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【がん研セミナー(2月5日)のお知らせ「癌幹細胞において活性化されるCD44v-xCTを介した抗酸化システムを標的とする癌治療戦略 」永野 修 博士 (慶應義塾大学医学部・先端医科学研究所・遺伝子制御部門)】

2015年01月30日

がん研セミナー(2月5日)のお知らせ

 

演題:癌幹細胞において活性化されるCD44v-xCTを介した抗酸化システムを標的とする癌治療戦略

 

演者: 永野 修 博士

 

慶應義塾大学医学部・先端医科学研究所・遺伝子制御部門

 

日時:2015 2月5日(木)16: 00-17: 00

 

場所:吉田講堂

 

連絡先:広田 亨(内線5251

 

抄録:

近年、癌組織中には自己複製能を持ち、異なる分化段階の細胞を産生する能力を有する細胞である癌幹細胞と呼ばれる少数の細胞集団が存在していることが知られるようになった。これら癌幹細胞は、抗癌剤・放射線治療に対する抵抗性を有しており、癌の治療抵抗性や再発・転移にも深く関わっていると考えられる。特に、癌幹細胞が、抗癌剤・放射線治療に対して抵抗性を示す重要な要因の一つとして、活性酸素除去機能の亢進が挙げられる。癌幹細胞は、分化した癌細胞と比較し、酸化ストレスに対して強い抵抗性を示すことが分かっていたが、その分子メカニズムに関しては良く知られていなかった。近年、我々の研究グループは、固形癌における癌幹細胞の主要な表面マーカーの一つである接着分子CD44を介した酸化ストレス回避機構が、腫瘍増大や治療抵抗性に深くかかわっていることを発見した (Ishimoto et al, Cancer Cell, 2011)。接着分子CD44のアイソフォームの一つであるCD44バリアントアイソフォーム(CD44v)は癌細胞の細胞膜上で、シスチントランスポーターを構成する分子であるxCTと結合し、その結果シスチントランスポーターを安定化させ、細胞外からのシス

チンの取り込みを活発化し、主要な抗酸化物質であるグルタチオンの生成を亢進させていた。xCTは、様々な癌細胞において発現が高いことが確認されており、治療抵抗性との関連についても報告されている。我々は、xCTの特異的阻害剤であるスルファサラジンを用いたマウス治療実験において、シスチントランスポーターの阻害がCD44v依存的な腫瘍増大や転移巣形成を抑制し、さらには抗癌剤に対する感受性を高める事を見出だしている(Cancer Cell, 2011, Nat Commun, 2012, Cancer Res, 2013)。このように、CD44v-xCT系を介した酸化ストレス回避機構は、癌幹細胞を含めた治療抵抗性を有する癌細胞に対する新たな治療標的となり得ることが期待されることから、現在、我々はスルファサラジンを用いてCD44v陽性の進行胃癌に対する臨床試験を開始している。本セミナーでは、現在、我々が行っている癌幹細胞における抗酸化システムを標的とした新たな癌治療法開発の試みについてお話しさせて頂きたいと考えている。

 

 

*外部の研究者のご来聴を歓迎いたします。尚、本セミナーの内容は専門的であり、

医学・生物分野の研究に携わる方を対象としております。

 

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