難しい
治療・経過観察・通院目的の休暇・休業が取りづらい
治療をしながら仕事をすることで人事評価が下がるかもしれない
相談先について 職場内に相談相手がいない
治療と仕事の両立について誰(どこ)に相談すればよいか分からない
職場の理解・風土について 病気や治療のことを職場に言いづらい雰囲気がある
治療をしながら仕事をすることについて職場の理解を得にくい
経済面について 働き方の変更や休職することで収入が減少する
治療費が高い、必要な治療費の見通しが立たない
職場の就業規則や利用できる制度を確認しましょう

まずは、就業規則を確認し、今の職場にはどのような相談窓口があるか、どのような働き方に関する制度があるか(利用できる期間など)、経済面での補助はあるかなど、情報を集めてみましょう。職場の人事労務部門の担当者が詳しい情報をもっていることが多いです。

確認しておきたいこと
職場内の相談窓口 □産業医 □産業保健師/看護師 □総括安全衛生管理者 □衛生管理者 □安全衛生推進者 □人事・労務担当者 □所属長 □直属上司 □その他
職場内の働き方に関する制度 □時間単位の年次有給休暇 □積立有給休暇 □傷病休暇・病気休暇 □時差出勤制度  □短時間勤務制度 □在宅勤務(テレワーク)制度 □試し出勤制度 □その他
経済面
  • 傷病休暇・病気休暇中の賃金の有無
      ⇒無給で仕事を休む場合
    • 条件が当てはまれば、「傷病手当金」を申請することができます。
  • 健康保険組合独自の補助制度の有無
いろいろな場面でのポイント

ここでは、「仕事を休むとき」「職場復帰するとき」「新しい仕事を探すとき」のポイントについて、簡単にご紹介します。

仕事を休むとき
  • 職場の誰に、どのように、病気のことをや休みが必要なことを伝えるのがよさそうかを整理してみましょう
    • 治療の流れ、期間などを把握し、だいたいの復職時期を立てておく。
    • ただし、先々の治療予定が明確にはならないこともあること(例 手術の結果でその後の治療が決まるなど)、治療スケジュールは変更になる可能性もあります。
  • 職場の相談窓口となる人に、休み中の現状報告をどのようにするとよいか相談しておきましょう
  • 仕事を休んでいる期間の生活費や医療費のことも考えておきましょう:有給休暇を利用する、傷病手当金を申請する
  • 仕事を休みながらも体力づくりに取り組みましょう
職場復帰するとき
  • 段階的なリハビリテーションに取り組みましょう
    • 焦らずに段階を踏みながら体力づくりをすることが大切です。
      身体を休める ⇒ 家の中でできることをする ⇒ 家の外へと活動を広げる ⇒ 職場復帰に向けた練習(生活リズムを働いている時に合わせる、図書館など家以外で過ごす時間をつくる、通勤の練習をしてみる)
    • “復帰=ゴール” ではなく、 あなたらしく働き続けることが目標です。
  • 完璧を求めない考え方をしましょう
    • 今できることに目を向けることが大切です。
      すぐにはフルタイムでは働けなかったり、休職前と同じようには働けないことがあるかもしれません。しばらく休暇をとっていると、それも当然のことで、焦るより、今できることから確実に取り組んでいくととうまくいくことが多いようです。
  • からだとこころの調子が、職場復帰できる状態かを確認しましょう
    • 大切なのは、安全かつ確実に職務をこなすことができる体調かどうかです。
    • 治療後の副作用や後遺症に応じて、働き方の工夫は必要そうですか?
    • 職場内に働き方に関する制度がある場合、利用したいと思いますか?
  • 職場の相談窓口となる人に、情報共有や相談の場をつくってもらいましょう
    • 今の状況、できること、職場の人の協力を得たいことを伝えてみることが大切です。
新しい仕事を探すとき
  • 安全かつ確実に職務をこなす体調と能力があるかが問われます
  • 採用面接の段階で、病気について、いつ、どのように伝えるか/伝えなくてもよさそうかを考えてみましょう
    • 治療を終え、定期的な経過観察のみの場合など、職務に支障がない場合には、伝えなくてもよいかもしれません。
    • 症状がある場合や治療のために頻回に通院が必要など、職場に配慮してもらう必要がある場合には、事前に伝えておいたほうがよいでしょう。
  • できることをきちんと伝えましょう
    • 自分がやりたいこと、できることを整理して、できることを活かせる仕事を探せるように、アピールしましょう。
  • 専門の相談窓口を利用してみましょう。
    ⇒ハローワーク
    • 1ヶ所以上、がん患者さんの就労支援専門スタッフ(就労支援ナビゲーター)がいます。相談希望時には事前予約をお勧めします。
    • 就労支援ナビゲーターを配置しているハローワーク
      :東京都;飯田橋各都道府県に、神奈川県;横浜・相模原、埼玉県;大宮・所沢
お役立ち情報

 役立つ情報源の例をご紹介します。

がんになっても安心して暮らせる社会の構築を目指して、「がん対策推進基本計画」「働き方改革」など国の政策として、働き続けたい人が治療と仕事を両立するための体制整備が進められています。

あなたが治療と仕事を両立するために、患者さん本人、職場、病院(主治医等)それぞれの専門の立場で、必要な情報をわかりやすくまとめた文書を作成し、共有することが推進されています。

  • 職場(職場の産業医や人事担当、直属の上司等)は、あなたを労働者として安全に雇い続けるために、病気や治療のことを知る。
  • 病院(主治医)は、あなたが治療と仕事を両立することが可能かどうかを判断するために、あなたの業務内容、勤務体系、通勤手段などを知る。
  • 患者さん自身は、自分の病状を理解し、自分ができることや配慮してほしいことを明確に伝える。
がん研有明病院における治療と仕事の両立に向けたサポート

がん研有明病院でも、“働き続けたい” という気持ちをもつ患者さんが、治療と仕事を両立できるように、職場―患者さんー病院で情報共有しながら、支援したいと考えています。

ここでは、そのプロセスをご紹介します。

がん研有明病院サポートグループ 「病気や治療と付き合いながら働くこと」 

がん研有明病院では、同じような体験をしている患者・家族との交流を通して、 「病気や治療と付き合いながら働くこと」に関するヒントを得ることを目的として、サポートグループを開催しています。

サポートグループ「病気や治療と付き合いながら働くこと」には、就業中・休職中・今後就職を考えている、がん研有明病院の患者さん・家族が参加できます。がん相談支援センターの専門看護師・認定看護師、医療ソーシャルワーカーに加えて、社会保険労務士も参加して、ミニ講座とグループでの情報交換を行っています。

ミニ講座のテーマ ・労働関連の法律・制度
・知っておきたい職場の制度
・知っておきたい社会保険制度
・仕事を休むとき
・仕事復帰のとき
・新しい仕事を探すとき
グループでの情報
交換のテーマ
治療しながら働くことへの不安、工夫 など
<参加者の感想>
  • どこにもない企画内容で、もう一歩頑張ってみようと思いなおしました。(患者)
  • 職場や身の回りに体験者が少ないため、このような会で様々な意見が聞けて参考になりました。(患者)
  • 病気に負けずに頑張っている人たちの話が聞けて良かった。(家族)
がん研有明病院のなかの主な相談窓口 
<参考文献>

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医療費が心配

病院・医院の建物イラスト(医療)

病気がわかった後に、病気や治療のことだけでなく、お金のことが心配になることもあると思います。

ここでは、以下について解説します。

みなさんが加入している健康保険では、1ヶ月間に支払う医療費の自己負担限度額が設定されています。

高額療養費制度は、支払う医療費が自己負担限度額を超えたときに、超えた額を支給する制度です。

ひとり親家庭の方(親・子)が医療機関を受診した場合に、支払った医療費またはその一部を助成する制度です。
自治体によって、所得制限や自己負担の有無は異なります。

小児慢性特定疾病の診断を受け、長期的な治療が必要な児童に対して、患者さんやその家庭の負担軽減を図るため、その医療費の自己負担分の一部を助成する制度です。

重度の障害がある者に対して、医療機関を受診した場合にかかった医療費の一部を助成する制度です。
自治体により対象者や費用負担が異なります。

「治療に伴う医療費の目安が知りたい」、「医療費が心配」など、医療費に関することは、以下にお気軽にご相談ください。

病院1F「がん情報コーナー」に、高額療養費などに関する資料を準備しています。ご自由にお持ちください。

利用できる制度を知りたい

病気や治療と付き合うようになって、何か利用できる制度があるのかなぁと思うことか゛あるかもしれません。各種制度には、利用条件があり、申請手続きが必要にあります。まずは、自分が該当しそうかどうか知っておくことは大切です。

ここでは、以下について解説します。

傷病手当金

会社員や公務員の方が、病気やケガのために仕事を休んで収入が減少した場合に、申請して給付を受けるための制度です。
国民健康保険加入者は、対象外となります。ただし、保険者が市区町村以外で「国民健康保険組合」の場合には、給付の内容は異なりますが「傷病手当金」の制度がある場合もあります。加入している国民健康保険組合にご確認ください。

介護保険

病気や高齢によって介護が必要な状態と判断された場合に、医療・福祉サービスを受けることができる制度です。

身体障害者手帳

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、法の別表に掲げる障害程度に該当すると認定された方に対して交付されるものです。各種の福祉サービスを受けるために必要になります。身体障害者障害程度等級表により1級から7級までの区分が設けられています。

障害年金

障害年金は、国民年金(主に自営業者などが加入)と厚生年金(会社員・公務員などが加入)の加入中の病気やケガで障害が残った場合に、国民年金から「障害基礎年金」、厚生年金から「障害厚生年金」が支給される年金制度です。

医療費控除

医療費控除とは、1年間(1月〜12月)で支払った医療費の合計が一定の金額(10万円 または 所得の5%)を超えたときに、その医療費を基に計算した金額分の「所得控除」を受けることができ、所得税が軽減される制度です。支払った医療費が戻ってくるわけではありませんのでご注意ください。

生活保護

生活保護制度は、生活に困窮している方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障すること共に、自立を助長することを目的としています。

●病院のなかの社会保障制度に関する相談窓口

「利用できる制度が知りたい」、「〇〇の制度がよくわからない」など、社会保障制度に関することは、
以下にお気軽にご相談ください。

病院1F「がん情報コーナー」に、傷病手当金や障害年金など関する資料を準備しています。ご自由にお持ちください。

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